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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

062:女王の国

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 新たな旅に新たな仲間であるドラゴンニュートの《ルイ=サザンザール》ちゃんを迎え入れた。
 そしてルイちゃんが旅に参加する理由は、侍になる為に出て行った父親を探しに旅しているからという事だ。


「ミナト様っ!! もう少しでツァリーヌ王国に到着しますよ」

「どう着くのか? 意外に早くついてくれて良かった………このままだったらリバースしてるところだった」

「そんなに馬車に弱いでござるか?」

「この人は弱いんですわん」

「珍しいタイプにゃ………」


 俺の馬車の弱さにエッタさんたちは慣れているが、ルイちゃんは珍しいと手で俺を扇いでくれた。
 エッタさんは自分の仕事を奪われたとプクーッと頬を膨らませて、負けじと俺を扇いでくれるのである。


「それでツァリーヌ王国ってのは、何があるところなんだ?」

「この国は女王である《エスカトリーナ3世》が支配している国で、お酒とかが有名な国ですね」

「そうか。それなら、少しは落ち着いて観光ができそうだ……久しぶりに良いよな?」

「良いと思うわん!!」


 このツァリーヌ王国は女王が統治しているらしく、お酒とかが有名なところで少しは羽を休めると感じた。
 そのまま俺たちが乗った馬車は、ツァリーヌ王国とルクマリネ王国の境にある街に到着する。


「今日は、ここで1日ゆっくりするとしようか。と言っても、あと2時間もすれば夜になるけどな」

「それでも久しぶりに、何もない日というのも悪くないんじゃ無いですか?」

「確かに、それはそうだな」


 俺たちは馬車を降りると近くの宿屋に、荷物を置いて街の中をフラフラッと歩く事にした。


「ん? あの広場にあるのって、誰の像なんだ?」

「アレこそ、この国の女王陛下の像です!!」

「さっき言ってた人ね」

「私なら、こんな像にされるのは嫌わん!!」

「大丈夫だよ。カエデはならないからにゃ」

「酷いっ!?」


 広場にはツァリーヌ王国のエスカトリーナ女王の像があり、そんなに凄い人なのかと俺は疑問を持つ。


「そんなに女王陛下って凄い人なの? こんな町外れにも像があるって事は相当な事だよな?」

「えぇエスカトリーナ女王陛下は、15歳で他国から嫁ぐと20歳の時に女王の座に就きました。そして現在の36歳までに最長の王朝を作っているんです!!」

「他国から嫁いだ人が女王陛下になるんだなぁ。それにしても、それだけじゃあ支持なんてされないんじゃないか?」

「1番の功労と言えばですね。エスカトリーナ女王陛下は、夫を暗殺して国を世界連盟に加盟させた事です!!」


 エスカトリーナ女王は、反乱を起こして夫でもある前国王を排除すると、国民の自由と尊厳を守る為に世界連盟に加盟した。
 世界連盟に加盟できるのは力と富と豊かさがなければ入れず、入れさえすれば世界から認められる国になる。
 それを行った他国の女王を、この国の人たちは英雄として祀りあげて崇拝の対象とする人間たちもいるらしい。


「そんなに凄い人だったとはなぁ………まぁ知り合いになるわけでもないし、特に気にする事では無いか」

「それはそうですね。それで何処に行きますか?」

「皆んな行きたいところは違うんじゃ無いか? それなら解散して暗くなったら宿屋に集合にしよう!!」


 歴史を知ったところでツァリーヌ王国に住むわけでも無い為、どうでも良いかと俺はあくびをする。
 そしてやりたい事も大人数になれば変わってくるので、やりたい事をやるという事になり別行動になった。
 俺とエッタさんとルイちゃん班に、カエデちゃんとシュナちゃんとイローナちゃん班に分かれる事になる。


「俺は武器とかも見たいから武器屋に行くよ」

「私も着いていきます!!」

「拙者も武器は気になるでござる!! 鎧も勝っておきたいので武器屋に付き合うでござる!!」


 俺はルクマリネ王国で剣が使い物にならなくなったので、この街にで良いものがあれば補充したい為に武器屋に向かう。
 エッタさんは俺に着いてくると言って、ルイちゃんも鎧を買っておきたいと着いてくる事になった。


「エッタ殿は、エルフの森の出身でござるか?」

「えぇレンラン大森林の村の出身よ。貴方は、何処の出身なのかしら?」

「私はマイタイ島っていう島の出身でござる!! 中陸と小陸の少し外れたところにあるでござる」

「へぇ聞いた事が無い島だけど、そこにドラゴンニュートの一族が住んでいるの?」

「そうでござる!! この世界に存在するドラゴンニュートのほとんどは、そこにいるでござる!!」


 意外にもエッタさんは、直ぐにルイちゃんと意気投合してキャッキャッキャッキャッと話している。
 仲良くなる事は良い事だ。
 同じミナトファミリーとしては仲良くなって欲しいし、殺伐とした雰囲気は俺が耐えられるわけがない。
 そんな事を思っていると目的地の武器屋に到着して、中に入ると中々に年季の入った内装で、カウンターのところには無愛想な筋肉隆々な男が、こちらを睨む様に佇んでいる。


「俺は剣で、こっちの子は鎧が欲しいんだけど………良いのって置いてあるかい?」

「うちの舐めてるのか? 最高級品があるってんだ!!」

「じゃあ、それを見せてもらえるか?」

「最高級品だって聞こえ無かったのか? お前らみたいなガキに買える品物じゃねぇんだよ!!」

「あっそう。俺って意外にもAランク冒険者なんだけど? あっもう直ぐでSランクに上がるか」


 無愛想な男に物怖じすることなく、話しかけて良いものがあるかと聞くと高らかに最高級があるという。
 それを見せて欲しいと頼んだが、俺たちの歳を見て払えないだろうと小馬鹿にしてくる。
 それならばと俺は自分がAランクである事を話すが、大笑いをして涙すらも流している。


「そんなわけねぇだろ!! 嘘をつくにしても、赤ちゃんでも分かる嘘をつくんじゃねぇよ」

「そう思う? それなら、これが証拠だから穴が開くまで確認するんだね………」

「あぁん? どうせEランクとか………なにっ!? ほ 本当にAランクの冒険者だと!?」


 何を言っても信じてもらえないと思った為に、俺は懐から冒険者カードを出してランクのところを見せた。
 すると目ん玉が飛び出すくらいに見開いて、俺の顔と冒険者カードの顔を確認して本当である事を理解した。


「ほ 本当みたいだな………なら、この店で1番良い品を見せてやるよ」

「あぁありがとう」


 店主の男はランクが本当みたいだからと、この店で最高に高い品を取りに裏に行った。
 そんな良い品が、こんなところにあるのかと俺は少し思ったが数分待っていると、大層な箱に入ったモノを持ってきてくれた。


「これが、うちにある剣の中で最高級品だ」

「確かに引き込まれる様な刃をしてるなぁ………それで、この剣には名前が付いてるのか?」

「もちろんだ。この剣は《良作:エルード》だ」


 持ってきた剣は、西洋の代表的な剣であるロングソードで、手の持つ部分には大きな宝石の様なモノが付けられていた。
 剣の刃を見てみると不思議と引き込まれる感じがして、ルイちゃんが持っている刀にはワンランク落ちるが名刀であろう。
 意外にも町外れの武器屋でも良いモノが売ってるじゃ無いか、俺の新しい剣にちょうど良い。
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