【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

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青さんとの結婚生活が終わり、また青さんの“ほぼ妹”で“ほぼ友達”としてだけの暮らしに戻った。



青さんが帰ってきても出迎えることもなくなり、ご飯を温めることもなくなり、甘々なメッセージが届くこともなくなり、愛の言葉を渡してくれることもなくなり、身体が触れ合うこともなくなった。



「じゃあ、今日は先に野々ちゃんと会ってるからね。」



今日は日曜日。
青さんが私とデートをするつもりでいてくれた日。
その日に青さんと野々ちゃんのことを出会わせることになった。



早く終わらせてしまいたいと思う。



青さんが野々ちゃんに恋をする所を目の前で見たら、私のこの苦しくて悲しくて虚しい気持ちも終わるのだと期待をした。



「分かった。
仕事1件終わらせたらすