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2章
40 追跡②
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結果としては、アムマインの森も北部国境のどちらも空振りに終わった。いや、正確にはまったく収穫がなかったわけではない。いずれの場所にも地下に牢屋が並んでおり、その中には獣人の子供とSub性の人たちが入れられていた。各領主が上げていた報告と同じように。
そして、実際に取引も行われて、その場にいるものは一網打尽にすることが出来た。違法な人身売買組織の拠点を潰し、囚われていた人々を解放することが出来た。無駄ではなかった。
そして、ハエニダエが使っていた例の男爵は北部国境の取引に現れた。身柄を拘束することもできたが、ハエニダエがこの男爵との関係を残しているとは思えない。寧ろ、この男爵を捕らえたことにより、ハエニダエはより警戒を高める可能性の方が高かった。
「申し訳ございません。殿下」
「いや、君殿が謝ることではない。そして、誰が悪いわけでもない」
「ですが……」
ワイマンも同じことを考えたのだろう。今回の検挙にサイベリアンが動いたことがハエニダエに伝わればより警戒を強める。件の男爵の屋敷や領を早急に調べなくては、ハエニダエに人身売買の証拠すらも消されかねない。それではハエニダエに対する追及の手が途切れてしまうどころか、いったん鳴りを潜めて、取引をより巧妙にしかねなかった。
「急いで男爵の帝都の屋敷と領地に人をやるんだ。帝都の方は近衛に、領地の方は第二騎士団から人を出すように」
ここからは時間の勝負だ。その場で目の前のワイマンと通信機の先のヴルペスに指示を出す。ワイマンの後ろでは、捉えた違法奴隷商とごろつきが縄をかけられて転がされている。後ろの建物からは証拠になりそうな書類を持ち出している兵士が見えた。サイベリアン自身はこれ以上この場にいても、何もできることはない。帰還するべく、馬にまたがった。
「お待ちください」
「なんだ」
「お一人でご帰還なさるおつもりですか」
サイベリアンは一人馬を走らせて帰るつもりだ。髪色も瞳の色も魔法で変えている。今話しかけてきているワイマン以外に、自分がサイベリアンだとわかるものはいない。ここに来るときだって、かなりの少数で来たが……帰りだと何か問題でもあるのかと思う。
人数が多くなれば動きが制限されるし、移動に時間がかかる。サイベリアンは一刻も早くケンの待つ屋敷に帰りたかった。
「そのつもりだ」
「少々お待ちください。私もお供いたします」
必要ない。そう言いたかった。こちらの指揮はごろつきしかいなかったので部隊長クラスで確かに事足りるだろうが、第二騎士団副団長が直接指揮を執っているということは兵士や騎士に「この作戦が重要である」という、いい意味での緊張感を与えられると思うのだが……。
「貴殿は残った方が……」
「いえ、優秀な副官が来ております。彼に任せれば問題ない。それに、男爵領捜査のこともありますので、一度帝都に戻ります」
被せるようにワイマンから最もな理由を告げられてしまえば、断る理由もない。若干申し訳ない気持ちになりながらもサイベリアンは承知した。
サイベリアンは馬を飛ばして、街道を駆け抜けた。往路に一日半かけた道のりを一日かからずに戻ってくる。強行軍に着き合わせてしまったワイマンとは、話していたとおり帝都に入った時点でわかれた。疲労をにじませながらも、彼はそのまま帝都にある騎士団の詰所に向かったようだった。
サイベリアンも疲労困憊の馬をねぎらいながら自身の屋敷の門をくぐった。
屋敷の人間にはケンが帰ってしまわないように、屋敷から出さないように指示してあったが、いま彼は何をしているだろうか……。
もう辺りは真っ暗どころか、寝入る時間に近かった。すでに夕飯も済ませて、床についているかもしれない。
寝てしまっていてもかまわない。焦る必要はないのだ。ケンはこれからも屋敷に帰ればいるのだから。
