大好きな母と縁を切りました。

むう子

文字の大きさ
39 / 40
第二章

39話

しおりを挟む
あれから1週間程が経ち、お義父様はいつも通り患者が押し寄せるため仕事を再開させ、ロアンはまだ目を覚まさなかったが令嬢が一生懸命看護していた。

アイリス令嬢にもすぐにあの日のことを伝えたかったけれどどこから噂が回るか分からない状態なため話せずにいた。

この一週間私たちはティルナのあまりの甘えん坊加減に手を焼いていた。
精霊の赤ちゃん期間は20年程らしく眠る時間も相当長く、ゆっくり成長するらしい。
だけどこの甘えたティルナは起きる時間と眠る時間も細かく起きてる間は構って欲しさに私やルークが離れるとツルをだし足を引っ張ろうとしたりティエラやソランにも甘え倒してなかなか手を焼く子だった。

そんな中、やっと皇帝陛下から呼び出しがあった。

流石に皇帝陛下の元で失礼をする訳には行かずソランとウィンにティルナの面倒をみるよう頼むことにした。

"ナーシャ…ティエラ…お願いだから早く帰ってきてね。ナーシャとティエラが居ないと不安がっちゃうから"
"頼むぞ…"

「ふふふ。できるだけ早く帰るわ」
「じゃあ行ってくるよ」
馬車でお義父様が迎えに来た。お母様と一緒に…。

「ナーシャ。久しぶりだな。」
「お義父様。…お母様…お久しぶりです。」

「ナーシャあなた陛下に呼び出されるなんてなんて事をしたの?もしかして…この子息のせいでなの!?あなた、ナーシャに何を唆したのよ!」

「……ルーク…ごめんね。」
「いや。気にしなくていい。」

「お義父様…お母様に説明は…」

「私からはなにも話してないよ。これから陛下が話してくれるだろう。」

「そう…ね。ええ。私もその方がいいと思います」

「何を言ってるの?一体何があったの?知らないのは私だけなんてどういうことかしら」

「…お義父様、今日はレティシャは…」

「ああ。こんな日に連れていくのもなんだろう…。メイドたちと留守番しているよ。」

「そう…なら良かったですわ」

馬車の中はここからは静かに馬車の走る音だけが響いた。

お母さまはそっぽを向いて怒っていた。

「最近のナーシャは私に何も言わないし言うことなんて一つも聞かないんだから。だからこんなことになるのよ。ほんとどこまで手を焼かせるのかしら。フンッ」
城が見えてきてお母様が私に向かって言う。
"ほんっと図太い女ね。この女がナーシャのお母様だとは思えないわ"

「……」
それに対しても誰も返事する気にもならなかった
「着いたみたいね。ナーシャ。陛下に失礼のないようにね。私も援護しますから。」


私たちは陛下の元へ案内される間もお母様は堂々と歩いていた。
本当に…ロアンの事はどうなるか分からなかったにしてもジェノシーをあんな酷い目に合わせておいてなぜこんなに堂々と皇帝陛下に会おうと思えるのかしら…。
自分が娘である事が恥ずかしいわ…。

