社畜モブの俺、異世界転移したら「Sub」っていわれたんだけど。え、「Sub」って何ですか?

鉾田 ほこ

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2章

26 おかえりなさいませ

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 三日目の夜にして、ようやく事態が動いた。
 気疲ればかりする大名散歩をして日中を過ごし、夕飯を一人でいただいて、「さあ、もう寝るぞ」という頃になって廊下がにわかに騒がしくなる。
 扉の外の騎士の人に、何かあったのかを尋ねようとベッドから降りた瞬間、ノックもなしに扉が開かれる音がした。

 ギョッとして、動きを止めていると「ケン!」とサイベリアンが自分を呼びながら入ってくる。
 きょろっと見渡し、ベッドから中途半端に降りようとして固まっている健介を見つけて、サイベリアンは安堵のような表情をした。
 なんの前触れもない突然の訪問であったが、この屋敷の主人はサイベリアンだ。なにも咎められることはない。
 
 それに、何より健介はサイベリアンの帰還が心の底から嬉しかった。
 これでようやく自分の役割を果たせる!
 本当にこの数日間、なぜ自分がこの屋敷に滞在し続けているのかわからなかった。働きもしないのに、用意されるまま三食をしっかりといただき、水をふんだんに使う風呂も上等な着替えも用意されているという、お客様待遇を受けていたのだ。働きもしないのに。
 働かざる者食うべからず。
 自分がこの屋敷に留まっている理由は、「プレイをすること」だ。だが、相手がいなくてはプレイも出来ない。かといって、他に何かできる仕事があるわけでもない。
 時間を持て余し、過剰なまでに世話をしてくれる使用人のみなさんに申し訳ない思いをしたのも、自分がそれを受ける対価を支払っていないから。
 だが、サイベリアンが返ってきたならば、やっと役割を果たせる。

 健介は意気揚々と「サイベリアン様、おかえりなさいませ」とベッドを降りて近づいた。
 部屋に入って、健介に近づいてくるサイベリアンはいつもの輝きが半減したかと思うほどに、疲労感をにじませていた。
「リアン、だよ」
 それでも微笑みを向けて、自分の呼び方を訂正する。
「あ、はい。おかえりなさいませ。リアン」
「ただいま。もしかしたら、ハウスに戻ってしまっているかもしれないと、気が気でなかった」
 そう言うなり、健介を抱きしめてきた。

 サイベリアンはいま「ハウスに戻ってしまっているかも」と言ったか?
 出張プレイヤーとして、ここに滞在しているのに、プレイもせずに、そのうえ雇用主に無断で帰ったり出来るわけがないではないか。
 そう不思議に思ったが、それよりも仕事が出来ることが嬉しくてしかたがなくて、深く考えなかった。
「お仕事は終えられたのですか?」
 サイベリアンはまだ外着のままで、帰ってきてすぐにこの部屋に来たことがうかがえた。サイベリアンは仕事のストレスを癒すべくプレイをしたくて、着替えや風呂よりも先にここに来たのかもしれない。
「とりあえず、一度帰宅することになった……という感じかな」
「お疲れ様です。プレイをなさいますか?」
 抱きしめられたままでサイベリアンの表情はわからないが、抱きしめている腕がびくりと動く。
(間違えた……?)
 健介はサイベリアンもプレイがしたくて、部屋に来たものだと思っていたが違ったのかと不安になる。だが、抱きしめる腕に力がこもり、耳元で「誘っているの?」と囁かれ、ほっと安堵に胸をなでおろした。
 誘っているもなにも、そのためにここにいるのだから、プレイをするのかしないのか尋ねるのは当然だと思うのだが、まぁ「プレイをするのか?」と聞くことはある意味誘っているのだろう。そう考えて、
「はい。プレイをしましょう」
 と勢いよく答えた。
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