大好きな母と縁を切りました。

むう子

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第二章

32話

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目が覚めると外は明るくなっていた。
ティエラは自前の大きなクッションでまだぐっすり眠ってるようだ。
もう朝か……ティエラがいてくれなかったらきっと朝まで寝られなかったな。

どうしよう今日からリーツを高めることも出来ないし……
ルークはきっと私がいると周知できないだろうからアーシュに色々案内してもらって遊びに行こうかな。
なんて考えていた。
その時何が起こってるかなんて何も知らずに……。


______________________

「アーシュ!」
アーシュはいつものように洗濯物を干していた。
「ナーシャ様!おはよう」

「お洗濯が終わったらもう今日の仕事は終わり?」

「あと買い出しに行かないといけないの」

「買い出しがあるんだ。私も着いていこうかな」

「え!全然楽しくないよ?いいの?」

「ふふふ。2人で行けば楽しくなるわ」

「やったー♪」

「じゃあ洗濯も手伝おうかな」

「ううん。これは私の仕事だからお客様にはさせられないよ」
アーシュは偉いな。自分の仕事だからって、こんなに小さいのに頑張ってる。
私も絶対に元のジェノシーに戻すんだから!

「うーん。そっか。じゃあ部屋で待ってるわね。と選択が終わったら教えてくれる?」

「はーい。急いで終わらせるね」

「ふふふ。分かったわ」

じゃあルークにアーシュと買い物に行ってくるって伝えておこうかな。
コンコンっ

「あ、ナーシャ!今君の部屋に行こうと思ってたところだったんだ。今日は一度アルフォードに戻ってちょっとだけ片付けないといけない仕事があってね」 

「そうだったの?無理しないでね」

「はは。書類に判子を押すだけだよ。夕方には戻ってくるね」

「うん」

「ナーシャはなんの用だったの?」

「ううん何にもないの。ふふ。今日はアーシュと遊んでおくね」

「ああ。何かあったら直ぐ僕を呼ぶんだよ」

「ありがとう」
そんなやり取りをしてルークを見送りちょうどアーシュが来た。
「ナーシャー。お洗濯が終わったよ♪買い出し一緒に来れそう?」

「ええ。大丈夫よ。」

「じゃあ行こう♪おばさん、行ってきマース」

「アーシュ!!お嬢様にご迷惑におかけしないようにね!お嬢様…すみません私がアーシュを連れて行けたらいいんですが……」

「ふふ。そんな、気にしないで。私がアーシュとお出かけしたいのよ。お土産楽しみにしていてね」

「そんなっ泊まって頂けるだけで私は大助かりなので気にしないでくださいな」

「こちらこそ泊めてくれてありがとう。行ってきます」

「行ってらっしゃいまし」

___________

「アーシュ、まずは何を買うの?」

「んーっとね、パンとその向かいにある旬彩だよ♪まずはパン屋さんから」

「パンはこの間行ったパン屋さん?」

「うん!」
たわいも無い会話をしながら歩く。
年の離れた妹が出来たみたいで可愛い。
もしお義父様にレニュアが入り込んで無かったらレティシャにもこんな風について行ったりお=/連れ回したりしたのかな。
ガチャっ
「おじさーんいつものパンお願いします。」

「はいはい。いつも偉いね。おっこれは……この間のお嬢様。この間のはどうもありがとうございました。あの有名なカルノス公爵まで呼んでくださって感謝の言葉も見つかりません」

「え、お義父様そんなこと言ってたの?」

「……お義父様?もしかして……レアロナ夫人の娘のナーシャお嬢様でしたか。そうかラクロアス侯爵が亡くなって夫人はカルノス家に嫁いだんでしたね。」

「あっ……」

「いや……気にしなくていいですよ。お嬢様がジェノシーを気にかけてくれているのは分かっているから。悪いのはお嬢様じゃなくてラクロアス侯爵ですからね。あなたのお父様のおかげで私たちがどれだけ平和に過ごせていたか今になって身に染みますよ」

「……」

「だけどみんながみんな私みたいな考え方をする訳じゃないから外では絶対に言わないようにした方がいいです。アーシュ。アーシュも外で絶対言うんじゃないぞ。お嬢様が大変な目に合うから」

