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朝焼けの女神⑦髪留めの繋がり
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朝焼けの女神⑦
髪留めの繋がり
会社の昼休みだ。三浦はいつも行く牛丼チェーン店に向かって歩いていた。
目の前の信号が赤になった時に電話が鳴った。
会社の携帯だ。知らない電話番号が呼んでいる。
新規のお客様かもしれない、三浦は反射的に立ち止まって交差点に背を向け営業向けの声を出した。
「はい、〇〇会社の三浦です。どちら様ですしょうか?」
相手は知らない女性の声だった。
「今お電話よろしいでしょうか?私は斎藤文子と言います。髪留め届けて頂いた方ですよね。名刺頂いたので失礼ですが連絡させて頂きました」
「アア、あの時の人ですか?」
三浦は急に瀬戸内の海と、日の出に浮かび上がる女性の身体のラインを思い出して声が裏がえってしまった。
「助けてくださった方ですよね」
電話の向こうの女性は三浦を確認する様に声を鎮めて聞いて来た。
三浦は少し間を置いて答えた。
「助けたなんて大げさですよ。ちょっと手を貸しただけです。
それにあなたは歩いて宿に戻ったじゃないですか?」
「その時にお礼を言えれば良かったのに、ほんとごめんなさい。ちゃんとお礼が言いたいのです。その時は私も変な格好だったのでそれはご理解下さい」
「そうですよね。わかります。どうか気にしないで下さいね。元気そうで良かったですね、この電話だけで十分ですよ」
三浦の大人の対応に今度は文子が慌てた。
「どうかお願いします。一度だけでも、そうお茶だけでもお願いします。お仕事帰りでどうですか?最寄りの駅教えて下さい必ず近くまで行きます」
三浦は少し笑って「良いですよお任せします。時間と場所は斎藤さんにお任せしますよ、私の会社は名刺に書いていますよね。その近くの最寄り駅でどうですか?」
待ち合わせの時間三浦は文子を待っていた。その時に頭に瀬戸内の海が思い出される。
浜辺で彼女を海から引き上げてからヨガマットと水を運んであげようと、自分が選んだ岩場に戻ろうとしたあいだに、彼女はいなくなっていた。
裸だったし恥ずかしいだろうからそのままにしてあげた。追いかけもせずに三浦はそのまま朝の冷たい空気の中でアーサナに取り組み暖かくなった身体で瞑想をした。
気分良く宿に戻り浜辺で拾った髪留めを宿のオーナーに届けた。
「朝早く浜辺でヨガされてた女性がね、髪留め落とされていたんですよ。これ渡して貰えますか?」
「あー彼女ならさっき帰りましたよ。急に用事があったと言ってね。大急ぎで!」
「そうなんですね、これ預かって貰えますか?」
「あー、それはねー、いつ来るかわからないからね、そうだ彼女の所属しているヨガ教室わかっているから、近くなら届けてやってよ。ウチにおいててもすぐにゴミになってしまうから」
「へー何処ですか、近くなら考えますけどね。あーーここなら行けますね。オーナーさんから電話してもらえるなら届けますよ」
「そうしてもらえると嬉しいなぁ。これたぶんインドみやげかも、石が本物みたいだからね。そうそう彼女インドでヨガ修行やってる人でね、知り合いになっておくと色々教えて貰えるよ。持って行ってくれるのね、電話しとくよありがとうね」
そう言いながらオーナーはメモと住所録を取り出して機嫌良く書写してくれた。
三浦は部屋に戻りリュックのポケットにメモを押しこみシャワーに向かった。
このペンションはオーナーが親から相続した個人の別荘を、維持と趣味の為にヨガ合宿を催して知り合いに解放している。
この小さな島の土地はオーナーの所有で完全なプライベートな空間だ。
その分行政が入って来ないから全ての維持管理はオーナーがする。三浦は食事代だけ払って得意な大工仕事を手伝い合宿に参加している。自由な時間は自分で作るそんな関係だ。
ヨガ合宿から帰った時、リュックの整理をしていたらビニール袋に入った髪留めが出て来た。その中には宿泊者の名前とヨガ教室住所が書いてあった。
ここなら得意先の近くだ、いつもの顔出しを兼ねてヨガ教室に寄ってみた。
「こんにちは、斎藤さんいらっしゃいますか?」
「インストラクターの斎藤ですね?彼女は今日は担当日じゃないんです」
「そうですか、預かって頂きたい物があります。ペンションのオーナーさんから髪留めを預かっていました。斎藤さんにお渡し下さい。がっしり鉄製ですしレトロなデザインですよね石が天然石の様です。大切に思えて持って来ました」
髪留めを包んだ紙服を差し出して帰ろうとしたが、呼び止められた。名前と連絡先を教えて欲しいと言われたからだ。断ったがめんどくさいので会社の名刺を置いて帰った。それから一週間ぐらいたったのかな。
結局は文子の夜のクラスが無い日に合わせた。ランチが終わったぐらいの時間の土曜日に2人はあった。
文子はエスニックなワンピースを着てる。 細身の体型で化粧は付けていない。
健康そうな肌が印象的だった。
三浦はチノパンに青の格子柄のシャツ2人が並ぶとファッションは違和感あるのかなと思ってしまった。
軽く挨拶をして再会を喜んだ。少し並んで歩いて瀬戸内の島の感想を言い合った。
