32 / 40
第二章
32話
しおりを挟む目が覚めると外は明るくなっていた。
ティエラは自前の大きなクッションでまだぐっすり眠ってるようだ。
もう朝か……ティエラがいてくれなかったらきっと朝まで寝られなかったな。
どうしよう今日からリーツを高めることも出来ないし……
ルークはきっと私がいると周知できないだろうからアーシュに色々案内してもらって遊びに行こうかな。
なんて考えていた。
その時何が起こってるかなんて何も知らずに……。
______________________
「アーシュ!」
アーシュはいつものように洗濯物を干していた。
「ナーシャ様!おはよう」
「お洗濯が終わったらもう今日の仕事は終わり?」
「あと買い出しに行かないといけないの」
「買い出しがあるんだ。私も着いていこうかな」
「え!全然楽しくないよ?いいの?」
「ふふふ。2人で行けば楽しくなるわ」
「やったー♪」
「じゃあ洗濯も手伝おうかな」
「ううん。これは私の仕事だからお客様にはさせられないよ」
アーシュは偉いな。自分の仕事だからって、こんなに小さいのに頑張ってる。
私も絶対に元のジェノシーに戻すんだから!
「うーん。そっか。じゃあ部屋で待ってるわね。と選択が終わったら教えてくれる?」
「はーい。急いで終わらせるね」
「ふふふ。分かったわ」
じゃあルークにアーシュと買い物に行ってくるって伝えておこうかな。
コンコンっ
「あ、ナーシャ!今君の部屋に行こうと思ってたところだったんだ。今日は一度アルフォードに戻ってちょっとだけ片付けないといけない仕事があってね」
「そうだったの?無理しないでね」
「はは。書類に判子を押すだけだよ。夕方には戻ってくるね」
「うん」
「ナーシャはなんの用だったの?」
「ううん何にもないの。ふふ。今日はアーシュと遊んでおくね」
「ああ。何かあったら直ぐ僕を呼ぶんだよ」
「ありがとう」
そんなやり取りをしてルークを見送りちょうどアーシュが来た。
「ナーシャー。お洗濯が終わったよ♪買い出し一緒に来れそう?」
「ええ。大丈夫よ。」
「じゃあ行こう♪おばさん、行ってきマース」
「アーシュ!!お嬢様にご迷惑におかけしないようにね!お嬢様…すみません私がアーシュを連れて行けたらいいんですが……」
「ふふ。そんな、気にしないで。私がアーシュとお出かけしたいのよ。お土産楽しみにしていてね」
「そんなっ泊まって頂けるだけで私は大助かりなので気にしないでくださいな」
「こちらこそ泊めてくれてありがとう。行ってきます」
「行ってらっしゃいまし」
___________
「アーシュ、まずは何を買うの?」
「んーっとね、パンとその向かいにある旬彩だよ♪まずはパン屋さんから」
「パンはこの間行ったパン屋さん?」
「うん!」
たわいも無い会話をしながら歩く。
年の離れた妹が出来たみたいで可愛い。
もしお義父様にレニュアが入り込んで無かったらレティシャにもこんな風について行ったりお=/連れ回したりしたのかな。
ガチャっ
「おじさーんいつものパンお願いします。」
「はいはい。いつも偉いね。おっこれは……この間のお嬢様。この間のはどうもありがとうございました。あの有名なカルノス公爵まで呼んでくださって感謝の言葉も見つかりません」
「え、お義父様そんなこと言ってたの?」
「……お義父様?もしかして……レアロナ夫人の娘のナーシャお嬢様でしたか。そうかラクロアス侯爵が亡くなって夫人はカルノス家に嫁いだんでしたね。」
「あっ……」
「いや……気にしなくていいですよ。お嬢様がジェノシーを気にかけてくれているのは分かっているから。悪いのはお嬢様じゃなくてラクロアス侯爵ですからね。あなたのお父様のおかげで私たちがどれだけ平和に過ごせていたか今になって身に染みますよ」
「……」
「だけどみんながみんな私みたいな考え方をする訳じゃないから外では絶対に言わないようにした方がいいです。アーシュ。アーシュも外で絶対言うんじゃないぞ。お嬢様が大変な目に合うから」
「ええ……ありがとうございます。」
「もちろん!ナーシャがどんな立場だろうといい人だもん」
「……アーシュ。ありがとう。…それで、なんでラクロアス侯爵がそんなことをしたのか知りたくて。叔……ラクロアス侯爵が今どこで何をしてるか知ってますか?」
