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4話 <ルイ視点>
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顔色の悪いサシャの腕を掴んだのは、長い銀髪のすらっとした見栄えの良い男だった。
「レイモン?」
その男を呼ぶサシャの顔に、安堵の表情が浮かんでいる。
ずいぶん仲がいいな。友達か?
「――、――――? ――――――――」
レイモンと呼ばれた男が、心配そうな顔で何かサシャを説得している。
いや、俺もこの夕食はすごく居心地が悪かった。
サシャが緊張しているのは明らかだったし、食事が進むにつれ、サシャの顔が苦しそうに強張っていった。
俺はサシャと二人きりで、昔のように語り合いたかっただけなのに……
サシャは青白い顔色で銀髪の男に腕を支えられたまま、何か頷いている。
俺がサシャの体を支えて、楽なところに連れていってあげたいのに、エディトが座っていて席の外に出られない。
「ルイ、エディトさんごめん。俺、今日ちょっと体調が悪いみたいだ。ここは俺の奢りだから、楽しんでいって。帰りの道、分かるかな? 大通りに出れば、王城に向かって一本道だから……」
そう言うサシャの横で、レイモンがこちらを少し睨んだ気がする。
は?
俺のせいでサシャが具合が悪くなったとか勘違いしているのか? この男は?
俺がサシャが嫌がることなど、するわけがない。
俺が唯一心を許した友人はサシャだし、サシャの一番の親友は俺のはずだ。
まぁ……サシャは肝心なことを言わずに、卒業してしまったし……
ガルムナンドで再会しても、微妙に俺のことを避けているような気もするけど……
「サシャ、送っていくよ」
俺の言葉に、サシャは即答で「いや、いいよ」と断りをいれた。
「すまない。この店本当に美味しいから、メインディッシュも楽しんでいって」
サシャは硬く笑って踵を返した。
サシャのすぐそば触れそうな距離で、ずいぶん優しげな瞳で見下ろすレイモンとかいう男が気に食わない。
そんなヒョロっとした腕じゃ、具合の悪いサシャを支えられないだろう。
サシャは手早く会計を終わらせると、俺の視線など振り返ることなくドアから店の外に出て行ってしまった。
「……彼、サシャさんの恋人の一人かしら?」
エディトの呟きに、俺は何を言っているんだ? とマジマジと彼女を見返した。
「サシャさん、男の人が好きらしいわよ」
「え?」
エディトは何を言っているんだ? 意味が分からない。
「私、ガルムナンド語勉強しているから。聞いてしまったの。こっちではサシャさん、結構有名な遊び人だって」
「そんな訳、ないだろう……」
戸惑う俺に、エディトが冷え切った目を向けてきた。
「親友だと思っているのは、ルイ、あなただけなのよ。私、サシャさんはエブラとの縁を切りたがっているんじゃないかと思うの」
あまりに鋭すぎる彼女の言葉に、俺は心の防御を一瞬忘れた。
そんな訳ないと思いたいのに、彼女の言う通りだと思う自分がいる。
サシャがエブラとの縁を……俺との縁を切りたいと思っていたなら、この三年間ずっと疑問に思っていたことの答えが出る。
突きつけられた事実に、店内の喧騒が遠くに霞んでいく。
その後エディトと何を喋ったのかも、よく覚えていない。
サシャが散々美味しいと言っていたステーキは、まるでゴムのように味がなく、俺は気が付いたら宿のベッドに外出着のまま伏せっていた。
「レイモン?」
その男を呼ぶサシャの顔に、安堵の表情が浮かんでいる。
ずいぶん仲がいいな。友達か?
「――、――――? ――――――――」
レイモンと呼ばれた男が、心配そうな顔で何かサシャを説得している。
いや、俺もこの夕食はすごく居心地が悪かった。
サシャが緊張しているのは明らかだったし、食事が進むにつれ、サシャの顔が苦しそうに強張っていった。
俺はサシャと二人きりで、昔のように語り合いたかっただけなのに……
サシャは青白い顔色で銀髪の男に腕を支えられたまま、何か頷いている。
俺がサシャの体を支えて、楽なところに連れていってあげたいのに、エディトが座っていて席の外に出られない。
「ルイ、エディトさんごめん。俺、今日ちょっと体調が悪いみたいだ。ここは俺の奢りだから、楽しんでいって。帰りの道、分かるかな? 大通りに出れば、王城に向かって一本道だから……」
そう言うサシャの横で、レイモンがこちらを少し睨んだ気がする。
は?
俺のせいでサシャが具合が悪くなったとか勘違いしているのか? この男は?
俺がサシャが嫌がることなど、するわけがない。
俺が唯一心を許した友人はサシャだし、サシャの一番の親友は俺のはずだ。
まぁ……サシャは肝心なことを言わずに、卒業してしまったし……
ガルムナンドで再会しても、微妙に俺のことを避けているような気もするけど……
「サシャ、送っていくよ」
俺の言葉に、サシャは即答で「いや、いいよ」と断りをいれた。
「すまない。この店本当に美味しいから、メインディッシュも楽しんでいって」
サシャは硬く笑って踵を返した。
サシャのすぐそば触れそうな距離で、ずいぶん優しげな瞳で見下ろすレイモンとかいう男が気に食わない。
そんなヒョロっとした腕じゃ、具合の悪いサシャを支えられないだろう。
サシャは手早く会計を終わらせると、俺の視線など振り返ることなくドアから店の外に出て行ってしまった。
「……彼、サシャさんの恋人の一人かしら?」
エディトの呟きに、俺は何を言っているんだ? とマジマジと彼女を見返した。
「サシャさん、男の人が好きらしいわよ」
「え?」
エディトは何を言っているんだ? 意味が分からない。
「私、ガルムナンド語勉強しているから。聞いてしまったの。こっちではサシャさん、結構有名な遊び人だって」
「そんな訳、ないだろう……」
戸惑う俺に、エディトが冷え切った目を向けてきた。
「親友だと思っているのは、ルイ、あなただけなのよ。私、サシャさんはエブラとの縁を切りたがっているんじゃないかと思うの」
あまりに鋭すぎる彼女の言葉に、俺は心の防御を一瞬忘れた。
そんな訳ないと思いたいのに、彼女の言う通りだと思う自分がいる。
サシャがエブラとの縁を……俺との縁を切りたいと思っていたなら、この三年間ずっと疑問に思っていたことの答えが出る。
突きつけられた事実に、店内の喧騒が遠くに霞んでいく。
その後エディトと何を喋ったのかも、よく覚えていない。
サシャが散々美味しいと言っていたステーキは、まるでゴムのように味がなく、俺は気が付いたら宿のベッドに外出着のまま伏せっていた。
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