「レビア公爵令嬢、エンドラの子息そしてカルノス公爵家よ。よくここまで来てくれた。」

「陛下、お久しぶりです。あれから体調の方は…」
私たちは陛下にお辞儀する。
こんなに圧のある方に堂々と話せるお義父様はさすがだ。

「はっはっは。公爵のおかげでこの通り十分に元気だよ。それで早速本題に入るが…」

チラッとお母様の方を睨む陛下にお母様は少しビクッとする。

「ここにドルーラ公爵、そしてグランデ公爵を拘束している。この件について、夫人は何か言うことはあるか?」

「…どういうことでしょう?今日は娘のナーシャ、そしてそこの子息の件で呼び出されたとお伺いしておりますが…」

「ああ。その件はこの後だ。私の言うことに何か不満でもあるのか」

「いえ…。ドルーラ公爵と言えば…娘の婚約者ではありますが他はなんの事だか…」

「そなたはまだ何も理解しておらんようだな。公爵もこんな妻では困ったものだろう。」

「はあ。。」

「どういうこと?あなたは何故私が責められているのか知ってるの?」

「……責められる?何故そなたが、被害者のような言い方をする。そなたがジェノシーを買収するために何をしたか知らぬとでも?」

「なっ…それはドルーラ公爵が勝手にやったことで私には関係ありませんわ」

「ふむ。彼を連れてきてくれ」

目の前にはやつれた叔父様が現れた。
私…まだ叔父様がいるという酒場にも行けてなかったけど皇族が動くとこんなにも早いのね…さすがだわ。

「ラクロアス候爵っ…」

「ああ。それでもまだなにも言うことはないのか?」

「私は…何も…確かに侯爵にドルーラ公爵を紹介は致しましたがそのあとのことは私は何も知りませんわっ」

「ほう。そう来るか。まあよい。なら次は娘のナーシャの件を話そう。ロアン・バルセがここに来ないということは彼はまだ眠っているということでいいかな?ナーシャ・カルノスよ」

「はい。彼はまだ昏睡状態でございます。日々寝る間も惜しみながらもレビア・グランデ公爵令嬢が看護して下さってます。今は私たちが泊まっている宿屋の娘が看護しておりますが。」

「そうか。ロアン・バルセの目が覚めれば話は早いだろうが…これを聞いても何もいう事はないか。」

「…私は確かに、レビア・グランデ令嬢の意志の元で彼を呼び出しました。ですがそのあとのことは何一つ知りません
わそれならレビア・グランデ嬢を責めるのが筋ではございませんか?」 

「…私が何も知らずそなたと話しているとでも?そなたは令嬢だけでなく、ケルディア元伯爵令嬢とも親しかったようだが?」
お母様は、やっとこの状況に理解したのか下を向きグッと歯を食いしばっていた。

「…それは…確かに私はメイシーを可愛がっておりました。メイシーは可哀想な子でしたから。」

「そのケルディア元伯爵令嬢だが、ボリスを召喚しようとした罪で拘束しておる。そなたならもうこれ以上は隠せないと分かっておるであろう」

「…皇帝陛下…私はそんなことは知りませんでしたわ!ただ私はナーシャの命の恩人、メイシーが可哀想で…」


「ほう。それで娘をいじめるメイドの肩を持ったと。直接的にドルーラ公爵やケルディア元伯爵令嬢と悪事に働いた訳では無い事を汲んで修道院で過ごすよう命ずる。」

「そんな!!私はなにもしておりませんわ!ナーシャやレティシャのためにもそんな所へ入る訳には行きません。陛下…どうか「これ以上問い詰めて良いなら問い詰めるがどうだ。ナーシャ・カルノス」

「わたくしは…。陛下の言うままに。」

「そんな…っナーシャ!あなたは私を見捨てるの?私はお父様が亡くなったあとも…あなたの事を考えて…」

「お母様…。お母様はお父様を殺した人間たちに手を貸していたのよ。知らなかったのか、知っていたのか…私はこれ以上のことを知ろうとは思いません!私はもうあなたの事をお母様だと思うことも出来ません。」

「レアロナ・カルノス夫人…いや。レアロナ・セルビア。修道院で反省するように。」
護衛たちがお母様を部屋から連れ出した。

「ナーシャ…大丈夫かい」

お義父様とルーシーが私の方を見つめる。
「大丈夫よ…。私はもうお母様になんの情もないわ…。」

「ここで…陛下。。今まではレアロナの言うままに養子としては書類には書いておりませんでした。本日をもってナーシャ・カルノスは養子として迎えようと思います。そして改めて、ドルーラ公爵と娘の婚約破棄を出来るだけ早めに発表したいと。」

