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321、暴露しちゃった
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「あの世界は、ゲームの中の作られた世界じゃなくて、本当に存在する世界なんだ」
一番大事なところはここだと思う。
まずはそのことを雄太に知って欲しい。
雄太はただ一言、「ふうん」と相槌を打った。
「だから、ADOに存在している人たちはNPCなんかじゃなくて、本当に生きてる人たちだし、こっちの世界の俺たちみたいに死んじゃうともう生き返らないし、ちゃんと一人一人今まで生きてきた人生があって、ちゃんと個性もあるんだ」
「それを健吾が知ったのは、どういういきさつなんだ?」
「っていうか、嘘だぁって言わないのかよ」
「信じるって言ったの、聞いてたのか?」
やけにすんなり信じる雄太に驚いていると、呆れたような視線が返ってきた。確かに最初にそう言われたけどさ。内容が内容じゃん。
困惑していると、雄太が手を伸ばして、床に座り込んでる俺の頭を手の平でパシっと叩いた。
「俺も疑問に思ってたんだよ。ゲームにしちゃほんとに些細なことがあんまりにも細かすぎる設定でしかもリアルでよ。前に一緒に辺境に旅した奴が魔物にやられたときあったろ。あれで何かがおかしいって思ったんだよ。たった一人のNPCの人生を単なるゲームがそこまで細かく設定するもんなのかって。普通だったら「昔勇者に助けてもらったから力になるために辺境に行く」っていう設定のNPCだったらそれだけが設定だろ。それが、それをきっかけに何をしたとか、親はどうだったとか、でも昔は親はこうだったんだとか。出るわ出るわ。それを聞いて、俺ら全員そいつのことをNPCなんて思えなくなったから」
「ユイも泣いてたよね」
「泣くぜそりゃ。あれだけ仲良くなった友達が魔物に食いちぎられるんだぜ。絶望もするし、何であの時俺らで倒せなかったんだなんて後悔もしたし、心抉られた。あれでゲームだからなんて言われたら、逆に俺らキレるぞ。まあ、健吾に祈りを上げてもらって、ちょっとは落ち着いたんだけどな」
そっか。雄太は、ADOの世界の中で、俺なんかよりもっとキツイ目に会ってるんだ。戦闘職だし、前線に行って突っ走ってるから余計に。
「勇者だって、弔いだとか言ってちょっと酒杯呷ってたよあんとき。それでその顔を見て、ああ、勇者も人だったんだななんて変な感想を抱いたし。っつうか俺の話はいいんだよ。何でそれを知ったのかってことだよ」
「そうだった。雄太はさ、現社の授業で習った物質転移実験の大事故のこと覚えてる?」
「ああ。研究所の人が爆発に巻き込まれてほぼ生存者がいなかったやつだろ」
「うん。あれの研究者がさ、さっき会ったヴィルさんのお母さんなんだ」
今度はさすがに雄太も驚いた顔をした。
俺は前にヴィルさんに話してもらった話を、ザッと雄太に話して聞かせた。
ヴィデロさんのこと、ヴィルさんのこと、そしてアリッサさんのこと、ADOのこと。
アリッサさんが何のためにADOというゲームという名の異世界に通じる媒体を作ったのか。
俺たちプレイヤーに何をして欲しかったのか。そして、あの世界の終焉の予兆。希望の光、重要クエストのこと。そして、勇者とセイジさんとエミリさんが望んでいること。サラさんのこと。
俺が知りえたたくさんのことを、気付けばほとんど話していた。
転移装置がすでに稼働し始めていること以外。
話し終えると、雄太は難しい顔をして唸っていた。
「……確かに、こんな話は誰にも言えねえよな……っつうか、なんつうの、健吾お前さ」
「ん?」
「何でそんなにうまいこと偶然が重なってそんな真実に辿り着いたりするんだよ。おかしくね? 今の話より俺はそっちの方が絶対におかしいと思う」
「たぶん、それはヴィデロさんの「幸運」が絡んでるんじゃないかな、なんてたまに思ったりするんだ。だって俺一人だったら絶対にありえない」
