【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

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「あ、望いらっしゃい。
青君は久しぶりだね?
すっかり大人になって~。」



ベッドの上でボロボロになった赤ちゃんの人形を抱いているおばあちゃんの横に座っていたお母さんが、疲れた顔に明るい表情を浮かべて私達のことを見てきた。



「お久しぶりです!!!
大人っぽくを通り越してオッサンになりましたよ!!!」



青さんの大きな声に、ブツブツと何かを言いながら赤ちゃんの人形をあやしているおばあちゃんの動きがピタッと止まった。



でもそれは一瞬だけで、またブツブツと喋りながら赤ちゃんの人形をあやし始めた。



その赤ちゃんの人形は私のお父さんにもなるしお兄ちゃんにもなるし、私にもなるらしい。
呆け始めた頃のおばあちゃんはよく、赤ちゃんだった頃のお父さんのこともお兄ちゃんのことも私のことも探したらしく、お母さんがこの赤ちゃんの人形をおばあちゃんに渡した。



「これ、晃孝(こうこう)堂のおまんじゅう。」



お母さんに晃孝堂のおまんじゅうの袋を手渡すと、お母さんがそれを優しい顔で見下ろした。



「わざわざ買ってきてくれたんだ。
これ・・・本店のおまんじゅうだね?」



「うん、朝早くから青さんに叩き起こされて、海までドライブして買ってきたよ。
その包みは今では本店だけの取り扱いだからって、青さんが。
朝からめっちゃ大変だった。」



「お前は車で爆睡してただだろ!?」



「望が爆睡?
青さんの所ではよく眠れるんだ、良かった。
今お茶いれるからみんなで食べようか。」



青さんがチラッと私のことを見てきたので、それには普通に答えた。



「水族館でも言ったじゃん、”初めてこんなに眠れた“って。
私昔から眠りが浅くて。」



「望だけじゃないよね、和希もなの。」



「お兄ちゃんは友実ちゃんがいると爆睡出来てるじゃん。」



「そんなの当たり前でしょ、あの和希が秘書生命を懸けた女の子だよ?
亀さんから指導された加藤の”家“の秘書が下半身まで使うと決めた。
それ程必要な人間じゃなきゃやらないことだからね。」



急須にお湯が落ちていく音が静かに響いていく。



「小関の”家“の為だけではなく、きっと自分にとっても必要な人間なんだと心の奥底で思っていたから秘書生命を懸けられた。」



お母さんが綺麗な所作で急須の蓋を閉めたかと思ったら、自信満々な顔で青さんと私に振り向いた。



「お父さんの秘書生命を懸けさせたお母さんが言うんだから間違いない!!
お父さんってお母さんと出会った時から絶対にお母さんのことが好きだったもん!!
ご主人様とアナタのお姉様の為にも~!とか何とか言ってたけど、ぜ~ったいにお母さんのことが出会った時から好きだったんだよ!?」



「・・・お前のお母さんってこんなキャラだったっけ?」



「うん、たまに。
いつもは良い所のお嬢さんってタイプだけど、たまに結構ヤバくなる。」



「お母さんに向かってヤバいとか言わないの!まったく・・・。
望はすぐに余計なコトを言うんだから。
”太ってきたからおまんじゅうやめたら?“とか昔言ってきて大喧嘩になったこともあったよね。
お母さんだって晃孝堂のおまんじゅうが大好きなの!!
このおまんじゅうがあったからお義母さんは秘書として頑張ることが出来て、お父さんだって生まれてくることが出来たんだからね!?」



青さんと私が座るソファーの前のテーブルに、お母さんがお茶とおまんじゅうを置いてくれた。



おばあちゃんの”ご主人様“だった人は、おばあちゃんにこのおまんじゅうをよく渡していたらしい。
おばあちゃんのことを女としても愛していた”ご主人様“は、このおまんじゅうだけはおばあちゃんに渡すことをしていた。



私の隣に座る青さんから珍しく静かな声が・・・



「照之と出会った場所も、照之との1番の思い出の場所も、照之とした最後の待ち合わせの場所も、この晃孝堂の1号店ですからね。」



私の心の中の言葉を続けた。
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