記憶味屋

花結まる

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温かい肉そば

あの店

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大勢の人が行き交う雑多な音で気がつくと、連は改札の前にいた。
複数台の改札機に大きな掲示板。
よく見ると、どうやら博多駅のようだ。

ボーっと眺めていると、じいちゃんが横にいることに気がついた。
茶色のコートに灰色のマフラーをしている。
あ、あのさ、と声をかけてみるが返事がないどころか、こちらを見もしない。
薄々気づいてはいたが、大きな連の存在は認識できないようだ。
じいちゃんは仕切りに腕時計を気にしていた。
ふぅ、と短いため息が何度も白く染まる。
やがて、じいちゃんの顔が一気にほころび、口を開いて大声を出した。

連くん!

改札を背に連がじいちゃんに歩み寄る。
それはじいちゃんと同じくらいの背になった中学生の連だった。
京都から福岡に一人で遊びにきたのだ。

じいちゃん、久しぶりやな。元気やった?

中学生の連もにかっと笑って、二人で肩をぽんぽんと叩き合った。

元気元気、腹減ってるやろ、いつもんとこいくか?

じいちゃんが言うと、ええな、もうぺこぺこやわ!と中学生の連が応えた。
その瞬間、連はハッキリと思い出した。

あの肉蕎麦…!!

2人が向かった先は、駅近の立ち食い蕎麦屋だった。
狭い空間に、男性7人入ればもういっぱいの店だ。
そこに2人で並んで、いつものを頼む。
一杯ずつ、あったかいお蕎麦。
目にも止まらぬ速さで出されたそれは、ちょうど連が先程食べた、味も見た目も普通な、だけど思い出が詰まった肉蕎麦だった。

連くん、勉強がんばってるんやってね。

一度箸からすり抜けた蕎麦をまた掴みなおしてすすりながら、じいちゃんが言った。
中学生の連は、そうなんよ、いつか東京行こうと思ってがんばってるんよ、と食べながら応える。
そうかそうかと、じいちゃんは連の背中をぽんと叩く。

連くんなら大丈夫やろ。じいちゃんの自慢の孫じゃけぇ。

それは、じいちゃんの口癖だった。小さい頃から、何をしても褒めてくれて、怒られた記憶もない。
だからじいちゃんには、何でも話した。
試験勉強が辛いこと、部活で面白かったこと、東京行ったらやりたいこと…。
じいちゃんはいつもじっくり聞いてくれて、決まって最後に、無理せんとな、連のやりたいようにしぃ、と言うのだった。

いつも応援してくれてたな。

連がそう思うと、急に蕎麦を啜る音で耳が包まれ、視界がぼやけていった。
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