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第一章
17話
しおりを挟む目が覚めるといつの間にかベッドの中だった。
"ナーシャ…やっと目が覚めたのね"
目の前にはティエラの顔が
ソランは私の横でベッドに頭を乗せて眠っていた。
2人に心配かけちゃった…。
"ええ…心配かけてごめんね…お母さまがシャンドラの暴力を知っていたなんて思いもしなくて。私が純粋で優しいからやり直すことが出来るなんて…私…今までなんのために…って急にフラフラして…。"
"3日も眠ってたのよ…。まだ起き上がらっちゃダメよ。"
ティエラは私のお腹に頭を乗せながら続ける
"大丈夫。大丈夫よ。私たちがいる。それにウィンやルークもいる。アイリス兄妹とも仲良くなったんでしょう?この家族に囚われる必要は無いのよ。"
ソランもそれに頷き
"だな。どんな形であろうと俺たちはナーシャの味方だ"
とはっきり言い切ってくれる2人に私は安心する…。
"ソラン…ティエラ……"
ガチャッ
「ナーシャ。目が覚めたのね…良かった…良かったわ。3日も起きなかったのよ…」
「お…お母さま…。」
「こんなに起きなかったのは川で溺れた以来ね…本当に、心配したわ…」
私が倒れたことは心配してくれているけれど
私がシャンドラに暴力を振るわれるのは良かったの?
シャンドラからの暴力は後で治癒魔法で治してもらえるかしら…?
私の中でお母さまへの疑問が増えていく。
そういえば、メイシーはどこにいったんだろう。
「…メイシーはどこにいるの?」
「それが…ナーシャが倒れてしまって私たちが心配してる間にどこかへ逃げてしまったみたいなのよ…。今お義父さまがメイシーを探させてるわ。メイシーは何故あなたを悪者にしたかったのかしらね…。ナーシャとメイシーの間で何があったの?」
「……。そう。私にも分からないわ」
私はメイシーに聞きたいことが山ほどあったのに…。
この2人を騙して私を貶めた理由が知りたい。
たとえどんな理由でも知らなければ気が済まない。
私はメイシーを絶対に許さない。
「メイシーとも何故こんなことしたのか聞きたいわ…。私達家族をこんなにして。あ、でも安心してちょうだい。私たちはもうメイシーに騙されることなんかないわ。」
「………」
コンコンっ
「ナーシャ……すまなかった……言い訳をしても許されることではないと理解している…。本当にすまない…」
何度謝られても…私はシャンドラの言う通り許す気持ちにはなれない…。
「ナーシャ!優しいいつも人のためを思うお父様と血の繋がったナーシャならまた家族4人でやり直すことは出来るわよね?きっと…お父様もそう願っているわ」
「………」
「レアロナ…それは言ってはいけないよ。ナーシャにも思う感情はたくさんあるだろう。気持ちを考いまはソッとしてあげよう…」
シャンドラは少し顔を引きづりながらお母様の肩を支え部屋を出ようと訴える。
「そうね。まだ起きたところで何も考えられないわよね。ごめんなさい…今すぐ流動食を用意してもらうわね」
「ええ。」
今まで私はお母さまの何を見ていたんだろう…
お父様が亡くなった時の記憶がふと蘇る。
ナーシャまで居なくなったらどうしよう!?
また川で溺れたら…!!
私を1人残してみんないなくなっちゃう…!
