クリスマスには✖✖✖のプレゼントを♡

濃子

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ー15ー 好きって言ってもいいのかな?

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「実律ーー、理由はそれなんだな?」
 真剣な、あまりにも真剣な眼差しに、ぼくの呼吸がとまりそうになる。
「………え?」
「それが理由で、ダメって言ってるんだな?」
 念を押すように、何かを確認される。景君が聞きたいこと、ぼくに聞かなきゃならないこと、それはーー、

「あーー」

 自分が言った言葉の意味を考えると、そういうことになる。ーーぼくの隠しておきたい気持ちを、白状しているようなものなんだ……。


「実律……」
 景君の身体から、張りつめていた空気がなくなり、ぼくに寄りかかるように、肩に頭を乗せた。景君の髪の匂いに、ぼくの身体がぎゅんってなる。変なところが、もぞもぞってなりそうで、ーー恥ずかしいよ……。


 このまま、景君の髪に触れてしまいたい……。いいのかな……、触ってもいいのかなーー……。



 ぼく、景君に好きって言っても、いいーー?ずっと、ずっと景君が好きだって言ってもいいのかなーー……?




「ーー俺が嫌ってことはないのか?」
「………ない」
 それは、つけない嘘だ。景君を嫌いだなんて言ったら、身体が拒絶反応を起こして、吐く自信があるよ。


 景君が​ぼくの肩に乗せていた頭を、ゆっくりとあげた。代わりに指先をぼくの肩に乗せたんだけど、それは肩を優しく、撫でるように動くんだ。

「!」
 涙が乾いた顔がどうなってるのかわからないけど、そんなぼくのひどい顔を、景君の指がそっと触れてくる。こんな、優しい触り方……、もう、ぼく死んじゃうよ。

​「実律……、ちゃんと言って……」
​ 景君の顔がぼくの顔に近づいてくる。ちょっと待って、これってーー、って驚きとちょっぴり期待したぼくの唇から数センチの距離で、景君の顔がとまった。

 ーーぼひゃ~~~!し、死ぬ~~~~!

 

「………ぼくも、……景君しか好きじゃない………」
 顔が熱すぎて、熱すぎて、溶けちゃうよ……。胸の苦しさに俯いたぼくを、景君はその腕に包んで抱き寄せてくれた。

 ーー息がかかる距離だ。これは現実なんだろうか?本物の景君なんだよねーー?突然、後部座席から、蓮と光がでてきて「ドッキリでした~~~!」、ってならないよね?


 不安とドキドキを繰り返すぼくの前で、景君の左手が動き、さりげなくぼくにかかってるシートベルトのロックをはずした。それをどけて、また、今度はさっきよりきつく抱きしめてきてーー………、


「ーーー好きだ、実律。好きだ、好きだーー。実律……、好きすぎて……、もう壊れそうなんだーー……」
 熱すぎる告白に、ぼくの心臓がもちそうにない……景君、壊れるのはぼくのほうだよ。

「…景君……」
 膝の上に置いていたぼくの手を、景君の手がしっかりとつかんだ。長く、しっかりとした景君の指が、ぼくの手の甲を優しく撫でて、絡めるように動く。

 そして、指はぼくの指の間に入ってきて、ーーあ……、あの、ほら、こ、こ、恋人つなぎっていうつなぎ方をされてーー……。ひ、左手だけなんだけど、ちょっとまってよ!

「け、景君!」
「ーー何?」
「ぼ、ぼくの手汗がヤバいことに!」
「ーーこうするの、……はじめて?」
「は、はじめてだよ!」

 ーーけ、景君は恥ずかしくないの!?