「ああ。その辺は好きにすればよい。発表が終わり次第ドルーラ公爵の罪を公にしよう。」

そうだったんだ…。お母様は最初からドルーラ公爵と婚約させる予定でいたのかもしれないわね…。いや。もうそんなことを考えるのは辞めよう…。

「そしてナーシャ・カルノス、ルーク・エンドラ、レビア・グランデ。今回はそなた達にこの国を守った事を大々的に表彰しようと思う。異論はないか」

「「…皇帝陛下…感謝いたします」」

「…わたくしは…そんな表彰なんて頂いてもよろしいのでしょうか…。お父様は…魔法石を持っておりました。この事で父は拘束されてるのは承知です。そんな私が…」

「レビア・グランデ…。そなたの言いたいことは分かる。だがそなたは関与していないことはグランデ家に置いてあった魔法石が示しておる。今回のことはメイシー・ケルディアが父親のしでかした事を理由に爵位剥奪に至った恨みから始まったことだ。そなたは同じ道を進むようには見えないが、私としても同じことを繰り返す訳にはいかない。この表彰はそれを覆すためとも言える。そして我儘令嬢と言われる面もあるが頭がキレると有名である。そなたが爵位を継承すべきだと私は思う。違うか?」

「……皇帝陛下…このご恩は必ず…感謝いたします…」
レビアはきっとお母様と同じように修道院へ入ることも覚悟していたようで皇帝陛下に涙を流し感謝していた。

このあと、アイリス令嬢に皇帝陛下から事情を話して頂きアイリス令嬢とレビア公爵は令嬢の誤解も解けて仲直りすることができ、公爵として忙しくなったはレビア公爵は仕事の合間にもバルセ家へ通い、ロアンが目を覚まし初めは混乱状態だったがそうだが今はだいぶ落ち着き、レビアとの仲も少しづつ良くなっているそうだ。
私はアイリスに謝り今でもアイリスとレビアとは話たりもするけれど、ロアン様とはまだ会っていない。本当はすぐにでもロアン様に謝りたいけれどロアン様の気持ちがレビアに開きつつある今、まだロアン様に会うべきでは無いと考えている。

テミニエル様は今は私とお義父様が頼んだ神経が使えなくなっても視力を与えてくれる義眼を作って欲しいと言い出したために毎日ドタバタと研究室に篭っている。
初めは「なんでこんな無茶なこと言うのよ!私、医学のことは無知なのよ!濾過機やラミフォンを作るのとは全然話が違うわよー!!」と嘆いていたけど、ソランとお義父様のお願いに断ることが出来ずに作ることになったらしい(笑)


メイシーとラベル先生はもちろん国を動かす力のあるボリスを召喚しようとした罪で死刑を言い渡されたそうだ。
メイシーは開き直りながらお義父様にレニュアを体内に入れたことも白状したらしい。
ラベル先生は、伯爵時代からの付き合いで、ずっとメイシーに片思いをしていたとか…。初めのうちは、メイシーの悪巧みに反対をしていたがここまで来たらもうメイシーと同じ道をゆくしかない。と最後までメイシーを思っていたそうだ。

そして、ドルーラ公爵は父の暗殺、ジェノシーへの悪徳な買収、奴隷営業の関与と諸々と悪事が暴かれ死刑を言い渡される。
同じくグランデ公爵は父への暗殺への関与、帝国騎士暗殺、奴隷営業の罪で同じく死刑を言い渡される。

そしてラクロアス侯爵にジェノシーを任せるには荷が重いということでお義父様の領地に。そしてラクロアス侯爵は補佐として働いてとらうことになった。(結局は医師として忙しい上にカトセルーラのこともあるので私に渡されたのだけど)




こちらで内容的には最終回となります。
次は最後にまったり過ごす姿を書けたらなと思っています。
ここまで読んでくださった方ありがとうございました
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

処理中です...