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第一章 おばあちゃん編

セバスチャンの思い出

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私はセバスチャン
以前は旦那様の生家ノーザンコート伯爵家の
当主の側近でした。
ノーザンコート家は爵位は低いが建国より続いている由緒ある家系
学者を多く輩出している名家である。

王家の姫が次男ローガン様の元へ降嫁され侯爵家を起こされる。
1人だけノーザンコートよりの付き添いを許すとの王家からの通達で 旦那様よりローガン様を支えてくれるよう、と強く頼まれた。
他の使用人は王家で用意するとの事。
これではローガン様が針のむしろではないか?

コーネリア姫、そんな姫聞いた事も無い
きっと王家の出生のはっきりとしない娘を我が家に押し付け厄介払いしのだ。
そう考え 私は強い憤りを覚えた。

新クラレンス侯爵邸
既存の古い屋敷を直ぐに住めるよう突貫工事でそれなりに整えてあった。
それにしても酷い 床も艶が無くギシギシと音をたてる。余りに情けない。

「落ち着いたらあちらの空き地に新しく家を建てよう。
東側には薔薇の庭園を、彼女には白薔薇が似合うかな?
南側には池を、ガゼボの周りを白百合で飾ろう。」
ローガン様は夢見る少年のように頬を染め、これから訪れる未来を語っていた。


輿入れが近づいた日の夜
旦那様に書斎に呼ばれた。
部屋に入ると、旦那様の他に 奥様 ローガン様がお揃いであった。

「詳しい事が話せずお前も戸惑っておると思うが••••
この結婚はむしろ我々の方から申し出たのだよ。息子も承知している。
この結婚が王家の未来のカギになるかも知れないのだ。
これしか話せない私を許しておくれ。」
旦那様は私に頭を下げられた。

何か深い深い事情があるのだ。
悪意で王家に押し付けられた結婚ではなかったのだ!
旦那様の思いを汲み取り 精一杯ローガン様をお支えしよう。命尽きるまで。
そう心に誓った。



******************


輿入れ

夕方 日が陰るころ ひっそりと王家の馬車がやって来た
姫様のお輿入れである。

ローガン様がエスコートの為にドアに近づいた。

姫は なんと王に横抱きされて馬車から降りて来た。
そして、なんと お腹が大きい 妊娠している。

王がおおらかに笑って私に声を掛けた。
「其方がノーザンコートの執事か、
なにを面食らっておる、コーネリアの腹か?
ワハハ 阿呆め! 余の種ではないぞ!
愛娘を手放すのだ せめて室内まては予の手で抱いて運ぶとしよう」
王はイタズラが成功した子供のようにご機嫌であった。

王都から、わざわざ姫の輿入れの為に陛下が動かれた••••
何という恐れ多き事!

陛下とコーネリア姫
そこには愛があった。手中の珠のように大切に抱かれた姫。
けっして厄介払いなどではない。
この姫を託す相手に我が家は選ばれたのだ。
これほど名誉な事はない。感動で胸が震えた。

女神のように美しいコーネリア姫
子の父は神なのではないのかと錯覚してしまうほどだ。

ローガン様はうっとりとコーネリア様を見つめ腰を抱き、
「愛しのコーネリア姫、貴方に愛を誓いましょう。
貴方の子供は私の子供、こころ安らかにお過ごし下さい。」と愛を誓う。

それに答える様に コーネリア姫は、顔を赤らめローガン様に笑を返す。

コーネリア様とローガン様
そこだけが まるで聖典から抜け出てきた絵画のような景色に神の加護が感じられた。
 
コーネリア姫の専属侍女ディーネ様筆頭に王家から派遣された使用人20名を迎え、
まずは屋敷を磨き上げなければ
庭も整備しないと
新しいクラレンス侯爵家の幕開けです
さぁ!明日から忙しくなりますよ!!



*****************

そして今は

白い薔薇は、全て赤やピンクのバラに変わり
百合のガゼボは打ち捨てられ、
贅を凝らした屋敷には全く格の違う女が君臨している。

*****************



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