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木下さんからの問い掛けに、私は何も答えなかった。
「望ちゃん、黙っているということは肯定してるということ?」
三山社長からの問い掛けにも何も答えない。
「私、聞いたんだからね!!
この前、アナタが友達に話してる内容を!!
それをここでみんなの前でバラされても良いの!!?
自分の口でちゃんと話しなさいよ!!」
木下さんがどんどんヒステリックになっていっても口を少しも開かなかった。
お昼休みの時間が始まっても、お昼休みが終わっても、午後になり時間が経つにつれて次々と社員達が戻って来ても、私は三山社長と木下さんの前で下を向き立ち続けていた。
途中で他の社員達が、私にだけではなく木下さんにも三山社長にも声を掛けたけれど、木下さんがヒステリックになり黙らせた。
あまりにも異様な光景なのか誰も席に座らず、段ボールだらけの社内の中で私達3人のことを遠くから見ている。
チラッと確認をすると安藤香奈もめちゃくちゃ怒った顔で私のことを睨み付けていて、その隣で大西君が安藤香奈に何かを必死に言っている。
さっきから大西君は率先して私のことを庇おうとしてくれていて、“良い子だな”と思った。
安藤香奈とは反対側の大西君の隣で、心配そうな顔で私のことを見ている馬場さんも“良い子だな”と思った。
私に何度も謝罪することを促してきた男性社員達も“良い人達だな”と思った。
そして、めちゃくちゃ怒った顔をしながらも冷静な口調で私から話を聞き出そうとしてくる女性社員達も“良い人達だな”と思う。
三山社長は良い人材を集められていると思う。
社会人経験なんて全然ない私だし、ミツヤマにいた期間なんて少しだったから、この判断が正しいかどうかもそこまで自信はないけれど。
でも・・・
ミツヤマがもっと良い会社になれば良いなと、純粋にそう思った。
ミツヤマはもっと強くなれる会社だとも思った。
でも、今のままではもっと良い会社にも強くもなれない。
だから清掃をする。
私はワンスターエージェントの清掃員、加藤望。
見えない所まで綺麗にしようと思う。
だから・・・
「電話、していぃ・・・?」
小さな声で木下さんに聞くと木下さんがまたヒステリックに色々と言ってきた。
それを全て無視し、私のデスクに置かれていた電話の受話器を持ち、暗記している番号のうちの1つの電話番号を押した。
お兄ちゃんに言ったら絶対に怒られるのは分かっているから、お兄ちゃんには事後報告をする。
青さんは心配ばっかりしていたけれど、私は掃除ではなく清掃をしたいから電話を掛けた。
私自身のことを殺す為に。
そして、ミツヤマの全員を殺す為に。
最後の社員が戻ってきたのが確認出来たので、私は電話の向こう側の人に言った。
「あの・・・ごめんなさい、一美さん。
来てくれませんか・・・?
私、今“ミツヤマ”という会社で働いていまして・・・。」
一美さんにとって“昔から可哀想な私”がそう言うと、電話の向こう側から聞こえてきた。
『待ってて、すぐに行くから。』
仕事中にも関わらず一美さんは即答してくれた。
その声はとても優しく、でも何処までも強く感じた。
私は知っている。
私だって知っている。
“あの小関の”家”のお嬢様が大丈夫なのか!?”
めちゃくちゃ心配していた青さんの姿を思い出し、心の中でもう1度言う。
“うちのお嬢様は強い女性です。
私のお兄ちゃんがそうなるように徹底的に一美さんの心を育てた。
だから一美さんの心も同時に起こしてくる。
お兄ちゃん程ではないけど私だってきっと知ってるから。
一美さんの中に眠る、”強いお嬢様”の起こし方を。”
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「望ちゃん、黙っているということは肯定してるということ?」
三山社長からの問い掛けにも何も答えない。
「私、聞いたんだからね!!
この前、アナタが友達に話してる内容を!!
それをここでみんなの前でバラされても良いの!!?
自分の口でちゃんと話しなさいよ!!」
木下さんがどんどんヒステリックになっていっても口を少しも開かなかった。
お昼休みの時間が始まっても、お昼休みが終わっても、午後になり時間が経つにつれて次々と社員達が戻って来ても、私は三山社長と木下さんの前で下を向き立ち続けていた。
途中で他の社員達が、私にだけではなく木下さんにも三山社長にも声を掛けたけれど、木下さんがヒステリックになり黙らせた。
あまりにも異様な光景なのか誰も席に座らず、段ボールだらけの社内の中で私達3人のことを遠くから見ている。
チラッと確認をすると安藤香奈もめちゃくちゃ怒った顔で私のことを睨み付けていて、その隣で大西君が安藤香奈に何かを必死に言っている。
さっきから大西君は率先して私のことを庇おうとしてくれていて、“良い子だな”と思った。
安藤香奈とは反対側の大西君の隣で、心配そうな顔で私のことを見ている馬場さんも“良い子だな”と思った。
私に何度も謝罪することを促してきた男性社員達も“良い人達だな”と思った。
そして、めちゃくちゃ怒った顔をしながらも冷静な口調で私から話を聞き出そうとしてくる女性社員達も“良い人達だな”と思う。
三山社長は良い人材を集められていると思う。
社会人経験なんて全然ない私だし、ミツヤマにいた期間なんて少しだったから、この判断が正しいかどうかもそこまで自信はないけれど。
でも・・・
ミツヤマがもっと良い会社になれば良いなと、純粋にそう思った。
ミツヤマはもっと強くなれる会社だとも思った。
でも、今のままではもっと良い会社にも強くもなれない。
だから清掃をする。
私はワンスターエージェントの清掃員、加藤望。
見えない所まで綺麗にしようと思う。
だから・・・
「電話、していぃ・・・?」
小さな声で木下さんに聞くと木下さんがまたヒステリックに色々と言ってきた。
それを全て無視し、私のデスクに置かれていた電話の受話器を持ち、暗記している番号のうちの1つの電話番号を押した。
お兄ちゃんに言ったら絶対に怒られるのは分かっているから、お兄ちゃんには事後報告をする。
青さんは心配ばっかりしていたけれど、私は掃除ではなく清掃をしたいから電話を掛けた。
私自身のことを殺す為に。
そして、ミツヤマの全員を殺す為に。
最後の社員が戻ってきたのが確認出来たので、私は電話の向こう側の人に言った。
「あの・・・ごめんなさい、一美さん。
来てくれませんか・・・?
私、今“ミツヤマ”という会社で働いていまして・・・。」
一美さんにとって“昔から可哀想な私”がそう言うと、電話の向こう側から聞こえてきた。
『待ってて、すぐに行くから。』
仕事中にも関わらず一美さんは即答してくれた。
その声はとても優しく、でも何処までも強く感じた。
私は知っている。
私だって知っている。
“あの小関の”家”のお嬢様が大丈夫なのか!?”
めちゃくちゃ心配していた青さんの姿を思い出し、心の中でもう1度言う。
“うちのお嬢様は強い女性です。
私のお兄ちゃんがそうなるように徹底的に一美さんの心を育てた。
だから一美さんの心も同時に起こしてくる。
お兄ちゃん程ではないけど私だってきっと知ってるから。
一美さんの中に眠る、”強いお嬢様”の起こし方を。”
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