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第二章
40話
しおりを挟むあれから1年ほど程経った。
コンコンっ
「ナーシャ、ジェノシーでの暮らしはどうだ?」
「お父様!上手くいってますわ♪町のみんなもまた活気が出てきて弱ってたぶどうや小麦もぐんぐん育ってます♪これからまたワインも作れるようになるわ。」
「はは。そうか。良かったよ。あれから私の所にレアロナから何度も手紙が届いてるからナーシャの所にももちろん山のように届いてるだろうと気が滅入ってないか心配だったんだが…元気そうてま安心したよ」
「ふふふ。いつもラミフォンで話してるから元気なことはしってるでしょう?」
「まあ、そうだがやっぱり直接会うのとラミフォンで話すのは違うからな。大事な娘がこんなに逞しくなって私も嬉しいよ。」
「お父様も忙しいから中々会えないものね、今日はレティシャは?」
「レティシャはレアロナが修道院に入って悲しくて手紙が届く度に喜んでいたがそろそろ伝えないといけないと思って何故修道院に入ったかを説明してね……。今では手紙も見なくなったよ。今は大きくなったら私の跡を継げるような治癒魔法の使える私の看護士になるんだって必死に勉強しているよ。今日もテミニエル様と勉強があるからナーシャには会えないけど……結婚式には絶対行くからねって伝えておいて欲しいって」
「そう。レティシャも今が頑張り時なのね。」
「はは。まだまだだがな」
そんなふうに言いながらもとても嬉しそうなお父様。
私もレティシャが前を向くことが出来て安心した。
「それより、君の精霊やルークはどこへ行ったんだ?」
「ルークはジェノシーの騎士達と手合いしてるわ。ティエラとソランは…ティルナに手を焼いて疲れてティルナと一緒にお昼寝してるみたい」
「そうか……。来るのが早すぎたか。それにしても精霊の赤ちゃんを育てるのは大変そうだな。ナーシャも眠れてるのかい」
「ふふふ。ちゃんと眠れてるわ。最近はティルナがティエラの真似をするようになって弱ってたぶどう達の土を良くしてくれたりすっごく手伝ってくれるのよ。」
「ははは、私も早くあってみたいよ。ティルナも早く人の姿になれるようになってくれたら私も相手になれるんだけどな。」
「ふふ、あと4年くらいはかかるみたい、それでも5歳くらいの子らしいわよ」
「気長に待つとするよ。ナーシャもそれだけリーツが溢れてるのは分かってるが1度結婚前に診断しておこう。私じゃああれだからいい医者をこちらへ呼んでおくよ」
「ええ。ありがとうお父様」
「じゃあ、ルークが戻ってくるまで1度町の皆の様子を見てくるよ。」
「助かります♪みんなあの時の事でお父様にもお礼が言いたいってずっと言ってたのよ。」
「それは…少し困るなあ。医者は私の仕事だからそんなに褒められるようなことはしていないのに……」
「まあ、普通は貴族や皇帝陛下まで診るお医者様はボランティアなんかしないわ。」
「ははは。まあ…行ってくるよ。」
ちょうど1か月前、私はルークからプロポーズを受けた。
今日はその報告も兼ねてお父様が来てくれることに。
本当は私たちがカトセルーラに向かうべきだけどジェノシーがどんな状況か見に行きたいからとジェノシーに来てくれることになっていた。
お父様にプロポーズされと伝えてあるけどルークはまだ何も知らないからきっとすごく緊張してるはず。
"ナーシャ!もう無理よ。ナーシャに会いたいって泣き散らすの"
"こいつ……俺に近づくなって砂をかけやがる…"
「まあ。ティルナったら。ソランをいじめちゃダメでしょ?」
1年で柴犬くらいの大きさになりもうティルナを抱っこするのもなかなか大変な大きさになってきたため
ティルナの顔を両手でわしゃわしゃしながら注意する。
"だってソラン怖いんだもん。ナーシャ!!あたち今日もナーシャと一緒にお仕事がしたい。"
"なっ俺が怖いだと?"
"ほらっナーシャ!ソランが怖くなった"
"ソランったら小さい子の相手もできないのよねえ。ほんっと不器用だわ。"
「まあ。本当にお仕事が大好きね。でもティルナ達のおかげで、ジェノシーの水も大地も昔のようなすっごく美しいから今日はお仕事はないのよ?あ、そうだ!じゃあティルナにお願いしてもいい?」
"うん!何すればいいの?"
「近いうちにお父様に何かプレゼントしたくて…」
"宝石いっぱい持ってくる??"