「ーー俺も、はじめてだ……」
「……景君、そんな嘘つかなくてもぼくは大丈夫だよ」
「ん?」
「だって、ーー景君……、女のひとと付き合ってたし……」
 下から見るように景君の様子をうかがうと、うれしそうに微笑んでいた顔が、ちょっとゆがんだ。

「あーー」
 しまったなぁ……、って表情に、ぼくはしっかりと顔をあげて彼の目を見る。別に追求したいわけじゃないんだよ?でもねーー………、

「………他に好きなひとがいるから、って言っても納得してくれない子……、ぐらい、だよ……」
 ぼくの機嫌を損なわないように、気を使っているのがわかって、ちょっとおかしくなってしまった。

「ーーふうん」
「俺だってな、ーー実律の将来を考えたら、黙って身を引くべきだって悩んでたんだよ」
「……景君…」
 そんな、景君もぼくと同じことを考えてくれてたの?景君が……、ぼくの将来のことをーー?

「でも、どうやっても無理だった。俺は実律のいない未来なんか、いらないーー……。深山の歌詞を見て俺も腹を括ることにした。頭ならどれだけでも下げる、貴史さんと多恵子さんにぶん殴られてもいいーー」
 潔く景君は断言した。いや、そんな、うちの両親は…反応がよくわからないけど……。景君、ーーうれしいけど、……うれしいんだけど……。


「ーー付き合った子達も、すぐに離れていったよ。当然だよな……、彼女達には悪いことをしたと思ってる。ーー俺は何があっても、実律しか愛せないんだから」
「な、なんでーー?」
「なんでって?」
「なんでぼくなんかに……?」
 ぼくの疑問に、景君が首をかしげる。

「ふむ、これは難問だな」
「?」
「俺は実律の魅力をすべて知っているけど、実律は自分の魅力をわかっていない。ーーだが、そのほうが俺にとっては都合がいい。なんせ、実律が自分の魅力に気づいたら、俺のことなんか目もくれないだろうからなーー」
 論文を読むみたいな口調で言われ、ぼくは目を瞬いた。

「景君て、おもしろいよね?」
「ふふっ。実律のことは俺がわかっていればいいーー、と思っている」
「ーー変な景君……」
 ぼくの評価が、おかしいんじゃないの?

「ーーあいつらよりも、……俺のほうが実律を愛している」
「え?」
 頬を押さえられ、ぼくは目を見張る。急に何を言ってるんだろ……、あいつらって……、あいつらーー?

「誰のこと?」
「ーー蓮と光だ」
「へ?」
 双子の名前にぼくは驚いて、素っ頓狂な声をだしてしまった。

「景君……、そんなわけないよ」
「あるんだーー……、大体、俺を除け者にしてグループもつくってるし、ーー知らないあだ名をつけてるし……」
 すねた口調で言われて、ぼくの目はこれ以上開けられらない、ってぐらいに開いちゃった。だって、すねた景君がとっても可愛いくて………。

「ーーけ、景君……、まさか、ぼくごときにヤキモチを妬いてるのーー……?」
 控えめに聞くと、景君が嫌そうな顔をした。
「ぼくごとき、って……」
 はあー、とあきれたようにため息を吐いた景君が、ぼくから身体を離す。
「……あ」
「ーーもう、限界だ」
「え?」
 あ、あの、いきなり嫌われたの?ぼくーー……。

「景君……」
「このままだと、確実に襲うーー」
「……え!?」
 色気しかない流し目をくらって、ぼくの心臓がドキドキドキと、いつもの倍は動いてるよ。


「ーー今日はしない……、俺は実律の気持ちを大事にするーーつもりだ」
 つもりだ、に力をこめて、景君が宣言した。
「あっ、うんーー、いや、……そんなの………やだっ、け、け、景君……」
「……そんな声をだすな!」
 こっちは必死なんだ!って景君に怒られたぼくは、何がだめだったのか、よくわからない。


 でも、「頭を冷やしたい」って、景君と公園内のイルミネーションの中を歩いたんだけど……、手をつないで、とても幸せな時間だったな……。人生初のデートが、……景君となんて、これまさか死亡フラグじゃないよね……?


 ーーあっ、光とデート……。ーーなんて言って断ろうかな……。ーー景君はああ言うけど、蓮と光がぼくを、ってそんなわけ、ないよね……?



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