なんて泣いてたお母さま。
あの頃から…
お父様が大切な人だから亡くなってしまって悲しい。そういう気持ちじゃあなかったんだ…。
愛情たっぷりで優しく向き合ってくれると思っていたお母様はもう「お母さま」ではなくただひとりぼっちになるのを恐れた1人の女性にしか見えない…。
目が覚めて数日がたった。
けれど食欲もわかずにボーッと過ごしていた。
コンコンッ
ドアのノックが聞こえると私は誰とも話したくなくてベットに潜る
「お姉さま…まだ眠ってるのね…。はやく体調良くなるといいね」
そう言ってそうっと部屋を出ていくレティシャ。
ごめんねレティシャ…。
今は誰とも話したくないの…。
と思ったのもつかの間
コンコン「ナーシャ?ナーシャまだ寝ているの?レティシャがナーシャがずっと寝てるって悲しそうにしてたわよ?せっかくレティシャが心配してくれてるのに。それに…もう部屋に籠る必要もないのよ?そろそろ部屋から出てくれないと心配で仕方ないわ」
………。
自分やレティシャのことしか考えないお母さまの言葉一つ一つに頭がおかしくなりそうになる
「レアロナ…。今はナーシャも色々混乱してるはずだよ。そっとしてあげなさい」
「でも…もうナーシャが起きて数日も経っているのよ?ナーシャも、きっと寂しいはずだわ」
シャンドラは私の感情全てに気づいているようにお母さまを落ち着かせる。
今はシャンドラの方がまともに思える。
家族を騙し続けたメイシー。
それに騙されて手を上げ続けたシャンドラ。
それを見て見ぬふりをしてきたお母さま。
私は今まで何を見てきたんだろう。
コンコン「ナーシャ…今、少しいいかな?」
夕方になり昔のような優しい顔でナーシャに問いかけるシャンドラに私はそっと頷いた。
「お母さまは少し混乱しているようで…今まで残酷なことをしてきた私が言うのもなんだが…すまないね…。」
「…混乱……ね…」
「……。今日はナーシャに聞きたいことがあってね…。ナーシャは…これからどうしたいかな?もしここにいたくなければ別荘で過ごすのもいい。もちろんまだここで過ごしてもいいと言ってくれるならここで過ごしてくれると嬉しいよ。この部屋は居心地がわるければ屋敷隣に別邸を作るのもいい。…こんなことでは何も償いにならないことは分かっているから安心して欲しい…。」
誰もいない別荘…。本当なら逃げ込みたい。
正直シャンドラに手を借りることなくティエラとソランと一緒にどこか遠くへ行くことも考えはした。
けどここにいる方がメイシーの情報は入りやすい。
シャンドラが今こうやって寄り添ってくれてもいつ元のシャンドラになるか分からないしまだ信用もできないけど
その時は私にはこの家族に思い残すことはないからどうにでもなる。
もちろんレティシャは別だけど。レティシャには自分を見てくれる家族がいるから大丈夫なはず。
あ…けどこれだけはどうにか。
「大丈夫です。何も必要ありません……。ただ…あの婚約は…嫌でした」
「ああ…あの婚約……そうだね。あの婚約はグランデ公爵からの紹介でね…。きっとこの間の件もあったしレビア令嬢にもメイシーがナーシャは大金さえあればそれでいいそうです。とか何とか言いくるめていたんだろうと思う。今ならこれはメイシーだったんだと理解しているが少し前まで数ヵ月に1度、大金を引き出されていたからね。。時間がかかるかもしれないが必ず破棄する方向に持っていこう。」
そこにもグランデ公爵令嬢が関わっているの?
メイシーはお金を引き出してどこに使ってたのかしら…
「…お願いします」
「いや…私が悪かったんだ…こんなことで償えるとは思っていない。だがこれからは何んでも言ってくれると嬉しい。」
「ありがとうございます」
シャンドラは私が部屋からでずにお母さまやレティシャに心配をかけていることについても自分の要求も何も言うことなく部屋を出ていった。
シャンドラのことを許す気持ちにはなれないけどお母さまとは真逆にシャンドラの後悔が伝わり複雑になると同時にこのぼーっとしている時間が勿体なく思い始めた。
これからどうするかは置いといて。まずはメイシーと話そう。それからこれからどうするか考えても遅くは無い。
"ティエラ、ソラン…メイシーがどこにいるから調べて貰ってもいい?"
"ああ。そういうと思ってたよ。もう調べは着いてる"
"ソランはナーシャが倒れてすぐメイシーが逃げたことに気がついて跡を付けたのよ。私はナーシャのことが心配で離れられなかった間にね。"
"…俺はティエラが付いてたら大丈夫だと安心してアイツを追いかけただけだ。ナーシャを心配してない訳じゃないだろう"
"そんなの分かってるわ。真剣に返事しないでちょうだい"
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