今度こそ……、明日の朝こそゆっくりと朝食をとりながら今後の話をケンとしなくては、と門からの長いアプローチを走りながらサイベリアンは考える。
ふと視線をあげると、玄関の大扉が見える。扉の前には夜だというのに迎えの使用人たちがいつもと変わらず並んでいた。
そして、実際に取引も行われて、その場にいるものは一網打尽にすることが出来た。違法な人身売買組織の拠点を潰し、囚われていた人々を解放することが出来た。無駄ではなかった。
そして、ハエニダエが使っていた例の男爵は北部国境の取引に現れた。身柄を拘束することもできたが、ハエニダエがこの男爵との関係を残しているとは思えない。寧ろ、この男爵を捕らえたことにより、ハエニダエはより警戒を高める可能性の方が高かった。
「申し訳ございません。殿下」
「いや、君殿が謝ることではない。そして、誰が悪いわけでもない」
「ですが……」
ワイマンも同じことを考えたのだろう。今回の検挙にサイベリアンが動いたことがハエニダエに伝わればより警戒を強める。件の男爵の屋敷や領を早急に調べなくては、ハエニダエに人身売買の証拠すらも消されかねない。それではハエニダエに対する追及の手が途切れてしまうどころか、いったん鳴りを潜めて、取引をより巧妙にしかねなかった。
「急いで男爵の帝都の屋敷と領地に人をやるんだ。帝都の方は近衛に、領地の方は第二騎士団から人を出すように」
ここからは時間の勝負だ。その場で目の前のワイマンと通信機の先のヴルペスに指示を出す。ワイマンの後ろでは、捉えた違法奴隷商とごろつきが縄をかけられて転がされている。後ろの建物からは証拠になりそうな書類を持ち出している兵士が見えた。サイベリアン自身はこれ以上この場にいても、何もできることはない。帰還するべく、馬にまたがった。
「お待ちください」
「なんだ」
「お一人でご帰還なさるおつもりですか」
サイベリアンは一人馬を走らせて帰るつもりだ。髪色も瞳の色も魔法で変えている。今話しかけてきているワイマン以外に、自分がサイベリアンだとわかるものはいない。ここに来るときだって、かなりの少数で来たが……帰りだと何か問題でもあるのかと思う。
人数が多くなれば動きが制限されるし、移動に時間がかかる。サイベリアンは一刻も早くケンの待つ屋敷に帰りたかった。
「そのつもりだ」
「少々お待ちください。私もお供いたします」
必要ない。そう言いたかった。こちらの指揮はごろつきしかいなかったので部隊長クラスで確かに事足りるだろうが、第二騎士団副団長が直接指揮を執っているということは兵士や騎士に「この作戦が重要である」という、いい意味での緊張感を与えられると思うのだが……。
「貴殿は残った方が……」
「いえ、優秀な副官が来ております。彼に任せれば問題ない。それに、男爵領捜査のこともありますので、一度帝都に戻ります」
被せるようにワイマンから最もな理由を告げられてしまえば、断る理由もない。若干申し訳ない気持ちになりながらもサイベリアンは承知した。
サイベリアンは馬を飛ばして、街道を駆け抜けた。往路に一日半かけた道のりを一日かからずに戻ってくる。強行軍に着き合わせてしまったワイマンとは、話していたとおり帝都に入った時点でわかれた。疲労をにじませながらも、彼はそのまま帝都にある騎士団の詰所に向かったようだった。
サイベリアンも疲労困憊の馬をねぎらいながら自身の屋敷の門をくぐった。
屋敷の人間にはケンが帰ってしまわないように、屋敷から出さないように指示してあったが、いま彼は何をしているだろうか……。
もう辺りは真っ暗どころか、寝入る時間に近かった。すでに夕飯も済ませて、床についているかもしれない。
寝てしまっていてもかまわない。焦る必要はないのだ。ケンはこれからも屋敷に帰ればいるのだから。
今度こそ……、明日の朝こそゆっくりと朝食をとりながら今後の話をケンとしなくては、と門からの長いアプローチを走りながらサイベリアンは考える。
ふと視線をあげると、玄関の大扉が見える。扉の前には夜だというのに迎えの使用人たちがいつもと変わらず並んでいた。
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