【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

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お昼



「青さん遅いな~・・・、ごめんね?
もうすぐ着くって連絡は来てるから!
先に食事を出して貰おう!
青さんがお金を出してくれるから、1番お高いコースを予約してあります♪」



ご主人様と奥様が初めてデートをした店、有名でお高いフレンチの店を小関と加藤の”家”の力を使って私が予約をした。
数ヶ月先の予約まで埋まっているというこの店でも、その2つの“家”の力があればすんなりと予約が出来た。



「こんなに凄いお店でビックリしました・・・。
ここまでお礼をして貰う程のことをしていないので、逆に申し訳ないです・・・。
青さんという方は本当にこのお店で大丈夫なんですか?」



「私が予約した後にメッセージで送ったけど、特に何も言われなかったから大丈夫だよ。
あと、青さんは多分だけどこの店のことを昔から知ってるし、この店で男女が食事をする意味も知ってるはず。」



「そうなんですか?」



「うん、ここは小関の“家”の現ご主人様と奥様が初めてデートをした所なんだ。
多分お兄ちゃんからそういうことも聞いてると思う。
青さんは財閥のことも小関の“家”のことも加藤の“家”のことも結構何でも知ってるから。」



そう答えてから店の中を見渡した。



ずっと来てみたいと思っていた店は、こんなに素敵な所だったらしい。



私のお父さんが見付けてきた“Hatori”のお嬢様は、当時はご主人様との婚約に乗り気ではなかった。
でも、此処で初めてのデートをした時に、ご主人様の真面目で不器用な人柄に奥様は惹かれてくれた。



2人の出会いも2人の初デートも私のお父さんが全てお膳立てをして結ばれた2人。
今は一美さんの為を思って離婚をしてしまったけれど、離れて暮らしている今でも変わらず、2人は深く愛し合っている。



「私もね、この店に来てみたかったんだ。」



“青さんに連れてきて貰いたかったんだ。”



私の隣にあるもう1人分の席を眺めながら、小さく笑う。



“こんな形だけど、今日は私の隣に青さんがいてくれる。”



“こんな形だけど、青さんと一緒にこの店で食事が出来る。”



「青さん、早く来ないかな。」



そう言った後に、胸の間にある“一平さんの第2ボタン”と結婚指輪をおさえた。



“でも、やっぱり来ないで欲しい・・・。”



“やっぱり、来ないで・・・。”



“どうしよう・・・。”



“どうしよう、嫌だ・・・。”



“凄く嫌だ・・・。”



“凄く凄く、死ぬほど嫌だ・・・。”



「望さん?」



野々ちゃんの声に釣られるように、野々ちゃんのキツい美人な顔を見た。



そしたら、見えた。



コートを預けた青さんが店の人に案内をされてこの席まで歩いてくる姿が。



私のことを見て、何でもない笑顔で・・・“普通”にしか見えない笑顔で笑う青さんの顔が見えた。



今日の為にそれなりに良いワンピースを着ている私のことを見ても、“普通”くらいの笑顔しか見せてくれない青さんが・・・。



「悪い、少し遅くなった。」



そう言った時、野々ちゃんがフッと青さんのことを振り向いた。



そしたら・・・



青さんが野々ちゃんのことを見下ろして。



見下ろして・・・



それで・・・



それで、それで・・・



凄く驚いた顔をした後、“怖い”しかない瞳で野々ちゃんのことを見詰めた。



口元は笑っているのにその目は1ミリも笑っていなくて、真剣な目を通り越した“怖い”目で野々ちゃんのことを見詰め、言った。



「俺、キミのその顔めちゃくちゃタイプ。」



青さんは私の隣ではなく野々ちゃんの隣にドカッと座った。



私のことなんてチラッと見ることもせず。



私のことなんて存在も忘れたかのように見えた。



“加藤望”なんて一瞬で消し去ったように見えた。



“加藤望”への暗示も洗脳も、一瞬で消えた瞬間を見た。



“加藤望”への“愛しいる”なんて、青さんの中から何も残らず消えたのだと分かった。



野々ちゃんがクスクスと可愛らしく笑い、青さんのことを見詰め返す。



そして・・・



「知ってます。
私が高校生で・・・お兄さんは23歳くらいでしたっけ。
その時も同じ言葉を言ってくれて、高校生の私を本気で口説いてくれましたよね。
お久しぶりですね。」



野々ちゃんが、そう言った。
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