「侯爵なら町外れの酒場で飲んだくれてるって噂ですよ。私もそんなに貴族様の事は詳しくありませんがあそこまでなっちゃ貴族剥奪も時間の問題かと。」
「……そうなんですね……教えてくださってありがとうございます」
「ああだけどお嬢様もあそこには近づかない方がいいですよ。お嬢様のご親戚とはいえあんな所で毎日飲んだくれていてはさすがにもう立ち直れないかと思います」
「そう……」
「ええ。お気の毒ですが……ジェノシーは一体どうなるやら……。」
「ジェノシーは……ワイン工場は私が絶対取り戻します。」
「ワイン工場が戻ってきても畑や主の資金源が消えてしまってはどうにも……」
「そんな事ないわ!私絶対ジェノシーをお父様が居た頃のジェノシーに戻してみせる。」
「はは……そう言って頂けると嬉しいです。私たちも今は耐え時だと思いながら頑張ります。亡くなったラクロアス侯爵もこんなに逞しく美しい娘になって喜んでおられるでしょうね」
これが、私のせいじゃなかったら確かにお父様も喜んでくれてたかもしれない。だけどジェノシーがこんなことになったのはお母さまが私のためにって取った行動のせいだから素直に喜べず申し訳ない気持ちで少し苦笑するしかなかった。
「ナーシャは私にとってはほんとに救いだよ?だってこんな状態のジェノシーに泊まりに来る人なんていないのにナーシャが泊まってくれたから毎日ご飯も食べられるし、今日の買い出しだって一緒に行けて楽しいんだもん!」
「アーシュ……。私もアーシュと一緒に行けて楽しいよ!ありがとうね」
今私が出来ることをやるしかないんだもん。
こうやって挫けてたって仕方ない。ティエラだけじゃなく今ここで私を見てくれる人達はいる。全て私が元凶だったかもしれないけど私が絶対に皆を守る。
《ナーシャ!動きがあった。グランデの令嬢があの令嬢のお兄様を中に連れ込みそうだ!!》
え!?ロアンが!?
どういうこと?メイシーは契約間近なの!?
思ってたよりも早すぎる!!
でも今までやれることはやった。
《分かった!今から行くわ!ティエラ!連れてって欲しい。ソラン……ウィン達にも伝えてくれる?》
"オーケー。"
《ああ。だがもうすぐ結界の中に入ってしまう。とりあえず馬車を止めておくぞ。》
《お願い……!!》
「アーシュ……ゴメン!急用が出来ちゃった。ごめんね…。戻ってくるからこれでアーシュたちのソーセージも買っておいてくれる?」
子供に大金を持たせると連れ去られる可能性もあるためソーセージだけ買えるほどのデルを渡して謝りソランの元へ向かった。
その頃ナーシャに止めると言ったからにはここで必ず足止めしてやるとソランは水を御者の居ない馬車の車輪に当てブレーキを掛け動きを緩めていた。
ググッグググググ
止まったか……。
と安心した途端馬車は中に浮き猛スピードで走り出した。
なっ…やっぱりそう簡単には行かないか。だがここで結界に入れる訳には行かないんだ。
馬車の箱に向かって大きな水圧をかけるが馬車は反抗し続けた。
マズイ……このままじゃ止められない。
呪術師め……。この馬車になんて力を加えてるんだ。
グッ馬車は方向転換しながら結界に向いてゆく。
その瞬間風が吹き始め馬車が竜巻の渦の中へ入り込んだ。
"ウィン!!来たか!"
"遅くなってごめんね。ルークが遅くってさ~"
「なっウィンが自分は風の精霊王だから動きが早いんだってクッキーをほうばってたんだろ?」
"……ウィンこんな時にまで……ルーク。コイツのケツを叩いてくれて助かった"
「はは。それより馬車が渦から外へ出ようと空の方へ向かいだしたようだぞ」
『キャーーー!一体何が起こってるのよ!メイシーーー助けて!?』
馬車からレビアの声が聞こえる。
「ソランっ遅くなってゴメン。どうなってるの?」
"やっぱりウィンの方がくるの早かった。もう。スピードだけはどうしても勝てないわ。"
"ふふん僕のスピードに勝てる人は誰一人いないよ"
ウィンがティエラに向かって勝ち誇った顔で言うとティエラはウィンに向かって足に岩の足枷を掛けた。
"ふんっ。"
"わーーー。ティエラが僕に意地悪をするよおお"
"ティエラ。今は遊んでる暇はない!"
"ゴメン……ちょっとムカついちゃったわ"
ティエラは謝りながら岩を溶かした。
"マズイ。馬車が竜巻から出るぞ。構えろ。"
15
あなたにおすすめの小説
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる