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 さっと、通り抜ける、つもりだった。

 表通りと違って格段に明かりが少ない脇道だったから。
 ワンボックスの後ろドアが開いていることにさえ気づけなかった。
 ドアが開く音がすることもなく、車内の暗闇から伸びてきた複数の腕に佳奈が絡め取られ、引きずりこまれた。
「佳奈!!」
 奈々の絶叫が中りに響いたのを狭い車内で押さえつけられながら聞いた。
 同時にワンボックスのドアがけたたましい音を立てて閉まろうとして、途中で止まった。
 猿轡をかまされながら必死で、逃げてと願ったけれど、それも叶わなかった。
 ドアに手をかけ、閉められてなるものかと踏ん張っていた奈々は、あっさりと再度開けられたドアから車内に引きずりこまれた。

「いやっ!やだっ!やぁっっ!!」
 どこかに向けて走る車内で、奈々の絶叫が響く。
 猿轡に腕までをロープでぐるぐる巻きに拘束された状態で視線だけで奈々を探す。
 そして、その惨状に打ちのめされる。
「うるせぇっ!」
 奈々のドレスの胸元をハサミで切っていた男が遠慮なしに奈々の頬を殴った。
「静かにしてれば、気持ちよくしてやるって、」
 わかったか?ん?とピタピタと頬を撫でる男に、奈々は朦朧とした視線を向ける。
 脳震盪でも起こしたのではと心配になるけれど、今はそれ以上に切羽詰まった状況だ。
「どうする?濡れてないべ?」
 奈々の腕を押さえつけていた別の男がそう言った。
「まてよ……?んー、まぁ、濡れてるわけねぇよな。」
 殴った男が無遠慮に奈々のスカートに手を突っ込む。
 奈々は蒼白になり、あえぐようなか細い声で、悲鳴をあげた。
「できれば解れてたほうがいんだけどな?あんま乾いてっと痛ぇじゃん?こっちも?」
 電マ地獄するか?と下卑た笑みを交わす男達に呆然と視線を向けると、不意に奈々を殴りつけた男がこちらを見た。
「お前はあとで、ゆっくりじっくり可愛がってやっから大人しくしとけよな?」
 その男の目に、脅しではないことを感じ取り震えた。
 これが、きっと初めてではないのだ。こういうことを何度もやってきているのだ、この男達は。
「あー、たまんねぇ。そのまま突っ込んでも電マしてもどっちでもいーけどさ、こっちはもう突っ込んでもいーよな?」
 そうして奈々の腕を拘束している男が片手で器用にズボンのベルトを外しにかかる。
 それを恐怖を湛えた瞳で見つめていた奈々が、ふとこちらを見た。
 その絶望に満ちた奈々の視線に耐えきれず、佳奈は視線を下へとそらす。
 今、奈々に起こっていることは、近い将来自分に起こることだ。
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