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第一部 第五章 終わりの始まり
side王族 庭園の秘密と光③
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一方、秘密の庭園では、ついうっかり甘えてしまった双子はこれではいけないと、作戦遂行すべく試行錯誤していた。
──なんで、よしよししてもらっているんだ~。
──怖っ、テレゼア家、怖っ!!
ジャックとエドガーはぷちパニック中だ。
よくわからない間に、嫌がらせよりも喜ばせようと動いていたこと、二匹に嫉妬みたいなことをして甘えてしまっていたことは思い返すと赤面ものである。
王子として恥ずかしい。兄たちよりも四歳下だとしても、立派なのだと本人たちは思っている。
英才教育を受け本人たちもそうあるべきと努力が身についてきていてもまだ十歳。完璧な兄への過剰な憧れもあり、兄が絡むそれらのイタズラは本人たちに自覚はないが幼いものばかり。
自分たちの魅力をしっかり有効活用するあたりはさすがであるが、やっていることは可愛いレベルであり、だからこそ彼らのそれに何となく気づいている者も目をつぶっている。
もちろん、兄であるシモンも知っている。知っていて可愛らしい弟の行動を黙認していた。
大きな被害もなく、ついでに彼らの気持ちを尊重しこのまま寄ってくる女性を排除してもらっておいても悪くないだろうと密かに思っている。
次期王になることは決まっていないが、第一王子、そして現王の長子という立場は、ほかの王子たちよりも周囲の期待が大きかった。
その分、シモンは常に王子としての振る舞いを意識し密かな努力を積んできたが、それを邪魔する者も多かった。
それら全てを自分が相手していたらキリがないので、弟たちの善意なる行為はそのまま受けておいても問題ないだろうと思っていたためだ。
これまた冷静なシモンであった。
そんな彼の弟であるから、可愛いだけではなくよく頭が回る。
それが双子となれば、連携プレイもお手の物でそんな彼らに敗れ絆された者のは数知れず。
今まで面白いほど騙される大人や、同じ年頃の子息や令嬢を相手にしてきた。
これまで自分たちの思うようにいかないことはなく、ここにきて負けるわけにはいかないと闘争心を燃やす。
ジャックとエドガーはぎゅっと手を握り合って、対岸の森を見つめた。
あそこなら、さすがにびっくりドッキリするものが山ほどあるだろうとニンマリ。
「エリザベス。もっと変わった生物を見たくないですか?」
「ええ。見れるものなら見てみたいです」
予想通りの返事に、このままでは王子としての沽券に関わると、双子はぐっと拳を握り合う。
「なら、川を渡ってあちら側に行きましょう」
「それは楽しそうですが、従者たちはどうされるのですか?」
「もちろん、彼らも後でついてくるので大丈夫です」
「そうですか。なら、行ってみたいです」
エリザベスが快諾すると二人は視線を合わせ、決意したように大きく頷くとエリザベスの手を取った。
とにかく、驚く声を上げさせたい。
名付けて『ふんぎゃあ、と声を上げさせるぞ作戦』開始とばかりに、双子は意気揚々と歩みを進めた。
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