「なんだか門番さん親子人間離れしてるよな。でも確かに、これで信じるかどうかは俺次第とか言われたのがわかった気がする。俺もこれ、健吾じゃなかったら信じねえ。鼻で笑って終わるわ」
「俺だと信じるの?」
「だって嘘ついてねえじゃん。挙動不審にならねえし」
俺って、そんなに嘘つくと態度に出るんだ……。これから気を付けよう。
がっくりしながらそんなことを決意していると、雄太がはぁ、と溜め息を吐いた。
「思った以上に大事だったぜ……しかも自らそんなところに突っ込んでく健吾が恐ろしい」
「突っ込んでくっていうか、流れに乗っちゃったっていうかそんな感じなんだけどね」
ははは、と笑いながら肩を竦めた。
「その流れに乗って、そのおかしな親子みたいに爆発に巻き込まれて異世界に転移しちまって向こうで門番さんとイチャラブしてました、なんてなるなよ」
そんなことを雄太が呟くけど。転移装置のことは言えなかった。多分雄太は信じてくれる。だからこそ、言えなかった。だって俺、ヴィルさんのGOサインが出たら確実にその装置に乗って、一方通行の転移をする気だったから。
それにこれは、ヴィルさんが手がけていることで、たかがバイトの俺が誰かにひょろっと口に出していい内容じゃないし。
少しだけ目を伏せた俺のおでこに、雄太の指がビシッと炸裂した。
「痛っ!」
「この際、全部吐いちまう?」
指をデコピンの形に保ったまま、雄太が俺を覗き込むように屈んできた。
でもやっぱり口を開くことはためらわれて、誤魔化すわけじゃなく、事情を説明した。
「今の話はヴィルさんからオッケーが出たけど、他の話は今度はヴィルさんの事業とかそういうことに関係してくるからちょっと言っていいのか悩む」
「そっか。んじゃ、そっちは言わなくていい」
「ごめん」
俺が素直に頭を下げると、雄太は真顔でいや、と首を横に振った。
「学生バイトがぺらペら事業内容を話しちまうのはちょっとヤバいだろうしな。いいって。それにそっちはあんまり聞かない方がいい気がする」
なんか、聞いちまったら否応なく巻き込まれる気がする、なんて呟いた雄太に今度は俺が真顔になった。確かに。あのいつの間にやら強引に流れるようにことを進めるヴィルさんの手に掛かったら、一介の学生である雄太なんて簡単に転がされそうではある。もし雄太がヴィルさんに気に入られたら、きっと俺みたいにサッと足場を固められちゃうよな。
ラブラブ大学生活を夢見る雄太にとっては迷惑以外の何物でもないよなそれは。
「じゃあもう一つ」
「もう一つ?」
雄太の言葉に他に何の話があったっけ? と首を傾げていると、雄太がもう一度デコピンをかましてきた。
「痛! だから痛いって」
「あんだろ、身長を伸ばすアイテム。健吾は変なアイテムばっかり持ってるから、この際秘匿されたアイテムも教えろよ報酬払うから。あれか? 錬金面白レシピの中の一つか?」
「あ、それか」
すっかり忘れてたよ。なんて誤魔化そうとすると、雄太はいい笑顔で「思い出しただろ。じゃあ詳細よろ」と促してきた。
「そのアイテムって実は農園用の肥料なんだよ。植物の成長を促すやつ」
と、『細胞活性剤』のことを説明し始めた瞬間、雄太の笑い声が部屋中に響いた。
「も、もしかして健吾、自分も身長伸びないかって、肥料を、飲んでみたのかよ! ぶははははは」
「違う! ……くないけど、最初は不可抗力だって!」
「最初! ってことは何度も飲んだってことか! た、たい、大変なんだな……っ! 身長が低いってのも……!」
笑い転げて涙目になってる雄太は、椅子から転げ落ちてもなお笑い続けていた。
でもな雄太。そんなに笑ってるけど、そのアイテムの効能は笑い事じゃないんだって。しかも安易に雄太に渡したりすると俺捕まるし。怖いアイテムなんだよ。飲みすぎるとじいちゃんになるしな! そして稀に出る副作用で中身は成人、見た目は子供! ってなるし。あれはちょっとトラウマレベルだった……。