「ええ……ありがとうございます。」
「もちろん!ナーシャがどんな立場だろうといい人だもん」

「……アーシュ。ありがとう。…それで、なんでラクロアス侯爵がそんなことをしたのか知りたくて。叔……ラクロアス侯爵が今どこで何をしてるか知ってますか?」

「侯爵なら町外れの酒場で飲んだくれてるって噂ですよ。私もそんなに貴族様の事は詳しくありませんがあそこまでなっちゃ貴族剥奪も時間の問題かと。」

「……そうなんですね……教えてくださってありがとうございます」

「ああだけどお嬢様もあそこには近づかない方がいいですよ。お嬢様のご親戚とはいえあんな所で毎日飲んだくれていてはさすがにもう立ち直れないかと思います」 

「そう……」


「ええ。お気の毒ですが……ジェノシーは一体どうなるやら……。」

「ジェノシーは……ワイン工場は私が絶対取り戻します。」

「ワイン工場が戻ってきても畑や主の資金源が消えてしまってはどうにも……」

「そんな事ないわ!私絶対ジェノシーをお父様が居た頃のジェノシーに戻してみせる。」

「はは……そう言って頂けると嬉しいです。私たちも今は耐え時だと思いながら頑張ります。亡くなったラクロアス侯爵もこんなに逞しく美しい娘になって喜んでおられるでしょうね」

これが、私のせいじゃなかったら確かにお父様も喜んでくれてたかもしれない。だけどジェノシーがこんなことになったのはお母さまが私のためにって取った行動のせいだから素直に喜べず申し訳ない気持ちで少し苦笑するしかなかった。

「ナーシャは私にとってはほんとに救いだよ?だってこんな状態のジェノシーに泊まりに来る人なんていないのにナーシャが泊まってくれたから毎日ご飯も食べられるし、今日の買い出しだって一緒に行けて楽しいんだもん!」

「アーシュ……。私もアーシュと一緒に行けて楽しいよ!ありがとうね」

今私が出来ることをやるしかないんだもん。
こうやって挫けてたって仕方ない。ティエラだけじゃなく今ここで私を見てくれる人達はいる。全て私が元凶だったかもしれないけど私が絶対に皆を守る。

《ナーシャ!動きがあった。グランデの令嬢があの令嬢のお兄様を中に連れ込みそうだ!!》

え!?ロアンが!?
どういうこと?メイシーは契約間近なの!?
思ってたよりも早すぎる!!

でも今までやれることはやった。
《分かった!今から行くわ!ティエラ!連れてって欲しい。ソラン……ウィン達にも伝えてくれる?》

"オーケー。"
《ああ。だがもうすぐ結界の中に入ってしまう。とりあえず馬車を止めておくぞ。》

《お願い……!!》

「アーシュ……ゴメン!急用が出来ちゃった。ごめんね…。戻ってくるからこれでアーシュたちのソーセージも買っておいてくれる?」

子供に大金を持たせると連れ去られる可能性もあるためソーセージだけ買えるほどのデルを渡して謝りソランの元へ向かった。


その頃ナーシャに止めると言ったからにはここで必ず足止めしてやるとソランは水を御者の居ない馬車の車輪に当てブレーキを掛け動きを緩めていた。

ググッグググググ


止まったか……。
と安心した途端馬車は中に浮き猛スピードで走り出した。

なっ…やっぱりそう簡単には行かないか。だがここで結界に入れる訳には行かないんだ。

馬車の箱に向かって大きな水圧をかけるが馬車は反抗し続けた。

マズイ……このままじゃ止められない。
呪術師め……。この馬車になんて力を加えてるんだ。

グッ馬車は方向転換しながら結界に向いてゆく。

その瞬間風が吹き始め馬車が竜巻の渦の中へ入り込んだ。
"ウィン!!来たか!"

"遅くなってごめんね。ルークが遅くってさ~"

「なっウィンが自分は風の精霊王だから動きが早いんだってクッキーをほうばってたんだろ?」

"……ウィンこんな時にまで……ルーク。コイツのケツを叩いてくれて助かった"

「はは。それより馬車が渦から外へ出ようと空の方へ向かいだしたようだぞ」

『キャーーー!一体何が起こってるのよ!メイシーーー助けて!?』
馬車からレビアの声が聞こえる。

「ソランっ遅くなってゴメン。どうなってるの?」
"やっぱりウィンの方がくるの早かった。もう。スピードだけはどうしても勝てないわ。"

"ふふん僕のスピードに勝てる人は誰一人いないよ"
ウィンがティエラに向かって勝ち誇った顔で言うとティエラはウィンに向かって足に岩の足枷を掛けた。
"ふんっ。"

"わーーー。ティエラが僕に意地悪をするよおお"

"ティエラ。今は遊んでる暇はない!"

"ゴメン……ちょっとムカついちゃったわ"
ティエラは謝りながら岩を溶かした。


"マズイ。馬車が竜巻から出るぞ。構えろ。"
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