「ふふふ。宝石はお父様は欲しがらないわ。お父様はお医者様だって言ってたでしょう?屋敷のお庭に少しだけ薬草を育ててほしいの。治癒魔法で体力も使うから少しでも無理しないでほしくて。」
"わーい。じゃあ体にいい薬草を育てたらいいんだね!ティエラ!行こう♪"
"はいはい。行きましょう…(ティルナったらナーシャにベッタリで精霊界に帰る余裕もないけど今度精霊界に帰ったら絶対ルーシーにティルナを押し付けて帰るわね"
「ふふふ。ティエラったら」
スッと2人で消えていった。
"やっと休憩できるな。"
「ソラン、ティルナを一緒に見てくれてありがとうね」
"まあ、契約してるからな。俺もナーシャにだけ無理をさせる気は無いよ。"
「ふふ。いつも助かってます。今度ゆっくりマカロンとか食べに行こう♪首都で新しいマカロンが発売されたらしいの」
"おおお!それは食べるしかないな!"
コンコンッガチャ
「ナーシャ、今終わったよ。あれ、カルノス公爵はどこに」
「ルーク!お父様は今は町の皆を診に行ったところよ」
「そうか。すれ違いだったか…。」
"ソラン、なんだか元気だね?今朝は僕がルークについて行くのずるいって怒ってたのに"
"ふんっお前がいなくとも余裕だ。"
"素直じゃないなあ~ティルナは僕のこと大好きだから拗ねてるんでしょお?"
「ふふふ。お父様きっと時間かかるだろうから今のうちにお茶でも飲みましょう♪」
「はは。お付き合いしますよ。僕の逞しいお姫様。」
「ルークったらまたそんな風に。」
「褒めてるんだよ。なんてったってこの国の平和を救った勇敢なお姫様だからね」
「もう。それならあなたも平和を救った勇敢な騎士様でしょ」
「ははは。そうだね。僕たちなら何があってもやって行けるよ」
お互いニコッと微笑みそっと抱きしめ合った。
「何があっても離さないからね」
「ええ。私も何があってもあなたと一緒に」
「ゴホンッ……」
「ヒャッお父様!?」
「カルノス公爵!!」
「はは。済まないルークとすれ違ったことに気がついてね、キリのいいところで切り上げて戻って来たものの今応接間に入るのは…と出ようとしたら急に風に押し出されるような感じがして……」
「「ウィン!!!」」
"僕は何もしてないよ~"と言いながらウィンがスッと消えていった。
「あのイタズラ者め」
「今晩のティルナの面倒はウィンに頼んで私たちは夜市にでも行きましょ。」
「ああ。そうしよう」
「はは。2人の息がピッタリな姿を見れて嬉しいよ」
ルークがゴクリと息を飲むのをそっと見つめた。
「カルノス公爵。……僕はナーシャ・カルノス令嬢とこれからもずっと一緒に過ごして行きたいと思っています。身分が違うとは何より承知です……。ですが僕は…令嬢を愛しています。どうか結婚をお許しください。」
「ルーク、顔を上げるんだ。私が君の身分を気にするわけないだろう。私はドルーラ公爵と正式に破談させて3ヶ月頃からずっと君たちの報告を待っていたよ。」
お父様はそう言ってルークと手を握った。
「公爵ありがとうございます。」
「2人でジェノシーを昔のように復元してくれて感謝しているよ。これからもここに住むだろう?書類上まだジェノシーは私の領地ということになっているが結婚と共に正式に2人の領地として渡そう。」
「感謝致します」
「お父様、ありがとうございます」
「ナーシャ……。本当に長い間色々あったね。私もナーシャの親になったのに沢山ナーシャを傷つけてしまった……。それなのに変わらず、こうやって嬉しい報告までしてくれてありがとう。結婚しても私達はいつでもルークやナーシャを支えるから何でも話してほしい。」
「お父様……。結婚を許してくれてありがとう。傷ついたのはレニュアのせいだったんだもの、お父様のせいじゃないわ。もしお母様が病んでいた時、支えてくれたのがお父様じゃなかったら。再婚したのがお父様じゃなかったら…私はどうなってたか……私と血が繋がってないのにこんなに大事にしてくれて感謝しています。」
お互いの目には涙が溜まっている。
お父様の顔を見て涙がこぼれそうになりギュッとお父様を抱きしめた。
「お父様……本当にありがとう。」
「こちらこそ。私を父親としてみてくれてありがとう。」
優しいお母様だと思っていた血の繋がった母がこれまで何を思っていたのかは今も分からないけれど…結局私を駒のように使おうとしていた。私は今後一生、母と会うことはない。
だけどそんな母がお父様と再婚したおかげで今の幸せがあるんだ。そこだけは母に感謝しないとね。
______________________
――――――に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?
