13 / 931
新しい出会い
新しい出会い
しおりを挟む
【いいなぁ、こんな風に心配してもらって。僕なんか、茨木さん以外誰にも心配されない。実の親にさえ見捨てられたし】
羨ましいなぁ、内心そう思いながら、男性の体に毛布をそっと掛けた。橘さんが到着するまでスマホを握り締め男性の側に寄り添った。
10分後ーー
市営住宅前の砂利道を颯爽と歩いてこっちに向かってくる人影が見えた。
薄暗い外灯の下を素通りし、似たような建物が建ち並び、迷路みたいに入り組んでいるのに、その人物は迷うことなくうちの前に辿り着いた。
「初めまして、橘と申します」
名前を名乗りながらすっと現れたスーツ姿の男性は、どちらかといえばやせ形で、背が高くスタイル抜群だった。
彫りが深く端正な顔立ちで、同じ男とは思えないくらい格好いい、大人の人だった。
「名前を伺っても宜しいですか?」
男性に聞かれ慌ててポケットの中を探った。
「ままね、おはなし、できないの」
ガタっと玄関のドアが少しだけ開いて、一太が顔だけ出した。
「そうですか、それは失礼しました」
さぞかし驚くだろうなと思ったけど、男性はそれほど驚いてはいないようだった。顔に出ないだけかも知れないけど。
「ご面倒をお掛けしました。卯月、狸寝入りしていないでさっさとうちに帰りますよ。全く貴方という人は」
狸寝入り?
今、確かそう・・・
聞き間違いかと思ったけど、下を向くと、男性と目が合った。獰猛な眼差しで射ぬくように見詰め返され、背筋が一瞬で凍り付いた。
羨ましいなぁ、内心そう思いながら、男性の体に毛布をそっと掛けた。橘さんが到着するまでスマホを握り締め男性の側に寄り添った。
10分後ーー
市営住宅前の砂利道を颯爽と歩いてこっちに向かってくる人影が見えた。
薄暗い外灯の下を素通りし、似たような建物が建ち並び、迷路みたいに入り組んでいるのに、その人物は迷うことなくうちの前に辿り着いた。
「初めまして、橘と申します」
名前を名乗りながらすっと現れたスーツ姿の男性は、どちらかといえばやせ形で、背が高くスタイル抜群だった。
彫りが深く端正な顔立ちで、同じ男とは思えないくらい格好いい、大人の人だった。
「名前を伺っても宜しいですか?」
男性に聞かれ慌ててポケットの中を探った。
「ままね、おはなし、できないの」
ガタっと玄関のドアが少しだけ開いて、一太が顔だけ出した。
「そうですか、それは失礼しました」
さぞかし驚くだろうなと思ったけど、男性はそれほど驚いてはいないようだった。顔に出ないだけかも知れないけど。
「ご面倒をお掛けしました。卯月、狸寝入りしていないでさっさとうちに帰りますよ。全く貴方という人は」
狸寝入り?
今、確かそう・・・
聞き間違いかと思ったけど、下を向くと、男性と目が合った。獰猛な眼差しで射ぬくように見詰め返され、背筋が一瞬で凍り付いた。
54
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる