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80話 個人戦3位決定戦

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 司会のミーサーの掛け声により、3位決定戦が始まった。

「コウガさん!メイランの主人である貴方の実力……私にも見せてください!」

 エリスタは空へ飛び上がり、魔法を詠唱した。

「風よ、空を切る刃となれ!」

 あの詠唱……魔導書で見た事がある、確かあれだ!

「「ウインドスラッシュ!」」

 共にウインドスラッシュを放ち相殺させた。
 やはりグリーンドラゴンなだけあって風属性主体なんだな。

「身体強化、アクセルブースト!」

 俺はアクセルブーストでエリスタに詰め寄る。
 エリスタは今飛んでいるが、高度がまだ3m程とそれ程高くないので、アクセルブーストのスピードが乗った狼人族のジャンプであれば届く。

「はぁぁ!!」
「うおっと」

 エリスタは高度を上げて回避、俺は空中で身体を逸らしてエリスタの方を向いてナイフに風魔力を纏わせる。

「風刃!」

 エリスタに風刃を放つが、それも身体を反らせて回避される。

「でえぇぇぇぇい!」

 身体を反らせた体勢から、翼で推進力を得るように力強く羽ばたき、俺に詰め寄って殴り掛かる。
 羽ばたいた翼からは、強い風が空へと吹き出していた。
 俺は避けられないと判断、着地した瞬間にアイスウォールを展開して防ぐ……が。

「ぐっ!?」

 風によるブースト飛行状態での勢いの乗ったパンチの重さで、足元がどんどんひび割れていく。
 そしてアイスウォールも少しずつひびが入っていく。

「一撃が重すぎる……!」

 アイスウォールを斜め向けて力を受け流し、エリスタの拳が逸れた瞬間にアクセルブーストで離脱した。
 エリスタの拳は地面に叩き付けられて土煙が上がる。

「私なら氷を叩き割れるかなと思ったんですが、一撃じゃ無理でしたね」
「一撃で叩き割るのはゴリスターだけであって欲しいよ……」

 エリスタは比較的華奢な身体をしており、見た目からはパワーがあるようには全く見えない。
 しかし、グリーンドラゴンだからなのか羽ばたく翼からは風が発生し、それが推進力となり飛行速度を高める、そしてそのスピードが乗ったパンチは物凄い威力を生み出す。
 風により様々な効果をもたらして戦う……それがグリーンドラゴンか。
 この風を使う戦い方……参考になるな、俺もナイフに風魔力を纏わせたり、風刃だったりで、風魔力を使って戦う事が多いから学べるだけ学んでおこう。
 もしかしたら、メイランの種族に変身してドラゴン形態になった時にも使えるかもしれない。

 エリスタは再度飛び上がり、翼を大きく動かしてこちらへ暴風を発生させた。

「アイスウォール!」

 アイスウォールで風を遮るが、ゴゴゴゴと凄い風が発生しているのが分かる、吹き飛ばされたらステージ半分くらいは飛びそうな気がした。

「はぁぁぁぁぁ!」

 最後に発生させた風に乗ってエリスタがアイスウォールに迫り、再度スピードを乗せたパンチを繰り出すと、アイスウォールが砕かれた。

「よし、砕いたっ!」

 俺はアイスウォールを展開した際、風を防げるように強度は設定したものの、パンチを防ぐような強度には設定しなかった。
 敢えて砕かせて罠にかける……シェミィを呼び出す前のカエデにしたように。

「グラビティプレス!」
「うあっ!!」

 グラビティプレスにより身動きが取れなくなったエリスタ、翼で急所を隠してKOを防ごうとしてくる。
 俺は仕方なく、翼にナイフを振りかざして飛べなくなるように傷付ける。

「あぁぁっっっ!!」

 空を飛ぶ者には翼を傷付けろという教訓は、実はツバキとの戦いで思い知ったメイランから聞いていたのだ。
 やはりグリーンドラゴンとしては、空を飛べないと力を最大に発揮出来ないのだという。
 まだメイランは炎を操るので地上でも戦えるのだが、エリスタは風を操り空を駆けるドラゴン……翼は命綱と言える。