「せっかくブレイブ用の『感覚機能破壊薬』大量に作ったけど、いらないんだね、高橋くん」
「わ、待っているいる。あれマジ重宝するから。笑ってごめんて。だって、身長伸ばすのに肥料……ぶふっ、や、いや、イイカンガエダトオモウヨ」
「棒読みになってるっての。神殿に入るときに渡すよ。沢山作ったんだ。あと、防御力あげるやつとかも」
「それより俺はハイパーポーションでインベントリ一枠いっぱいにしてみてえ。でもアレたっけえんだろ」
「勇者には一本1200ガルで卸してたはず。でも安いってクラッシュとセイジさんに驚かれたけど」
「1200……いっぱいにするのには12万……無理だ。俺、せいぜい2本くらいしか買えねえよ……」
悩んでる雄太の顔を見て、今度は俺が盛大に吹き出した。
所持金2400ガル! どんだけ散財してるんだよ。辺境の魔物の素材とか結構な高値で買ってもらえるはずなんだけど。
それを聞くと、雄太は想像通りの答えを返してくれた。
「だって鎧とか大剣とか金掛かりすぎるんだもん。しかも絶対一つじゃ足りねえし。前もセイジのクエストに付き合ってたら一回で耐久値全部削られて一つ鎧駄目になったし。辺境の性能バカ高い鎧は値段もバカ高いんだよ。プレイヤーで凄腕鍛冶師がいるんだけど、そいつが作るのなんてわけわからねえ値段ついてるぜ……欲しいのに、あの青い鎧、欲しいのに……! 120万ガルとかどこをどう絞っても出てこねえよ……!」
そして雄太の常備している鎧は常に3~4着らしい。恐ろしい。俺は今まで3~4着しか装備買い替えたことないよ。っていうか今のはほぼヴィデロさんからのプレゼントだけど。
大剣もまた、性能が全く違うものを数個必ず所持してるみたい。俺の剣はティソナドスカラス一択なのに。戦闘職怖い。聞けばユイも杖を常に3個はストックしてるし、ブレイブも大きい弓から小さい弓まで5個くらい所持してるらしい。海里もちょっといい双剣を見つけると即買いして辺境の貸し倉庫みたいなところにひたすら詰め込んでるらしい。そこらへんは海里も男の子だなあ、って思う。収集癖かな? 俺の素材と同じような物だよなきっと。
一番大事なところはここだと思う。
まずはそのことを雄太に知って欲しい。
雄太はただ一言、「ふうん」と相槌を打った。
「だから、ADOに存在している人たちはNPCなんかじゃなくて、本当に生きてる人たちだし、こっちの世界の俺たちみたいに死んじゃうともう生き返らないし、ちゃんと一人一人今まで生きてきた人生があって、ちゃんと個性もあるんだ」
「それを健吾が知ったのは、どういういきさつなんだ?」
「っていうか、嘘だぁって言わないのかよ」
「信じるって言ったの、聞いてたのか?」
やけにすんなり信じる雄太に驚いていると、呆れたような視線が返ってきた。確かに最初にそう言われたけどさ。内容が内容じゃん。
困惑していると、雄太が手を伸ばして、床に座り込んでる俺の頭を手の平でパシっと叩いた。
「俺も疑問に思ってたんだよ。ゲームにしちゃほんとに些細なことがあんまりにも細かすぎる設定でしかもリアルでよ。前に一緒に辺境に旅した奴が魔物にやられたときあったろ。あれで何かがおかしいって思ったんだよ。たった一人のNPCの人生を単なるゲームがそこまで細かく設定するもんなのかって。普通だったら「昔勇者に助けてもらったから力になるために辺境に行く」っていう設定のNPCだったらそれだけが設定だろ。それが、それをきっかけに何をしたとか、親はどうだったとか、でも昔は親はこうだったんだとか。出るわ出るわ。それを聞いて、俺ら全員そいつのことをNPCなんて思えなくなったから」
「ユイも泣いてたよね」
「泣くぜそりゃ。あれだけ仲良くなった友達が魔物に食いちぎられるんだぜ。絶望もするし、何であの時俺らで倒せなかったんだなんて後悔もしたし、心抉られた。あれでゲームだからなんて言われたら、逆に俺らキレるぞ。まあ、健吾に祈りを上げてもらって、ちょっとは落ち着いたんだけどな」
