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50話 ミツキさんと色々

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 ミツキさんの家に来た俺達5人+1匹。

「コウガさんって、やっぱり日本からの流れ者ですよね?」
「ですね、転生してからまだ数週間です」
「数週間!ほんと最近ですね、俺なんてもう1年くらいですよ」
「1年……ずっと錬金術師を?」
「はい、元の世界の物を再現しながら収入を得てます。俺が転生した時に好きなスキルを選ばせて貰えたので、錬金と空間魔法を貰ったんです。皆さんが装備してくれてる指輪やアンクレット……俺が作ったやつですね?」
「はい、この装備を見付けて初めてミツキさんを知ったんです。ミコシバミツキって日本人に違いないって」
「やっぱり分かりますよね、敢えてフルネームで名前を入れ続けた甲斐がありました」
「敢えてだったんですね」

 確かにミツキだけだと日本人って分からなかったかもしれない。
 メイランやソルトならともかく、カエデみたいな日本人に居そうな名前もある、もしミツキさんが流れ者だって気付いていなかったら出会う事はなかったかもしれない。
 まぁ今回はクマの彫刻に気付いたから出会えた訳だから、どちらにせよ出会えた可能性もあるけど。

「コウガさんは転生した時に何か貰ったんですか?もし知られたくないなら構わないですが」

 ミツキさんなら見せてもいいか……これからもお世話になるかもしれないしな。

「実は、今のこの姿は本物ではないんです」
「えっ?別の姿を見せる阻害魔法的な物ですか?」
「いや、まぁ見てもらった方が早そうですね 」

 俺は狼人族への変身を解いて人族の姿になる。

「コウガさん、狼人族に転生した訳じゃなかったんですね」
「はい、ミツキさん同様人族です。変身という特殊な魔法を後天的に覚えまして、絆を紡いだ仲間の種族に変身する事が出来るんです。しかもその種族の特性すら引き継いで、その変身先種族の仲間が所持するスキルすら使えてしまいます」
「えっ!?凄い、そんなの初めて聞きました!ヴィーネ、レイン、クロエ、聞いた事ある??」
「いえ、初耳ですね」
「私もないわね……私達冒険者になって長いけど、噂ですら聞いた事ないわ」
「んー私もない」

 ヴィーネさんもレインさんもクロエさんも知らないみたいだ、やはりこの変身スキルは特殊なようだな……

「まぁ、普段は変身スキルは隠してるんですけどね。今回狼人族でいた理由なんですが、武闘会に参加するに至って人族状態では魔法使いなので個人戦が戦いにくいのが理由ですね」
「なるほど、普段は魔法使いなんですね」
「はい、それで狼人族になれば素早さと接近攻撃手段を得られるのでこの姿に。そして変身は見られる訳にはいかないので常にこうして変身しているんです」
「なるほど、理由は分かりました。今の内は過ごしやすい姿で構いませんよ」
「ありがとうございます」
「てか、話し方も普通で良いですよ!俺は基本この喋り方なので気にしないですが」
「良いんですか?」
「ええ、もちろんです」
「……分かった、ありがとう」

 そう話していると、ヴィーネさんがケーキと紅茶を用意してくれた。

「今日の朝に焼いたケーキです、良かったらどうぞ」
「ヴィーネさん、ありがとう」
「わー!ケーキだ!美味しそう!」

 ケーキと聞いて目をキラキラさせて反応したカエデ、カエデってこんな食い意地張った子じゃなかったと思うのだが……まぁ、きっと元はこんな子だったのかもな、だって唐揚げ大食いしちゃうような子だからね。
 素が出やすくなったのかもしれない、良いことだと思う。

 ケーキを食べ終わり、周りを見渡すとクロエさんがシェミィをじっと見つめていた。

「んー」
「にゃ?」
「いや、ちょっと気になっただけ」

 クロエさんがシェミィを気にしていたようなのでミツキさんが話し掛けに行った。

「クロエ、どうしたの?」
「この子、不思議な感じがする。主、少しの間この子借りてもいいか聞いてほしい」
「分かった。コウガさん、クロエがシェミィの事が少し気になるようなので、お借りしてもいいですか?」
「ん?あぁ、テイム主は俺じゃなくてカエデだからな、カエデとシェミィ本人が良いなら構わないぞ、カエデ良いか?」
「うんいいよーその代わり私も行っていい?」
「いいよ。シェミィとやらもいいか?」
「にゃ」
「では行こう」

