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第二章
34話
しおりを挟むラミフォンで伝えてもいいんだけど…
きっとお母様が出る気がする。
そのまま屋敷に戻ってもお母様に見つかれば私に外へ出るなと言うに違いない。
時間が無い今、お母様と話してる暇は無いわ。
今お父様の部屋の窓から会いに行くのが1番安全よね。
「ティエラ、お義父の部屋の前に行って欲しいの。」
"オーケー"
"着いたわ。夫人が部屋に来ているようね…"
「…お義父少しやつれたわね。お母様のわがままに疲れてるのかな…。ティエラ…お父様に疲労薬になる薬草を後で出して欲しい…」
"さすがにちょっと同情するわね…。オーケー、公爵でもそうそう触ることの無いいい薬草を用意してあげるわ"
「ありがとう…」
私が母の言う通りにしないせいでこんなにもお義父さまに負担をかけていたなんて思いもしなかった…。
それでもお義父さまは私に何も言うことも無くあんなにやつれるまで…。
"夫人が出ていったわよ"
わたしはティエラに頷き窓をコンコンと叩いた。
お父様は何事!?と言わんばかりに窓の方を見る。
「ナーシャか……てっきりまたテミニエル様のイタズラかと。それよりこんな所からどうし…ああそうか。気を使わせたな…」
「ううん。私の方こそ…お義父さまがこんなにもやつれてるのに気づかなくって…。今ティエラが良い薬草を持ってきてくれるわ…。テミニエル様ったらお義父様にそんなイタズラするのね。」
「はは。テミニエル様のイタズラ好きのおかげで娘が窓から来てもびっくりもしなかったよ。薬草なんて…すまないね。助かるよ。それで今日は…何か進展があったのかい」
「ええ。グランデ令嬢と…ロアンが呪術師の馬車で…」
私は先程あったことを全てお義父様に説明した。
「バルセ侯爵子息が連れていかれただと?だがレビア公爵令嬢には子息たちも警戒していたはずだろう?それが何故…」
「私もそこが引っかかってるの。。呪術師が何かしたのか…それとも誰かが令嬢に手助けをしたのか…。何にしても令嬢に聞かないといけないんだけど令嬢は今日あったことで気を失ってて…出来れば早めに令嬢に目を覚まして欲しくて…」
「なるほど。ちょっと待っていてくれるか?」
「ええ」
お義父様は部屋を出ていき、またすぐ部屋に戻ってきた。
「よし。じゃあ今すぐ向かおうナーシャ、嫌でなければ私を掴んでくれるか?」
「??…ええ。」
わたしはティエラと手を繋ぎお父様と腕を組んだ。
シュッ
「え!?ここは宿屋!?」
「はは。ナーシャは忙しくやってるだろうとテミニエル様と連絡はしていたんだ。それで少し前にテミニエル様から3日後ここに来るよう魔法石を渡されていたんだよ。」
「まあ。お義父様もテミニエル様もさすがね」
「さすがに娘の大変な時に何もせずにはいかないだろう。」
「ありがとう」
「とりあえず令嬢の所へ向かおう」
"ほんっと公爵人が変わったね"
"ふふふ。ねっ。お義父様からレニュアがいなくなって本当に良かったわ"
私達はルークの部屋へ向かった。
コンコンッ
「ナーシャ!令嬢はまだ目を覚まさ…公爵様!?ご無沙汰しております」
「ああ。いつも娘の力になってくれて感謝する」
「そんな。僕は令嬢のこと…いや今はまだ何も進展はありませんが…」
「ははは。言いたいことは分かってるよ。安心してくれ。事はしっかり進める」
「感謝致します」
「それより令嬢はどんな状態だ?」
「肋骨と左腕が折れてるようでまだ目を覚ましていません」
お義父様が令嬢の元へ向かう。
「さすがだ。応急処置がよく出来ているな。よしでは直ぐ治そう 」
"ナーシャ、疲労の薬草を公爵に先に飲ませた方がいいわ。あとこんないい薬草令嬢にあげるのは勿体ないけど令嬢の分も"
「待って!お義父様!」
"ティエラありがとう"
ティエラはニコッと微笑む。
「ん?」
「これ…私の精霊が用意してくれたの。疲労に効く薬草よ。お義父様が治癒魔法を使う前に先に飲んだ方がいいって」
「こ…こんなにいい薬草を!?これはさすがに私が飲むには勿体ない…」
ティエラが人間の姿になり怒りだした。
「大地の精霊王が飲みなさいっていってるのよ?公爵様、あなた最近の自分の顔確かめたことある?すっごいやつれようよ。こんな状態で力を使うべきじゃないって公爵様も分かってるでしょう。これ以上ナーシャを悲しませたら許さないわよ」
「君がナーシャの契約精霊か。そうか……。こんないい薬草を…感謝する。」
「分かってくれればいいのよ」
「ああやっぱりティエラは怖いなあ」
「なんですって!?公爵様に何かあったら悲しむのはナーシャでしょう!?」
「さすが男女だな」
ティエラに続いてウィン、ソランも人の姿になった。
「ソラン!!そんなこと言っちゃダメでしょ!?」
「ははは。こんなに賑やかにやってる姿を見て安心したよ。」
私がソランに怒るとお義父様が一気に穏やかな顔になった。
お義父様は戦争時に使う医療簡易キットを取り出し手早く薬草を煎じ、薬を飲んだ。
