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81話 シェミィの姿が

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 個人戦も終わり、団体戦がようやく始まった。
 第1試合、第2試合と進んでいき……第4試合が始まった頃、俺とメイランとソルトは控え室へと向かった。

「メイラン、ソルト、念の為聞いておくが、準備はいいか?」
「ええ、いつでも行けるわよ」
「もちろんっす!ご主人も例のアレはいけるっすか?」
「もちろんだとも!」

 何故念の為なのかと言うと、実は第3試合が終わる手前くらいまでメイランとソルトは外で身体を動かしていたのだ、なので準備出来ているのは分かっていたが一応聞いたのだ。
 昨日は、1日応援と俺やカエデの看病により、身体を動かす時間が無かっただろうからな……体が訛っていないか心配だったんだ。
 その準備運動の出来事は今から1時間程前に遡る。



 団体戦が始まった時、メイランとソルトが試合前に身体を動かしたいと言うので、2人のサポートにカエデとセシルが名乗り上げてくれた。
 なので、メイランについて行くと言ったエリスタと俺を含め6人で武闘会会場の外へ、そして人気のない場所で2人の準備運動を見守るという形になった。
 ちなみに第3試合が終わりそうになったら、ミツキからスマフォンで連絡してくれる手筈になっている。

「行くよ、ソルトちゃん!」
「うっす!」

 カエデはソルトに詰め寄り拳で連打する、そしてそれをソルトは回避や防御して軽く汗を流す。
 暫くすると……

「カエデ、もっとスピード上げて良いっすよ!」
「分かった、リズムを上げるね!身体強化!」

 カエデは身体強化でバフをしてペースを上げていく、ソルトも段々身体が温まってきたのか動きが良くなっていく。
 ソルトもレインのスピードを活かした特訓のお陰で、素早い敵でも動けるようになったよな。


「メイラン、どれくらい放てばいい?」
「5つくらいまとめて連続で放って貰えるかしら?」
「分かった、行くぞ!」

 セシルは腰を低くし、抜刀の構えを取る。
 しかし、刀は既に抜いており構えだけだ、これは呪いによるダメージ低下を利用している。
 ダメージが少なくなるのは特訓にはもってこいなんだよな、使える物なら呪いだろうと活用してしまおうって感じだ。
 メイランは空へ飛び上がり、セシルの攻撃を待つ。

「飛翔閃!」

 飛翔閃により斬撃が5つ連続でメイランに向かっていく。
 既に抜刀しているので、スキルに抜刀は付かないようだ。
 メイランはそれをアクロバティックに飛行し避けて、飛行制御の確認を行っていく。

「良いわよ!どんどん続けて頂戴!」
「うむ、分かった!」

 こうして見ると、グリーンドラゴンの飛行にも遅れを取らない飛行能力を得たよなメイラン、ツバキのお陰だ。

「メイラン……あんな機敏で繊細に動けるようになってるなんて……」

 エリスタがボソッと思った事を口にした。

「驚いたか?」
「はい、ビックリしました……多分グリーンドラゴンである私より、スピードこそ劣れど飛行制御と言った飛行能力自体は高い気がします……レッドドラゴンと言えば火と力を有するドラゴンで繊細な動きは苦手な筈です、一体何をしたんですか?」
「それは秘密だ、ただ言えるのは……メイランが手に滲むくらい努力した、その結果だ」
「……」

 成長したメイランの姿を、暫く見つめるエリスタ。
 何かを決めたのか、ふぅと息を吐いてからこちらを見た。

「コウガさん」
「なんだ?」
「貴方の事、信用する事にします。メイランの事……よろしくお願いしますね」
「何が決め手で信用に至ったかは分からないが……分かったよ、メイランの事は任せとけ」

 暫く沈黙が起きるが、再度エリスタが口を開く。

「この後私が話す内容をメイランが聞いたら……間違いなく取り乱すと思います。なので貴方と周りの仲間でしっかり支えてあげてください」
「……分かった、心しておくよ」

 俺達は再度2人のウォーミングアップを見つめ続けた。
 ウォーミングアップを始めて20分過ぎた頃、カエデがセシルとソルトとメイランに何か伝えた後、こちらに駆け寄ってきた。