 クロエとシェミィとカエデが家の奥へと行ってしまった。
 ……あれ?クロエさん、シェミィの言葉が分かるのか?分かってる反応だった気がするが……

「あの方向だと、裏出口から出て裏庭で何かやるようですね」
「裏庭があるのか」
「ええ、の訓練場と遊び場を兼ねてるんです。もしかしたら同じ猫同士、何か感じた物があるのかもしれませんね」
「かもな、まぁカエデもついて行ったから大丈夫だろう」

 ガチャ

「ただいま、む?お客様か?」

 ドアが開かれたと思ったら、身長高目のタンク的な装備を身に付けたお姉さんと、くノ一的な姿の小さめの子が居た。

「あ、おかえりティナ、ツバキ!素材集めはどうだった?」
「抜かりなし」

 くノ一姿の子がアイテム袋をミツキさんに手渡した。

「うん、欲しい数以上にあるね!ありがとう2人共!」
「うむ、もっと頼ってくれていいのだぞ?」
「任務は必ず遂行する、いつでも言うといい」
「また近い内に頼むね。さて、2人に紹介するよ。俺と同じ所から来た流れ者、コウガさんだ」
「コウガです、よろしく」
「よろしく頼む、私がティナだ」
「ツバキだ」

 身長の大きいお姉さんがティナ、くノ一がツバキだな。
 よく見たら2人共奴隷の首輪がある、ほんと俺と似た境遇なんだな……

「こっちも紹介するよ、ドラゴン族のメイラン、砂狼族のソルト、友達のサリーナ、今はクロエさんに連れられて行ったが、狼人族のカエデにストームキャットのシェミィを連れてる」
「よろしくするわ」
「よろしくっす!」
「よろしくー!」
「よろしく頼む、クロエが他の人に興味を持つとはな」
「ストームキャットが気になったみたい、今は多分裏庭にいると思う」
「なるほどな、チラッと向こうを見てきてから風呂に入らせてもらう」
「分かった」

 ティナさんとツバキさんが家の奥の方へ歩いて行った。

「結構大勢で住んでるんだな」
「ええ、自分含め6人ですね。素材集めを基本的にティナとツバキとレインに頼んで、護衛にクロエ、家の事をヴィーネに頼んでます」
「なるほど、少し憧れるなぁ」
「ふふ、コウガさんだっていっぱい女の子連れてるじゃないですか」
「それはそうだが、持ち家ないからな」
「いずれ手に入りますよ、持ち家手に入れたら教えてください!転移してでも会いに行きますよ!」
「分かった分かった、教えるよ」

 そして暫く他愛ない話をして時間を過ごす、今日本で何が流行っているとか、ミツキさんが居ない間に何があったかとか、アニメはどんなのが出てきた?とかだ、どうやらミツキさんはアニメが好きらしい。
 ちなみにその間、メイランは俺の隣に付きっきりで居てくれて、ソルトは同じ狼で気が合うのかレインさんと話していた。
 ヴィーネさんは常にミツキさんの隣だ。

「そう言えばコウガさん、空間魔法のレベルが1だと言ってましたよね?」
「あぁ、なかなか上がらないなぁとは思ってたんだ。どうやったら上がるんだ?」
「使いまくればレベル上がりますよ、俺は錬金で常にストレージから素材や完成品を出し入れしてるので上がりました」
「なるほど、俺は買い物か必要な時にしか出し入れしないから経験値が貯まらない訳だな……」
「そうだと思います、暇な時にでも何でもいいので出し入れするようにしてみてください」
「分かった、ありがとう!」

 こうして話してる内に夕方になっていた。

「コウガさん、夕飯良かったら食べていきませんか?食べ終わったら宿に送りましょう」
「そうさせてもらうか、夕飯何も考えてなかったし」
「是非食べて行ってください、ヴィーネの食事凄く美味しいですから!この1年、日本食再現もかなり力入れてきましたから、期待しててくださいね!」
「お!そりゃ楽しみだ!」

 夕飯の支度をしてくれている内に、シェミィとカエデの様子を見に行く事にした。
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