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第一部 第五章 終わりの始まり
side王族 庭園の秘密と光②
しおりを挟む「僕はエリーが何かしでかさないか気になります」
「俺もだ」
「あら。もう何もわからない子供ではないのですから、そんなに心配しなくてもいのでは? それに、従者たちもいるので大丈夫でしょう」
「だといいんですが……」
そこで三人は顔を見合わせ、小さく息を吐く。
それぞれ具体的に思っていることは違うが安心した途端、護衛たちがいてもやはり放っている現状が気がかりであった。
「まあ! まあぁぁ~。そんなに気になるのですね。それはお邪魔してしまっては悪かったかしら。お客人を放っておくのはよくありませんものね。では、さっそく言わせていただきます」
「「「はい」」」
「息ぴったりね。では、こうして呼び出したのは、エリザベス・テレゼア公爵令嬢は光属性の可能性が高いことをお伝えするためです」
ふふっと少女のように王妃は微笑む。
子供を三人も産んだ女性とは思えない無垢な笑み。そして、急かしておいてなんだがとっても大事なことをさらっと言ってのけられ王子たちはもう一度顔を見合わせ、王妃と陛下が穏やかに笑いながらも眼差しは真剣であることを確認し声を上げた。
「エリーが?」
「なぜ、そのような?」
「どうしてわかるのですか?」
各々、戸惑いながらその言葉を吟味する。
秘密の庭園。そこは魔力を精査することができる場所。代々光り輝く魔力を持つ者が力を込めて守ってきた場所である。
引き継がれる魔力で守られたそこは、魔具は壊れにくく常に正確に魔力を汲み取り測ることができる。そのお陰で王族たちは正確に己の魔力と方向性を掴み磨いていくことができるのだ。
それゆえ、エリザベスの高い魔力を見た三王子は彼女の魔力を測ること、必要ならば方向性を定めるほうがいいだろうと判断したのだった。
大きな力が制御できず暴走することは避けなければならなかったので、言わばエリザベスのためでもあった。
エリザベスのレベルを知り、それを使いこなせているか知る必要があり、何より王族との相性を知るにはここはうってつけの場所であったのだ。
王族と許された者、王家に認められた者しかは入れない場所。
それが秘密の庭園であり、ここに招待されたということはある一部の者にとって大きな意味をなす。
当然、王家の情報も含め避けていたエリザベスが知っているわけもなく、避けたいと願っていた彼女はしっかり大事なフラグを踏んでいた。
むしろ、ぐいぐいと踏みしめている。
「光属性の者は同じ光属性の者を感知することができます。それゆえ、光の魔法があふれた秘密の庭園でのことは、離れたところにいてもわかるのですよ」
当たり前のように告げられたそれは、王子たちも初めて知ることであった。
「それは知りませんでした」
「ええ、そうですね。陛下は私の時のことがあるので知っておられますが、本当にごくごく一部しか知らないことです」
「……それだけ重要ということですね」
「ええ。当事者である光の者と、ごくたまに近親者のみ知られてきたことです。知っての通り、真の光はとても稀であるとともに膨大な魔力を有しています。そのため、魔力の全てを明かすことは己のためにも周囲のためにも禁じられています」
ゆったりと告げられるそれはまるで神託のように鋭く刺さり、同時に優しく響いた。
ルイは小さく息をついた。
ルイの願いはずっと変わらない。
エリザベスとともにいること。光の魔力があろうがなかろうが気にはしないけれど、規模が大きくなりややこしいことになりそうなのは困ったことであった。
エリザベスが望む通りに魔力も弱くただ守られるだけのか弱い女性なら心配もしないのだが、その逆を本人は気づかないまま突き進んでいる。
その上、真の光の魔力保持者の可能性を示唆され、その見立てが正しければますます彼女が望む反対の道へと進むのだろう。
──エリーのそばは本当に飽きないね。
光魔法保持者だとわかっただけでライバルが増えるわけではないけど、意識はされる。さて、どうしていこうかとルイは遠くを眺めた。
ルイに続くように、サミュエル、シモンもエリザベスがいるほうへとそれぞれ思案げに視線を向けた。
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