「ご主人様!ちょっといい?」
「ん?どうした?」
「ちょっとスキルの件で話が……」

 カエデがチラッとエリスタをみた。
 あ、なるほど……あの件か。

「エリスタ、メイランの元に行ってもらってていいか?カエデと話があるんだ」
「分かりました」

 エリスタはメイランの元へ走っていく。
 そしてセシルはソルトと、メイランはエリスタと再度アップを開始。
 カエデは周りに誰も居ないのを確認してから口を開いた。

「ご主人様は私のスキル分かるよね?今はどうなってるか見れる?」
「……見ていいのか?」
「もちろん!もう戦ったしね」
「分かった、見るぞ」

 ステータスを開き、改めてスキルを確認する。
 すると、カエデが使用する獅子系スキルと装纏猫スキル全てにバツ印がついていた。

「ん……?」
「え?どうしたの?」
「スキル名はあるんだが、獅子系と装纏猫系スキルにバツ印がある……これって使えないのか?」
「え?私はいつでも使えるんだけど……やっぱりシェミィが原因?」
「かもな、1回鑑定入れてみるか……鑑定!」

 獅子連打や風連弾、装纏猫スキルの使用条件を鑑定してみると……

『獅子連打』獅子の力を借りる事により使用出来る。
『獅子風連弾』獅子の力を借りる事により使用出来る。
『装纏猫双牙』猫の魔力を所持している者が魔力を全身に纏わせると使用出来る。
『装纏猫疾風弾』猫の魔力を所持している者が魔力を全身に纏わせると使用出来る。

「なるほど……」
「なんて書いてたの?」
「装纏猫は猫に纏わる魔力を持つことだってさ、それと獅子系は獅子の力を借りる必要があるらしい」
「なるほど……だとしたら装纏猫はシェミィの魔力が必須みたいだね、恐らく獅子もシェミィ絡みだよ」
「獅子も?」

 シェミィは猫だ、獅子とは違うはずだが……
 いやまてよ?獅子はライオンだ、ライオンはネコ科だったはずだ……なるほどそういう事か。

「要するにシェミィをテイムしているカエデしか使えない……という事か」
「厳密には、獅子系は獅子に関する者が使える技、装纏猫は猫人族が使える技。2つ共の条件を兼ね備えているのがシェミィだった……って事だね」
「そういう事だろうな、俺も使ってみたかったんだが……残念だな」

 俺もシェミィのようなストームキャットをテイムしたら使えるようになるのだろうか?
 それだけじゃダメな気もするが……やっぱりカエデの戦いを見たら使いたいと思ってしまう。

「……テイムってさ」
「ん?」
「2人で同じ子をテイムって出来ないのかな?」
「……へ?」

 2人で同じ子をテイム……?え、普通に考えて無理じゃないの?
 主って1人が普通だよな?契約だって2重契約なんて……

「いやいや、無理だろ……テイムの2重契約なんて普通に考えて……」
「普通に考えれば、ね。でもさ?ご主人様のテイムスキルって私のだよ?私のテイムスキルなんだから、普通の枠からは外れたテイムだって出来そうじゃない?」
「そんなめちゃくちゃな……」

 とはいえ、もし可能なのであればカエデのスキルを全て俺も使用出来るようになる……
 常識に囚われて出来ない出来ないって言うのも違う……か?

「……仕方ない、やってみるか?でも、シェミィが許してくれたらな?」
「分かった!ちょっと待っててね」

 カエデがすぅ……と息を吐きながら目を閉じる、すると魔力が流れるような感覚を覚えた。

「返事が来た、おいでシェミィ!」

 すると、カエデの影より次元が歪みシェミィが飛び出してくる。

「にゃーっ!」
「えっ、シェミィって応援席に居たはずじゃ!?」
「うん!魔力で呼び掛けたら直ぐに来てくれたよ!」

 なんと!離れていてもすぐにこっちに呼ぶ事が出来るのか!

「凄いな……」
「にゃ~う」

 何故かシェミィがドヤっているような気がする。

「シェミィ、話があるの……ご主人様にも分かるように、お話出来る状態になってくれる?」
「にゃ」

 シェミィが再度影へと潜る。

「……えっ?」

 カエデの言った言葉に驚いて固まってしまった、お話出来る状態になる……だって!?

「ふふっ、驚いてる顔だね?ご主人様!私とシェミィからの、最後のサプライズだよ!おいで、シェミィ!」

 カエデから呼ばれて、影から飛び出したシェミィの姿は……
 何とも小さくて可愛い、そしてクロエと瓜二つな真っ白の姿の……猫人族の姿をしたシェミィだった。 
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