「これはすごい。疲労感が急激に無くなっていくよ。では今度こそ令嬢の治癒魔法を始めよう」
「ふふふ。そうでしょう?私が用意した薬草だものこんなのいくらでも出せちゃうわよ。」
「さすが大地精霊様だな」
ティエラは褒めて貰って嬉しそうにしながらお義父様の治癒魔法を覗いた。
大地精霊だけあって、治癒魔法には興味津々なようで目がキラキラしている。
「よし。身体は完治した。あとは…令嬢には勿体ないが疲労薬を飲ませてもいいかな?」
「もちろん!さすが公爵様分かってるわね」
「ははは」
お義父様は令嬢にそっと薬を飲ませる。
お父様が医者として働く姿はやっぱりかっこいい。
こんな状態とはいえこうやってゆっくりお義父見るのは久しぶりだ。
「ん…んん」
「レビア令嬢!?起きたの?」
「しっ待ちなさい。ナーシャにはまだ敵対心があるだろう。まずは私が話そう」
「そうよね…ありがとう」
ロアンがどんな目に合うか分からない今凄くもどかしくて仕方ないけれどお義父様の言う通り、目を覚ました令嬢に私が話しかけても令嬢は何も話さない可能性がある。
「レビア令嬢…目が覚めたかな?」
「……カルノス公爵?…ここは…私馬車が急に暴れだして…」
「ああ。暴れだした馬車を娘とエンドラ子息が助けてくれてね」
令嬢は周りを見渡しどういう状況か把握したようでため息を着いた。
「……思い出したわ。でも令嬢やエンドラ侯爵がなぜ私を…そういえばロアン様は?」
「…ロアン子息は結界に入ったようだな」
「結界って…どういう状態なの…?」
「…君はメイシーやラベルが結界を張ったことすら知らなかったようだね。それならラベルが呪術師だということも知らなかったのかな?」
「ラベル先生が呪術を勉強してるのは知ってましたわ。馬車に馬も人も居なかったから…。呪術を学んでこの世を良くすると仰ってましたから…」
「……そうか。ならもうひとつ質問だ。ロアン子息をどうやって連れ出したんだ?」
「それは私の口からは言えませんわ」
「なるほど。それなら陛下に間に入っていただき公爵と共に話を聞くほか無いようだな」
「…お父様や陛下は関係ございませんわ。……ロアンは私が呼び出しても来なかったため、レアロナ夫人に頼みしたの。」
フンッと怒りながらもお母さまは私の味方よと言わんばかりに一瞬私と目を合わせ話し出した。
「レアロナ夫人がナーシャのことで相談したいと近くのカフェへ来るようロアンを呼び出したの。それでナーシャを心配してアイリス令嬢も一緒に来たけどロアンだけを引っ張り込むように護衛たちに頼んだのよ。もちろん呼び出したレアロナ夫人は向かいもしなかったようだけど。」
「…それは…いつなの?」
私はなんとか怒りを抑えながらも尋ねる。
「2日前かしらね」
「それじゃああの日…お母様からしつこくラミフォンが鳴ったのはアイリス令嬢からの通知を消すためだったってこと?」
「そういうことみたいね。令嬢があなたに連絡したら面倒だって言ってたから。夫人も相当性格に難があるようね。ふふふ」
「お母様どうしてロアンをはめるようなこと…」
「ドルーラ公爵との婚約に邪魔になるからじゃない? 」
「そんな小さなことでこんな大事にして!!」
「わたくしとしてはロアン様にきっちり謝って貰わないと気が済まないのよ。夫人もロアン様とあなたが駆け落ちなんかさせないわっていう気持ちがあったみたいだからそこで手を組むことにしたの」
「謝らせたい?駆け落ちですって?そんなことであなたロアンをコテージに連れていったの!?それがどんなことかも分からずに!!」
「ナーシャ…落ち着くんだ…。令嬢を責めても時間は戻ってこない…。令嬢は何も知らなかったんだ。君も解っただろう?」
「でも…でも何も知らないからって…このままじゃロアンがどんな目に合うか!」
「ナーシャ…。ロアンは僕たちで助けよう。3日後にはテミニエルが来てくれるんだろう。朝イチに結界を破いて戦うしかない」
「ルーク……」
「そうだよ。ナーシャ、レビア令嬢が何も知らないのなら令嬢を使ってコテージに入ることすら無理だろう」
「お義父様……」
「どういうこと?私もコテージにもどれないですって?」
「ええ。入れて貰えないでしょうねぇ。」
「なっ…」
「あそこでメイシーとラベル先生はボリスを召喚しようとしてるのよ。2人はロアンを代償として使うためにあなたを使っただけよ」
「そ、そんな!先生とメイシーが!?じゃあロアン様はどうなるのよ」
「最悪の場合失明ね…私たちはそれを防ぐために動いてた」
「…そんな…そんな嘘よ。ロアン様がそんな目に合うはずがないわ。それにメイシーや先生がロアンさまにそんなことするはず無い!!わ…私がロアン様に好意があったことを知ってるんですもの」
令嬢はロアンが好きだったとは思いもしなかった…。
それで…自分の味方になって貰えないことに僻んで謝らせようと呼び出したりこんな馬鹿な方法を…。
我儘に育ったがゆえに好意の向け方が分からないのね…。
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