歩いてすぐの所にある公園のカフェテリアに席を見つけそこに座った。
三浦が飲み物を聞いて買って来てやっと2人でゆっくり話すことができた。
髪留めの繋がり
会社の昼休みだ。三浦はいつも行く牛丼チェーン店に向かって歩いていた。
目の前の信号が赤になった時に電話が鳴った。
会社の携帯だ。知らない電話番号が呼んでいる。
新規のお客様かもしれない、三浦は反射的に立ち止まって交差点に背を向け営業向けの声を出した。
「はい、〇〇会社の三浦です。どちら様ですしょうか?」
相手は知らない女性の声だった。
「今お電話よろしいでしょうか?私は斎藤文子と言います。髪留め届けて頂いた方ですよね。名刺頂いたので失礼ですが連絡させて頂きました」
「アア、あの時の人ですか?」
三浦は急に瀬戸内の海と、日の出に浮かび上がる女性の身体のラインを思い出して声が裏がえってしまった。
「助けてくださった方ですよね」
電話の向こうの女性は三浦を確認する様に声を鎮めて聞いて来た。
三浦は少し間を置いて答えた。
「助けたなんて大げさですよ。ちょっと手を貸しただけです。
それにあなたは歩いて宿に戻ったじゃないですか?」
「その時にお礼を言えれば良かったのに、ほんとごめんなさい。ちゃんとお礼が言いたいのです。その時は私も変な格好だったのでそれはご理解下さい」
「そうですよね。わかります。どうか気にしないで下さいね。元気そうで良かったですね、この電話だけで十分ですよ」
三浦の大人の対応に今度は文子が慌てた。
「どうかお願いします。一度だけでも、そうお茶だけでもお願いします。お仕事帰りでどうですか?最寄りの駅教えて下さい必ず近くまで行きます」
三浦は少し笑って「良いですよお任せします。時間と場所は斎藤さんにお任せしますよ、私の会社は名刺に書いていますよね。その近くの最寄り駅でどうですか?」
待ち合わせの時間三浦は文子を待っていた。その時に頭に瀬戸内の海が思い出される。
浜辺で彼女を海から引き上げてからヨガマットと水を運んであげようと、自分が選んだ岩場に戻ろうとしたあいだに、彼女はいなくなっていた。
裸だったし恥ずかしいだろうからそのままにしてあげた。追いかけもせずに三浦はそのまま朝の冷たい空気の中でアーサナに取り組み暖かくなった身体で瞑想をした。
気分良く宿に戻り浜辺で拾った髪留めを宿のオーナーに届けた。
「朝早く浜辺でヨガされてた女性がね、髪留め落とされていたんですよ。これ渡して貰えますか?」
「あー彼女ならさっき帰りましたよ。急に用事があったと言ってね。大急ぎで!」
「そうなんですね、これ預かって貰えますか?」
「あー、それはねー、いつ来るかわからないからね、そうだ彼女の所属しているヨガ教室わかっているから、近くなら届けてやってよ。ウチにおいててもすぐにゴミになってしまうから」
「へー何処ですか、近くなら考えますけどね。あーーここなら行けますね。オーナーさんから電話してもらえるなら届けますよ」
「そうしてもらえると嬉しいなぁ。これたぶんインドみやげかも、石が本物みたいだからね。そうそう彼女インドでヨガ修行やってる人でね、知り合いになっておくと色々教えて貰えるよ。持って行ってくれるのね、電話しとくよありがとうね」
そう言いながらオーナーはメモと住所録を取り出して機嫌良く書写してくれた。
三浦は部屋に戻りリュックのポケットにメモを押しこみシャワーに向かった。
このペンションはオーナーが親から相続した個人の別荘を、維持と趣味の為にヨガ合宿を催して知り合いに解放している。
この小さな島の土地はオーナーの所有で完全なプライベートな空間だ。
その分行政が入って来ないから全ての維持管理はオーナーがする。三浦は食事代だけ払って得意な大工仕事を手伝い合宿に参加している。自由な時間は自分で作るそんな関係だ。
ヨガ合宿から帰った時、リュックの整理をしていたらビニール袋に入った髪留めが出て来た。その中には宿泊者の名前とヨガ教室住所が書いてあった。
ここなら得意先の近くだ、いつもの顔出しを兼ねてヨガ教室に寄ってみた。
「こんにちは、斎藤さんいらっしゃいますか?」
「インストラクターの斎藤ですね?彼女は今日は担当日じゃないんです」
「そうですか、預かって頂きたい物があります。ペンションのオーナーさんから髪留めを預かっていました。斎藤さんにお渡し下さい。がっしり鉄製ですしレトロなデザインですよね石が天然石の様です。大切に思えて持って来ました」
髪留めを包んだ紙服を差し出して帰ろうとしたが、呼び止められた。名前と連絡先を教えて欲しいと言われたからだ。断ったがめんどくさいので会社の名刺を置いて帰った。それから一週間ぐらいたったのかな。
結局は文子の夜のクラスが無い日に合わせた。ランチが終わったぐらいの時間の土曜日に2人はあった。
文子はエスニックなワンピースを着てる。 細身の体型で化粧は付けていない。
健康そうな肌が印象的だった。
三浦はチノパンに青の格子柄のシャツ2人が並ぶとファッションは違和感あるのかなと思ってしまった。
軽く挨拶をして再会を喜んだ。少し並んで歩いて瀬戸内の島の感想を言い合った。
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