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「ここ・・・樹里が入っていいわけ?」



樹里が高校3年生の夏以来、久しぶりに会った。
そんな樹里は出会った時と変わらず・・・こういうことを言う。




樹里のこういう所が、俺は昔から好きだった。




「大丈夫だろ?たまに学生が質問とかに来ると思うしな。
頼まれても、俺はもう講義引き受けねーな・・・。
女の子達は話なんて聞いてねーし。」



「さっき凄かったよね。」



「樹里に話し掛けたらサッと離れて行ったけど・・・なんでだ?」



「樹里が可愛いからでしょ?」




そんな久しぶりの言葉が懐かしく、面白く、数年ぶりに大笑いした。
“樹里”と数年ぶりではなく、“誰か”と話していて数年ぶりにだ。




俺は面白いと思うことが生活していてほとんどなくて、たまに妹をわざと怒らせて面白がっていたが・・・
妹には4年間も無視をされている・・・。




だから、久しぶりにこんなに笑った。




それを思い出しながら、久しぶりに会った樹里を見る・・・。




大学3年生・・・今年21歳・・・。
小学校4年生の時に出会ったから、凄い大人になったように見えた。




それでも、樹里はまだこの格好をしている。




“お子ちゃま”だと思った。




それは、子どもっぽいからという単純な意味ではない。




俺のグレーゾーンの線の上、そこに常にいるような子だった。




弁護士になって気付いたが、俺はこの“グレーゾーン”が大好きだったらしい。
OKでもNGでもないこの絶妙な線の上が、堪らなく面白い。




妹が中学に入ってから、母親は毎日のように書道教室を開けていた。
中学で陸上部に入っていたので、部活をしている時は気にならなかったが・・・。
部活を引退してから、受験に本腰を入れるようになってからは、生徒の子ども達に翻弄されていた。




同じ1人の子でも、俺のOKとNGをフラフラと行ったり来たり・・・
そう思ったら、ポンッとグレーゾーンの線の上に乗る。




“子ども”は、こういうものだと学び・・・それで終わりという話でもなく・・・。




夏休み中、家で勉強が出来ないのでどうしたものかと考えていた。
塾の夏期講習も、俺は毎日行く必要がないと判断した。




他の生徒と集団での授業になるので、正直遅い。
自分では理解しきれない所だけ受けにいくようにしていた。
それでも俺の成績は優秀だったから、“塾側”の“グレーゾーン”でもあった。




俺は、自分の“グレーゾーン”だけでなく、相手の“グレーゾーン”を見極めたり攻めたりしていくのも面白かった。




そんなことを思い出しながら、樹里に言う。




「樹里は可愛いな。
どんな格好してても、樹里は可愛い。」



「うん・・・」




不貞腐れながらも、嬉しそうに笑う樹里を見て・・・可愛くて笑いそうになった。
他の言葉で褒めるのはNGだと思うが、本心でもあるこの言葉の言い方は“グレーゾーン”らしいから。




「樹里は何時まで授業なんだよ?」




「今日は、もう終わり。」




「昼飯食いに行くか!」
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