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第二章
29話
しおりを挟むガタゴトガタゴト
お義父様とジェノシーに向かうことになり馬車でジェノシーに向かう。
ティエラにはルークにお義父様とジェノシーに一緒に行くことになったから先にリーツを高めてと伝えソランは近くで見張るにはもう危険だからと空から見張ることにしたみたいでコテージに戻っていった。
何故か、ジェノシーに向かうはずがアルフォードのカフェで馬車が止まる。
「急にすまないね。少しお茶を飲んでから向かってもいいかい?」
「え、ええ。でも時間は?」
「時間なら気にすることないよ。」
カフェはカフェでも奥の誰もいない部屋へ入っていく。
席に座ってもお義父様は何も話さずに何か考えているようだった。
フルーツ入りの紅茶が届き店主が部屋を出たと同時に初めてお義父様が話し出した。
「ナーシャ。その…君も色々気づいてきていると思うんだが…お母様のことをどう思っている?」
そのことか。お義父様は私がお母さま大好きでずっとくっついていたこともお母様のために大人しかったこともきっと気づいてくれていたんだろう。
「……私は……」
「ゆっくりでいいよ。この機会にナーシャが今どんな気持ちで今後なにをしたいかとか。色々聞けたら思ったんだ。ジェノシーに急いで向かいたい気持ちも分かってる。だけど僕にとってはこんなに不甲斐ない義父親だけどナーシャの気持ちの方が大切だから…」
「正直に言うと…お母様のこと不審に思ってるの。私が…お義父様に暴力を振るわれていたことを知ってて黙っていたことも…ドレスの件も…私を外に出すことを嫌がったり…それに…」
「昨日の食事の時の反応?かな?」
「…うん。」
「メイシーの事を鵜呑みにしてナーシャを傷つけ続けた僕が言うのもなんだが……僕もここ数日レアロナの君に対する態度、昨日の反応には思うところがあった。何かにでも取り憑かれているかのような…」
お義父様は治癒魔法も使えるし魔法に対しても沢山勉強してきているはず。だから色々理解して貰いやすいかもしれない。それなら1度全て話すのもいいのかも。
「あのね……私。精霊使いなの」
「うん。」
「え!?」
精霊契約してるって聞いてそんな軽く「うん」で済ませるものなの!?
「あー…。すまない。隠すつもりだったんだが無意識に普通の返事をしてしまった。テミニエル様と僕は知り合いでね。ほら、僕は治癒魔法を使うだろ?普段はそう会うことはないが工場のための濾過装置が世に出回った時にさすがに感謝しに行ったんだ。そしたら冷たくあしらわれてね…。それで…色々あってナーシャのことを知ったんだ」
「お義父様…テミニエル様と知り合いだったの!?それに色々知ってって…じゃあ」
「ああ。だから君が濾過装置事業のオーナーだと言うことも知っているよ。2人の精霊が君を守ってくれていたんだね。」
「……………ええ。ティエラとソラン、2人と契約してから私は何に対しても向き合えるようになったの。メイシーが裏切ってたことを知れたのもティエラとソランのおかげだったの。」
「そうだったんだね。僕はナーシャの人生を潰しかけていたのにこうやって僕と話してくれるのもきっとその2人がキミを見守ってくれているからだね。僕からも…2人に感謝を伝えてほしい」
「ふふ。確かに2人のおかげもあるかもしれないわ。でもそれだけじゃないわ。私…お義父様が呪術にかけられてたんじゃないかって思ってるの。ほら、メイシーの件の少し前から何故か昔のお義父様に戻ったように見えて…」
「……」
お義父様の眉が少しピクっとした。
「もしかしてほんとに呪術に?」
「…いつの間にか…ナーシャに憎しみを持つようにニュレアという匂いもしない珍しい虫がここ(目)に住み着いていたらしい。テミニエル様からナーシャって子を知ってるかと聞かれただけだ瞳孔が開いたらしく、僕がおかしくなっていると気づいてくれたんだ。そのあとはテミニエル様の弟子から目薬を貰って摘出できた」
それで…疫病が落ち着いて帰ってきてからは急に怒り出すことも無くなっていたの!?
