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3.元聖女は冒険者として仕事をします。
57.
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私たちはソーニャさんたちのところに駆けつけるときに置いてきた収穫した魔法草を回収して山を下った。
ライガの背中に担がれたジャンさんが、残念そうに呟く。
「俺たちの採った魔法草は全部燃えちゃったな……」
「まずは無事で良かったでしょ。あなたが治ったらまた採りに行きましょう。魔法草収集の依頼なんていつでもあるんだから」
ソーニャさんはジャンさんの頬を引っ張った。
「でも……前に、ステファンに大きい音で攻撃すると、魔物が興奮して音の方に向かってくるって聞いてて良かったわ。ジャンが穴に引きずり込まれたとき、とっさに思い出して、爆発魔法で兎の気を引いたの」
「……ほんと、ありがとう。あのまま食われてたらって思うと……」
ジャンさんは布でぐるぐる巻かれた腕や足を見てぶるっと震えた。
「まぁ、初めから私一人……」
ステファンがとんとんっとソーニャさんの肩を叩いてにっこり笑った。ソーニャさんは、「う」と言葉を詰まらせて、「……どういたしまして!」とぷいっと横を向いた。
「……レイラ、どうした? 疲れたか?」
黙ってそんな皆の様子を眺めていた私の顔をライガがのぞきこむ。
「……え? あ、ううん、大丈夫……」
私は首を振った。
私は、最初――興奮した兎を鎮めようとしたときにできなかった理由を考えてた。
傷だらけのジャンさんを見たときから、何だか心が落ち着かなくなったんだ。
あの時も、あのままソーニャさんが兎の群れに飲み込まれたらって想像して、集中できなくなってしまった。
「こんな重装備じゃ疲れちゃうわよ……」
不意にソーニャさんが私の被っていた兜をひょいって持ち上げたので、びくっとして彼女の顔を凝視してしまった。
「あなたたち、何で神官の子にこんな重装備着させてるわけ?」
ソーニャさんがステファンとライガに呆れたように問いかける。
珍しくステファンも困ったようにライガと目を合わせて、二人は声を合わせた。
「「……怪我したらまずいと思って」」
ソーニャさんは「はぁぁぁ」と大きなため息をついた。
「……魔法使いが何でローブを着てるかわかる? 魔法はね、すっごく精神力を使うの。だから、身体にちょっと余計な重さがあるだけで集中の邪魔になるから、ゆったりしたローブを着てるの。神官の祈りだって同じでしょう」
彼女はさらに語気を強めた。
「防具つけてないぶんは、剣士とかが守るのよ。守る自信がなくて重装備させるならパーティー組まない方がいいんじゃない?全く、みんな魔法使いのことわかってないんだから」
ぐっと言葉を飲み込むライガの横でステファンは「ははは」と困ったように笑ってから私をのぞきこんだ。
「ごめん、全然そういうの気が回ってなかった」
「いえ……でも、確かに重いかな……」
ソーニャさんは私を覗き込んで、「私がこんど、ローブを見てあげる」と言った。
ライガの背中に担がれたジャンさんが、残念そうに呟く。
「俺たちの採った魔法草は全部燃えちゃったな……」
「まずは無事で良かったでしょ。あなたが治ったらまた採りに行きましょう。魔法草収集の依頼なんていつでもあるんだから」
ソーニャさんはジャンさんの頬を引っ張った。
「でも……前に、ステファンに大きい音で攻撃すると、魔物が興奮して音の方に向かってくるって聞いてて良かったわ。ジャンが穴に引きずり込まれたとき、とっさに思い出して、爆発魔法で兎の気を引いたの」
「……ほんと、ありがとう。あのまま食われてたらって思うと……」
ジャンさんは布でぐるぐる巻かれた腕や足を見てぶるっと震えた。
「まぁ、初めから私一人……」
ステファンがとんとんっとソーニャさんの肩を叩いてにっこり笑った。ソーニャさんは、「う」と言葉を詰まらせて、「……どういたしまして!」とぷいっと横を向いた。
「……レイラ、どうした? 疲れたか?」
黙ってそんな皆の様子を眺めていた私の顔をライガがのぞきこむ。
「……え? あ、ううん、大丈夫……」
私は首を振った。
私は、最初――興奮した兎を鎮めようとしたときにできなかった理由を考えてた。
傷だらけのジャンさんを見たときから、何だか心が落ち着かなくなったんだ。
あの時も、あのままソーニャさんが兎の群れに飲み込まれたらって想像して、集中できなくなってしまった。
「こんな重装備じゃ疲れちゃうわよ……」
不意にソーニャさんが私の被っていた兜をひょいって持ち上げたので、びくっとして彼女の顔を凝視してしまった。
「あなたたち、何で神官の子にこんな重装備着させてるわけ?」
ソーニャさんがステファンとライガに呆れたように問いかける。
珍しくステファンも困ったようにライガと目を合わせて、二人は声を合わせた。
「「……怪我したらまずいと思って」」
ソーニャさんは「はぁぁぁ」と大きなため息をついた。
「……魔法使いが何でローブを着てるかわかる? 魔法はね、すっごく精神力を使うの。だから、身体にちょっと余計な重さがあるだけで集中の邪魔になるから、ゆったりしたローブを着てるの。神官の祈りだって同じでしょう」
彼女はさらに語気を強めた。
「防具つけてないぶんは、剣士とかが守るのよ。守る自信がなくて重装備させるならパーティー組まない方がいいんじゃない?全く、みんな魔法使いのことわかってないんだから」
ぐっと言葉を飲み込むライガの横でステファンは「ははは」と困ったように笑ってから私をのぞきこんだ。
「ごめん、全然そういうの気が回ってなかった」
「いえ……でも、確かに重いかな……」
ソーニャさんは私を覗き込んで、「私がこんど、ローブを見てあげる」と言った。
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