「「はい」」
私たちはジェノシーの有名な花、キャレンデスの絨毯で結婚式を上げることにした。
キャレンデスの花に蕾が着いたころ、ジェノシーの不景気に観光に来てくれる人達は少なくなっているという噂を聞いていたためどうにかこの絨毯を活かしたいとジェノシーの再建も含めて皆にこの花を見に来て貰えたらいいなと近くに協会を建て、結婚式場を作ることにした。
結婚式当日は見事な晴天で子供の頃から大好きだったこのキャレンデスの絨毯で初めての結婚式をあげることが出来て心から幸せに思う。
「ナーシャ、おめでとう。幸せになるんだよ。」
「ありがとう、お父様」
「お姉様ご結婚おめでとうございます♪お義兄様、お姉さまをよろしくお願いします」
「ありがとうレティシャ、頑張って勉強してるってお父様から聞いてたわ♪これからも大変だろうけど私達も出来ることがあれば力になるからねっ」
「おめでとう2人とも。ナーシャを悲しませたら僕たちが黙ってないからね。」
「……ロアン!!目の調子はどう…?あの時はごめ「君のせいじゃないから謝らなくていいって僕はずっと言ってるよ?それにこんなにお祝いの日まで(笑)」
「そうよ。こんな日まで謝るなんてほんっとナーシャ令嬢らしいわ。」
「ふふ。本当子供の頃から変わってないわ」
「レビア公爵にアイリス!来てくれてありがとう♪」
ロアンが石に躓きそうになる…。
「ロアン!大丈夫!?」
「ロアン様!」
レビア公爵がロアンを支える。
「大丈夫だよ。石につまづいてしまったようだ。」
「やっぱりまだ目の調子が……」
「治ってるわよ。私が1週間前やっと義眼が完成したからね。今ロアンが【石】につまづいたって言ってたでしょう?」
「テミニエル様!!来てくださってありがとうございます。ロアン、本当にまた目が見えるようになったのね!!」
「ええ。来るに決まってるじゃない。おめでとうナーシャ。あ、あとこの義眼、どういう契約にするか後日シャンドラと話し合うからね♪」
「テミニエル様にカルノス公爵とナーシャが頼み込んでくれたって聞いたよ。それでもまた目が見えるようになるなんて思いもしなかった。感謝しかないよ。」
「よかったわ……本当に良かったわ。」
「ふふ。これでナーシャも安心ね。」
「レビア」
ロアンが急に跪く。
「ロアン様?」
「僕と結婚してください。」
レビア公爵は思わず涙ぐんだ。
「え、今!?それに……私で…いいのかしら」
「もちろん。レビア。始めは連れ去られた時、レビアに騙されたと思ってたんだ…。だけど馬車が暴走したとき君が僕を支えようとしてくれた事や君がコテージに来てからの記憶も曖昧だけど覚えてる。それにあれからもずっと僕を支えてくれて…本当に感謝してる。そして君が仕事の間、寂しがっている自分に気がついたんだ。レビア…愛してるよ。」
「ロアン様……。私も愛してます。」
「「「キャー!!おめでとう!!」」」
急なプロポーズにみんなでキャーキャー喜んだ。
「僕たちもここで結婚式を上げたいね。」
「そうね。こんなに美しい結婚式場は初めて見たわ。私も是非ジェノシーで上げさせて貰いたいですわ」
「ふふ。それじゃあ私たちからはここの結婚式をプレゼントさせて♪」
「わああ羨ましいわ!私もこんな素敵なところで結婚したいですわっ」
「まあ、アイリスったらまずは結婚相手を見つけませんと」
「むぅ。早く私も素敵な相手と出会いたいわ。」
「アイリスならすぐに見つかるわ」
ファ~
「わあっキャレンデスの花びらと白バラが優しい風に乗って…すごく綺麗な花吹雪よ!でもなんだかキラキラしてるわっ」
これは美しい!
こんな花吹雪を見れるとは思わなかったわ。
素敵な結婚式ねっ。
なんて言葉で溢れた。
"「…みんながやってくれたの?」"
"やっぱりバレたわね。ティルナと私で花びらを出したのよ。キラキラしてるのはソランが花びらにミストのような水滴を与えたからよ。ナーシャおめでとう♪"
"なっ、僕の優しい風を無視するなあ!"
"あら、なんのことかしら。まあそんな事は置いといて"
"""おめでとうナーシャ、ルーク"""
""「ありがとう」""
「私たち…本当に幸せものね」
「ああ。この幸せをこれからも守っていこう。」
「ええ。」
おしまい
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