大好きな母と縁を切りました。

むう子

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第二章

26話

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その日は状況を良くしてもきっとまた同じことが起こることも踏まえてティエラにすぐ回復するようには頼まず土の状態だけを元に戻してもらうことにした。

これでぶどうの木がすぐに死んじゃうことはない。

叔父様も見つからない……誰からジェノシーの話を聞くべきか……。


考えながら河原を歩いているとふと違和感を感じる。

「ねえ。私……なんだかここで何かあった気がする。」

"もしかして……あのとき夫人が言って場所だったり?"

「ッッ」
頭が痛い……頭がなんだかグラングランするような感じがしてしゃがみ込んだ。

「ナーシャ!!大丈夫かい?」
""ナーシャ!!""

______________________
「お母様、お父様、たまには馬車じゃあなくてお散歩しましょう?」

「ああ。いいよ。その代わり走らずに一緒に歩くんだぞ」

「うん!あのね、歩いてキャレンデスの絨毯まで行きたいの。そこに行くまでにね、あの白薔薇の冠があるでしょう?」

「はっはっは。ナーシャは花冠が目当てか」

「ふふふ。あそこは馬車を停めにくいのかなって」

「まあ、そんなことまで考えて、ナーシャは賢いわね。」


「えへへ。あっ……ねえ。お父様、あそこで縛られた女の子が無理やり引っ張られてるの」

「ん?どこだいナーシャ」

「あそこよ。ほら、あっちの方」
「あれは…………紋章を隠してはあるものの……公爵のものじゃ……」

「ヒャッッ」
私は何かに右肩をグッと押された。
バシャン!

ゴボゴボゴボ

「ナーシャ!!ナーシャ!!」

「…………ッ」
夢……?いや……これはお母様の言ってた川で溺れたという子供の頃の記憶だ。
「大丈夫かい?凄い汗だ。1度ここから離れよう。ティエラ、ナーシャを運んでくれ」

ルークに抱かれ視界が霞んでゆく。
______________________

フワフワの毛が鼻に当たりムズっとして目が覚める。

「……」

「ナーシャ。起きたかい?頭の痛みはどうだい?」

「…落ち着いたみたい……私……どれくらい眠ってたの?」
起きるとアーシュの宿屋に戻っていた。

「まだ2.30分くらいしか経っていないよ」

「そっか……心配かけてごめんね」

「いや、そんなことはいい。」

「3人ともここまで運んでくれてありがとう。私……夢を見たわ」

「夢?」

「夢というか……子供の頃川で溺れた時の記憶ね」

「"メイシーが助けてくれたとかいう記憶?"」

「ううん……その直前の記憶。私どこかの公爵がボロボロの腕が縛られた女の子を捕まえていたの。それをお父様に伝えてて……そしたら誰かに肩をグッと押されて……足が絡まって川に落ちたの」

 
「"それを助けてくれたのがメイシーだったのよね"」

「ええ。お母様が言うには」

「ナーシャは……どこかの公爵が何かを理由に奴隷を捕まえている所を見てしまったのか?」

「奴隷…メイシー……メイシーのお父様、ケルディア伯爵の奴隷営業が見つかって爵位剥奪って新聞を見たことがあるわ。けれど伯爵よ。公爵じゃない……私の記憶ではお父様がどこかの公爵って言ってたもの」

「公爵……けど引っかかるね。どこかの公爵が奴隷を捕えるところをナーシャが見てしまった。それをメイシー元伯爵令嬢が助ける。ケルディア伯爵は奴隷営業で爵位剥奪されていた。全員繋がりを感じる。」


「もしかしたら……私のせいでお父様が……」

""「ナーシャのせいじゃないよ」""

3人の言葉が揃う。

「……ありがとう。だけど「だけどなんだ?奴隷営業がどれだけ悪いことか。それを見つけた者の何が悪いんだ?それも相手に何があったのかは知らないが小さな子供にも分かるような状況で。悪いことをしてる奴が悪いんだ。君のお父様もきっとそう思ってるよ。」

「……」その場では頷くもののやっぱり自分が見つけたりしなければ……きっとお父様は今も生きていたかもしれない。
そう考えてしまう。

"第一まだ、あなたのお父様が巻き込まれたのかすら分からないわよ"

"そうだよ。ナーシャのお父様は戦死だったんだろう?"

「そう……よね。今考えてもキリがないわね」

「ああ。今日は一旦帰ろうか。ナーシャも疲れただろう」

コンコンッ

「あのっお茶を持ってきました。お姉さんは大丈夫かなって……その……心配で」

「アーシュ。アーシュにも心配かけちゃってたのね。ごめんね、私は大丈夫よ。ありがとう」

「お姉さん起きたんだねっ。よかったあ」

「これ、キャレンデスのお花で作った薬草だよ。疲れが取れるって有名なの」

「わあ。ありがとう!すっごく懐かしいわ」

「懐かしい?懐かしいって……ジェノシーのこと知っているの?」

叔父様があんなことになってる今、きっと親戚だとはここの人達に伝えない方がいい。
ここの人たちは優しいし1人1人を見てくれているけれどきっと複雑な気持ちになるはずだから……。

「ええ。私、子供の頃ジェノシーが大好きだったの」

「そうなんだっお姉さんが遊びに来てた頃もジェノシーはいい街だったんだね」

「ふふ。もちろんよ♪今こんなことになっててもここの人たちはいい人たちで溢れててとっても嬉しく思ったわ。早く元のジェノシーに戻るといいね」

「……うん!そのために私もたくさん勉強しながら働くの」

「そっか、なら、今度私が小さい頃の参考書を持ってくるわ」

「やったー!ありがとう」

「ふふ。そろそろ1度家へ帰るわね」

「え?泊まるんじゃあないの?」

「ふふふ。お姉さんたちはここで仕事をするために宿を借りたのよ。だけどそんなに遠くはないからまた明日朝ここに来るわ」

「ふーん……そうなんだね。じゃあまた明日お姉さん達が来るの楽しみに待ってるね」

「ええ 。じゃあルーク、行きましょう」

「ああ。またね、アーシュも呼び込み、あまり無茶しないでおくんだよ」

「うん!お姉さんたちのおかげで今日はもう何もしなくていいよって♪」

「はははっそれは良かった。」


街の外れまで歩いて向かう。
「今日は色々ありすぎたね」

「ああ。まさかジェノシーがこんなことになってるなんて思いもしなかったよ」

「早く昔のジェノシーのようになるといいな……」

「僕たちのチカラで戻そう。昔のジェノシーに。ボリスの契約も絶対させない。大丈夫だよナーシャ。俺たちが力を合わせたらなんとかなる」

「ふふふ。そうよね。うん!みんなで全部解決してみせる」

「ああ。じゃあまた明日ね」

スっと当たり前のようにおでこにキスをしてティエラの上に乗せてくれてウィンと帰っていくルークにときめいたのは言うまでもない。

ルーク……子供の頃は頭が良くてどちらかと言うと運動は得意では無いイメージだったのに今ではお父様を継いで騎士になって……体もあんなに大きくて……耳まで熱くなってきて考えるのを止め急いで屋敷へ向かった。

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