何も知らなかった…。テミニエル様も何故教えてくれなかったんだろう。
感情を読み取るようにお義父様は話し続けた。
「あ、テミニエル様には僕から黙ってて欲しいって頼んでたんだ…。ニュレアが付いていようが僕は…人を助けるために治癒魔法を学んだ。それなのに1番大切なはずの義理の娘に暴力を振るい続けたこの手が許せなかった。だが仕事柄手を切り落とす訳にもいかずで……君には償い続けようと今でも思っているよ…。」
「そんなっ……。私はお義父様にもう何も思ってないわ。ニュレアのせいだったなら尚更よ!!」
「…お母様もいつも言っていたがナーシャは優しすぎるよ。時には許さないという方法もあることを知って置いて欲しい…。」
「お義父様?もう私も自分で色々考えられるようになったのよ。呪術と自分の意思は別物よ。今でも6歳の頃お母様や私を慰め続けてくれたお父様を覚えてるわ」
「……」
「ふふ、私達、テミニエル様には感謝しきれないねっ」
「…ああ。本当に感謝しきれないよ。どんな事があってもこれからは絶対にナーシャを娘として愛していく。だから嫌なことがあればすぐに言うんだよ。」
「うん。お義父様がお義父様でよかった。色々話してくれてありがとう。」
少し照れて早口になってしまう自分にまた恥ずかしくなる。
「あ、ってことは…もしかしてお母様もレニュアに?」
「僕も初めはそう思ったんだが……」
「違うのね…」
「ああ…残念だけど…呪術でもなくレニュアも居なかった。」
「そう…。」
「すぐに答えは出ないだろうがナーシャ自身、今の状態のお母様と一緒にいてはしんどいんじゃないかと思ってナーシャの気持ち知りたくてここに話しに来たんだ」
「なるほどね…私、お母様も呪術にかかってると思っていたの。だけど何も無いなら…私はお母様がジェノシーに何をしたのかも私に対してどう思っているのかもきちんと知りたい。だけどね、まずやらないといけないことがあるの。」
私はメイシーが呪術師と共にボリスを呼び出そうとしていることや全てを話した。
「メイシーが呪術師を…メイシーと奴と始めから手を組んでたのか…」
「奴って…?」
「ああ……ラベル先生のことだよ。」
「ラベル先生が呪術師だったの!?」
「ああ…レニュアが目に入ってる間、瞳孔が開いてる間のことは正直記憶が薄かった。だからテミニエル様にレニュアからの記憶を引き抜き見せてもらったら奴が僕の目に入れてる姿が映ったんだ。だが問ただそうにも…先に気づかれたようで姿を消してしまったんだ。」
「ラベル先生って…なんで私達の家庭教師になったの?」
「それは…グランデ公爵からの紹介だったんだ。」
「!?ならやっぱり令嬢も公爵もメイシーとラベル先生と繋がっているのね」
「それが…ナーシャに今の話を聞いても話が繋がらないんだ。まずバレたと思った公爵は僕やナーシャと会うことなく、メイシーとラベルを使って僕を陥れようとするはずだろう…。だがレビア令嬢の件について謝りに行きたい。と会いたいと言うんだ。僕が侯爵の立場なら絶対そんなことはしない。だから…」
「「ラベル先生からの情報が入ってこなくなった…」」
2人の声が重なった。
「じゃあレビア嬢はメイシーに使われているだけ?それとも…彼女も」
「その辺はまだ分からないね。ただナーシャ、精霊が居るとはいえエイダン侯爵の子息と二人じゃ何かと厳しいだろう。私も治癒魔法とちょっとした防衛魔法くらいしか使えないが決戦の日は着いて行かせてほしい。そしてテミニエル様にも手伝って貰おう。そしてお母様についても後々一緒に考えよう。ナーシャだけで抱えないでほしいんだ」
「お父様…ありがとう。とても心強い味方よ」
立ち上がり久しぶりに義父とハグをした。
お義父様はびっくりしていたけど嬉しそうで、私自身も久しぶりすぎて恥ずかしくなって腕を引っ張った
「行きましょ?そろそろ時間もなくなるわ。」
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