そっか。雄太は、ADOの世界の中で、俺なんかよりもっとキツイ目に会ってるんだ。戦闘職だし、前線に行って突っ走ってるから余計に。
「勇者だって、弔いだとか言ってちょっと酒杯呷ってたよあんとき。それでその顔を見て、ああ、勇者も人だったんだななんて変な感想を抱いたし。っつうか俺の話はいいんだよ。何でそれを知ったのかってことだよ」
「そうだった。雄太はさ、現社の授業で習った物質転移実験の大事故のこと覚えてる?」
「ああ。研究所の人が爆発に巻き込まれてほぼ生存者がいなかったやつだろ」
「うん。あれの研究者がさ、さっき会ったヴィルさんのお母さんなんだ」
今度はさすがに雄太も驚いた顔をした。
俺は前にヴィルさんに話してもらった話を、ザッと雄太に話して聞かせた。
ヴィデロさんのこと、ヴィルさんのこと、そしてアリッサさんのこと、ADOのこと。
アリッサさんが何のためにADOというゲームという名の異世界に通じる媒体を作ったのか。
俺たちプレイヤーに何をして欲しかったのか。そして、あの世界の終焉の予兆。希望の光、重要クエストのこと。そして、勇者とセイジさんとエミリさんが望んでいること。サラさんのこと。
俺が知りえたたくさんのことを、気付けばほとんど話していた。
転移装置がすでに稼働し始めていること以外。
話し終えると、雄太は難しい顔をして唸っていた。
「……確かに、こんな話は誰にも言えねえよな……っつうか、なんつうの、健吾お前さ」
「ん?」
「何でそんなにうまいこと偶然が重なってそんな真実に辿り着いたりするんだよ。おかしくね? 今の話より俺はそっちの方が絶対におかしいと思う」
「たぶん、それはヴィデロさんの「幸運」が絡んでるんじゃないかな、なんてたまに思ったりするんだ。だって俺一人だったら絶対にありえない」
「なんだか門番さん親子人間離れしてるよな。でも確かに、これで信じるかどうかは俺次第とか言われたのがわかった気がする。俺もこれ、健吾じゃなかったら信じねえ。鼻で笑って終わるわ」
「俺だと信じるの?」
「だって嘘ついてねえじゃん。挙動不審にならねえし」
俺って、そんなに嘘つくと態度に出るんだ……。これから気を付けよう。
がっくりしながらそんなことを決意していると、雄太がはぁ、と溜め息を吐いた。
「思った以上に大事だったぜ……しかも自らそんなところに突っ込んでく健吾が恐ろしい」
「突っ込んでくっていうか、流れに乗っちゃったっていうかそんな感じなんだけどね」
ははは、と笑いながら肩を竦めた。
「その流れに乗って、そのおかしな親子みたいに爆発に巻き込まれて異世界に転移しちまって向こうで門番さんとイチャラブしてました、なんてなるなよ」
そんなことを雄太が呟くけど。転移装置のことは言えなかった。多分雄太は信じてくれる。だからこそ、言えなかった。だって俺、ヴィルさんのGOサインが出たら確実にその装置に乗って、一方通行の転移をする気だったから。
それにこれは、ヴィルさんが手がけていることで、たかがバイトの俺が誰かにひょろっと口に出していい内容じゃないし。
少しだけ目を伏せた俺のおでこに、雄太の指がビシッと炸裂した。
「痛っ!」
「この際、全部吐いちまう?」
指をデコピンの形に保ったまま、雄太が俺を覗き込むように屈んできた。
でもやっぱり口を開くことはためらわれて、誤魔化すわけじゃなく、事情を説明した。
「今の話はヴィルさんからオッケーが出たけど、他の話は今度はヴィルさんの事業とかそういうことに関係してくるからちょっと言っていいのか悩む」
「そっか。んじゃ、そっちは言わなくていい」
「ごめん」
俺が素直に頭を下げると、雄太は真顔でいや、と首を横に振った。
「学生バイトがぺらペら事業内容を話しちまうのはちょっとヤバいだろうしな。いいって。それにそっちはあんまり聞かない方がいい気がする」
