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【7】聖女 家を借りる

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「れさー、」

 さっそくサンドイッチをぱくつきつつ、ジェイドが言う。

「ルチルっち、住むトコどーすんの?」

 ゴーシェの食事風景をガン見していたわたしは、その言葉に顔を上げた。

 だってぬいぐるみがお皿の端に座って、パンを小さくむしっては口に運んでいるんだもの。

 大丈夫それ? ソース付いたら染みになっちゃわない?

「自警団の寮、空きはあるけど、男ばっかだからなぁ」

 ジェイドは申し訳なさそうに眉を下げる。

「さすがに『おいで』って言いづれーわ」
「気持ちだけもらっておくよ」
「じゃあ、私のアパートに来る? 広くはないけれど、女の子一人くらいなら何とかなるわよ」

 モルガナさんが誘ってくれるけれども、わたしは首を振って断った。

「ありがとうございます。でも、」

 ちらりとゴーシェを見る。
 この話しは、先に彼に相談するべきだったのではないだろうか。
 心の中でそう思いつつも、言葉を続けた。

「できれば家を借りたくて。小さい畑が作れるような、庭付きの家を」

 ジェイドがくれた『天使』の部品を売ったお金。あれを頭金にすれば何とかなるのではなかろうか。
 何ならしばらく安宿に泊まって、もう二、三体『天使』を狩りに行っても良い。

「庭付きの家ねぇ」

 人差し指を頬に当てて、モルガナさんは上目に考えた。やがて何故か言いにくそうに、

「……実は心当たりが一つあるんだけれど」
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