 グラビティプレスの拘束時間が終わり、エリスタは俺より離れるのだが。

「ぐあっ……」

 翼を使おうとした時に顔が歪む。
 翼が上手く動かず、身体は飛ぼうとしない。

「凍れ!ブリザード!」

 ブリザードにより、更なる機動力を奪っていく。

「うぅ……」

 エリスタは翼のダメージとAGI低下により、身体が動かせなくなってペタンと座り込んでしまった。

「……アクセルブースト」

 俺はアクセルブーストでエリスタに詰め寄り、首にナイフを突き付ける。

「終わりだな」
「そう……ですね、翼をやられた地点で負けでした……」

 エリスタは両手を上げて降参した。

「決まりました!武闘会、個人戦第3位は……コウガ選手だ!!!」

 ウオォォォォォォォォ!!

 歓声と共に温かい拍手が2人に注がれる。
 俺はナイフを仕舞って、エリスタに手を伸ばす。

「立てるか?」
「あっ……はい、負けた瞬間に治ったので大丈夫てす。あーあ……あっという間にやられちゃったなぁ」

 エリスタは俺の手を取って立ち上がる。
 メイラン同様ドラゴンの鱗のような模様がある腕、こんな細いのにあんなパワー出しても大丈夫なんだよな……ドラゴン族の体質なのだろうが凄いよな。

「ありがとうございますコウガさん、あの……もしお邪魔じゃなければ、メイランの傍に居させてもらっても良いですか?」
「ん?あぁ良いぞ、武闘会終わるまで一緒に居るといいよ、その後にあの話を頼むぞ」
「分かりました、ありがとうございます」

 俺達はステージを後にし、応援席へと戻った。


「「「「3位おめでとう!!」」」っす!!」

 カエデ、メイラン、ソルト、セシルより祝福を受ける。

「ありがとうみんな!」

 俺は4人みんなにハグをして感謝を述べる。

「コウガさん、おめでとうございます!3位って凄いですよ!銅メダルです銅メダル!」
「主、嬉しいのは理解するけど少し落ち着く、銅メダルって何?」

 好成績で喜ぶミツキに、それを落ち着かせようとするクロエ。

「クロエ、銅メダルってのはな、俺とミツキの居た元の世界で、3位の人に渡される名誉あるアイテムなんだ。この世界にも銅ってあるだろ?あれで作られるんだよ、銅で出来たこんな丸いやつがついたやつなんだ」

 手振りでどんな物かを説明する。

「んー、なるほど!」

 クロエは理解したのか、トコトコとミツキの元に歩いていって耳打ちをした。
 ミツキはそれを聞いて目を光らせるように目を見開き、クロエを褒めまくっていた、良い事でも思い付いたのだろうか?

「ってかエリスタ、どうしてここに?」

 メイランがエリスタがどうしてここに居るか聞き出そうとした。

「私がコウガさんにお願いしたの、メイランの傍に居させて欲しいって。後であの件も話すのだし……丁度いいと思って、もう隠れる必要も無くなっちゃったからね」
「なるほど、そういう事ね……分かったわ」

 メイランも納得した所で、団体戦が始まるまで待機していると、カリオンさんがこちらへやってきた。

「コウガくん、もし当たったらよろしく頼むよ」
「はい、よろしくお願いします!」

 俺達は握手をして、健闘を称えあった。


「さぁ!団体戦の戦う組み合わせが決まって、準備が整ったので団体戦を始めたいと思います!トーナメント表はこれだー!!!」

 モニターにトーナメント表がバン!と表示された。
 俺達は第5試合だな、そしてカリオンさん達は……第7試合の勝った方と戦うシード枠だな。
 なので3回勝ったら戦える……が。

「げ……」

 第6試合の所に騎士団の名前があった、ゴリスターやノシュタールが居る所だ。

「こ、コウガ様……あの騎士団ってまさか……」
「あ、あぁ……アイツらだ」
「マジっすか……無理っすよあの人達」

 あの人達単体でもめちゃくちゃ強かったのに、団体戦とかどうやったら勝てるんだ……?
 いくら考えても勝てるような気がしない、取り敢えず……第1試合と第2試合を勝てるようにしなければ。

「と、取り敢えず、まずは第1試合だ!頑張ろう!」
「そ、そうっすね!」
「頑張りましょう!」

 俺とメイランとソルトは結束を固めるのであった。 
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