なんか、聞いちまったら否応なく巻き込まれる気がする、なんて呟いた雄太に今度は俺が真顔になった。確かに。あのいつの間にやら強引に流れるようにことを進めるヴィルさんの手に掛かったら、一介の学生である雄太なんて簡単に転がされそうではある。もし雄太がヴィルさんに気に入られたら、きっと俺みたいにサッと足場を固められちゃうよな。
ラブラブ大学生活を夢見る雄太にとっては迷惑以外の何物でもないよなそれは。
「じゃあもう一つ」
「もう一つ?」
雄太の言葉に他に何の話があったっけ? と首を傾げていると、雄太がもう一度デコピンをかましてきた。
「痛! だから痛いって」
「あんだろ、身長を伸ばすアイテム。健吾は変なアイテムばっかり持ってるから、この際秘匿されたアイテムも教えろよ報酬払うから。あれか? 錬金面白レシピの中の一つか?」
「あ、それか」
すっかり忘れてたよ。なんて誤魔化そうとすると、雄太はいい笑顔で「思い出しただろ。じゃあ詳細よろ」と促してきた。
「そのアイテムって実は農園用の肥料なんだよ。植物の成長を促すやつ」
と、『細胞活性剤』のことを説明し始めた瞬間、雄太の笑い声が部屋中に響いた。
「も、もしかして健吾、自分も身長伸びないかって、肥料を、飲んでみたのかよ! ぶははははは」
「違う! ……くないけど、最初は不可抗力だって!」
「最初! ってことは何度も飲んだってことか! た、たい、大変なんだな……っ! 身長が低いってのも……!」
笑い転げて涙目になってる雄太は、椅子から転げ落ちてもなお笑い続けていた。
でもな雄太。そんなに笑ってるけど、そのアイテムの効能は笑い事じゃないんだって。しかも安易に雄太に渡したりすると俺捕まるし。怖いアイテムなんだよ。飲みすぎるとじいちゃんになるしな! そして稀に出る副作用で中身は成人、見た目は子供! ってなるし。あれはちょっとトラウマレベルだった……。
「せっかくブレイブ用の『感覚機能破壊薬』大量に作ったけど、いらないんだね、高橋くん」
「わ、待っているいる。あれマジ重宝するから。笑ってごめんて。だって、身長伸ばすのに肥料……ぶふっ、や、いや、イイカンガエダトオモウヨ」
「棒読みになってるっての。神殿に入るときに渡すよ。沢山作ったんだ。あと、防御力あげるやつとかも」
「それより俺はハイパーポーションでインベントリ一枠いっぱいにしてみてえ。でもアレたっけえんだろ」
「勇者には一本1200ガルで卸してたはず。でも安いってクラッシュとセイジさんに驚かれたけど」
「1200……いっぱいにするのには12万……無理だ。俺、せいぜい2本くらいしか買えねえよ……」
悩んでる雄太の顔を見て、今度は俺が盛大に吹き出した。
所持金2400ガル! どんだけ散財してるんだよ。辺境の魔物の素材とか結構な高値で買ってもらえるはずなんだけど。
それを聞くと、雄太は想像通りの答えを返してくれた。
「だって鎧とか大剣とか金掛かりすぎるんだもん。しかも絶対一つじゃ足りねえし。前もセイジのクエストに付き合ってたら一回で耐久値全部削られて一つ鎧駄目になったし。辺境の性能バカ高い鎧は値段もバカ高いんだよ。プレイヤーで凄腕鍛冶師がいるんだけど、そいつが作るのなんてわけわからねえ値段ついてるぜ……欲しいのに、あの青い鎧、欲しいのに……! 120万ガルとかどこをどう絞っても出てこねえよ……!」
そして雄太の常備している鎧は常に3~4着らしい。恐ろしい。俺は今まで3~4着しか装備買い替えたことないよ。っていうか今のはほぼヴィデロさんからのプレゼントだけど。
大剣もまた、性能が全く違うものを数個必ず所持してるみたい。俺の剣はティソナドスカラス一択なのに。戦闘職怖い。聞けばユイも杖を常に3個はストックしてるし、ブレイブも大きい弓から小さい弓まで5個くらい所持してるらしい。海里もちょっといい双剣を見つけると即買いして辺境の貸し倉庫みたいなところにひたすら詰め込んでるらしい。そこらへんは海里も男の子だなあ、って思う。収集癖かな? 俺の素材と同じような物だよなきっと。
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