振り向いてください、シャノン王子。

夜のトラフグ

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chapter5 憎悪に染まる

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 東国に着いて五日。とうとう今日から、本格的な会議が始まる。そしてーー

(………シャノン王子……)

 エレノアはかつての最推し、そして今の想い人を想起する。愛し、焦がれ、一心に想っていた人。彼に、今日逢うことになる。

(……私は………)

 許されないことをした。彼の敵となり、数多の人を殺した。
 だから、恨まれてていい。憎まれてていい。私も喜んで悪党に成り下がり、非道な敵として振る舞おう。けれどーー

(私は、あなたが好きです…………)

 会議を前に、この想いだけは偽ることができそうもないのも、また事実だった。

##

 カツリ、カツリと刻むように長い回廊を歩く。くせになったこの鷹揚な歩き方も、浮き立つエレノアの心を沈めるのに役立ってくれた。

「よお、やっと来たか。英雄さま」

 先を歩いていた上司が振り向いて、そう茶化す。エレノアは苦笑した。

「………やめてくださいよ。私はただのいち軍人ですから」
「ははっ、まぁおまえはいつもそう言うよな」

 閣下の言葉はそこで途切れた。不審に思って閣下の顔を覗き見ると、彼は珍しく真面目な顔をしている。

「………けどよ。ここのやつらは少なくとも、そんな言い訳を聞いちゃくれねえぜ?」

ギィィーーバタン!

 言葉と共に、会場の扉が開いた。私たちで最後だったようで、なかには厳めしい顔の男たちが勢揃いしている。そのなかに、彼が、いた。

 夢にまで見た、シャノン王子。彼のアメジストのような美しい瞳が、私の姿を捉えた途端に憎悪で染め上がるのを、この目で見た。
 ああ、やはり。私は憎まれているらしい。

 身体が心臓から凍りついていくような感覚に陥りながら、私はなんとか閣下に答える。

「………ええ。肝に命じておきます」
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