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ー14ー 突然の告白
しおりを挟む『生まれたときから隣りにいて
公園デビューも一緒の日
幼・小・中と同じ道を歩き
はじめて別れが訪れた
あなたのいない高校生活
エンジョイしようとカラ元気
ひさびさ会ったらマジ顔で
「無理してないか?」と聞かないで
あたしは平気 あたしは強い
そんなの嘘だとわかってる あなたがずるいよ
スタートラインに一番乗り
あたしの強運舐めるなよ
このままあなたをかっさらって
強引なハピエンつっぱしる
あなたはあたしの側にいて
あたしのことだけ考えてっ!』
「ーーカッコいい……」
「深山っぽいだろーー。実律、前見て……」
景君が前を指差した。前って、花壇があったけどーー……。
次の瞬間、目の前がキラキラしはじめた。
「え!?」
灯りが、一気についていく。花のない花壇に色鮮やかな光の花が咲き乱れ、木も通路も光のオブジェが装飾され、まるで夢の世界を見ているみたいだった。
視界に広がるキラキラを景君の隣りで見て、それも景君の作曲した歌を聴きながら、なんて……、ぼくはもう、幸せすぎて死ぬんじゃないかなーー?
「ーー景君……、キレイだね……」
きらびやかなイルミネーションを景君とふたりで見てるだなんて……、胸がいっぱいで、何も言えないよ……。
後悔なんかしてる間ないよ
一生あたしに沼ってな!
「ーー深山の歌詞……」
「う、うん、すごく……いい歌詞だけど……」
「おかしいか?」
「ーー景君、共感……するの?」
聞いてどうするの?景君には生まれたときから一緒のひと、けっこういるよーー?お向かいに住んでた夏子さんとか、斜め後ろの智恵さんとか、その隣りの涼子さんとか………。他にも……、
「ーースタートラインに一番乗り……。そこは、絶対に俺だってそう言える自信がある」
ぐるぐるとマイナスなことばかりを考えるぼくの頭に、景君のはっきりとした言葉が流れ込んできた。
「……景君」
それはーー………、どういう意味?
「そして、自分の強運にもだーー。実律……、俺は実律が好きだ」
ほへ………?
ーーーーー!っは!いけない、いけない、意識が飛びかけてたよ。景君が、ぼくを好き?ーーーーーうん、もしかして幼なじみとして好きってことなんじゃないの……?
「ーーーけ、け、景君……。う、うれしいけど、それは…いっぱい好きがある中の、……好きってことかなーー……?」
こわごわと、なけなしの勇気をしぼってだした言葉に、景君の微笑みが返ってきた。まるで真綿で優しく包むみたいな景君の笑み……、ぼくの大好きな、景君の笑い顔……。
「ーー家族的な意味じゃない。俺はーー、実律しか好きになれないーー」
「………ほ?」
ちょっと、驚きすぎて変な声がでたよ。いや、景君、かなりおかしなこと言いだしてない?ぼくのこと、何て言った?何て言われたんだろうーー……。
「ーーもう一回、言って……」
ちゃんと聞き取れなかったみたいだから……、それか脳内がばか変換して、普通の会話なのにとんでもない間違いにしちゃったのかな?
フリーズとしたぼくの顔を見て、仕方がないなぁ、って景君が軽く息をついた。そして、突然、助手席の背もたれに手をかけ、ぼくの顔を覗き込みーー……。
「ーー実律が好きだ」
「あ……」
間近に、こんなに近くに景君の顔があるなんて………、心臓のドキドキが加速するーー。ぼく、起きてるんだよね?車で寝てるんじゃないんだよね?
血がぐわぁって沸騰してるような気分だ、身体が熱くて、熱すぎてめまいがする。
「け、い…く、ん……」
ダメだよ、景君。ぼくは、ぼくなんかは、景君に好きって言われるような人間じゃない。景君にはもっとお似合いのひとがいるんだからーー。
「実律はーー?」
「いや!ダメだよ、景君!」
きっぱり言い切ると、景君は大きく目を見開いた。そして、熱を帯びたその瞳が、凍っていくように色を失っていく……。
「………」
哀しげに眉を寄せた景君の表情に、ぼくはパニックを起こしそうになる。こんな顔をさせたいんじゃない!ぼくは、ぼくは景君のことを一番に考えているから、「ぼくも」、が言えないんだよっ!?
「ーーだって、だってね!景君!ーーいっぱい、ぼんとにいっぱい、悲しむひとがいるんだよ!ーーけ、景君には……ッ!!」
好きだ、本気だ、ってとれだけ想ったところで、景君の将来を考えると、怖くてしょうがない。怖くて口に出せないのに、景君はそれを越えようとしてるの?ーーーぼくなんかの、ためにーーー?
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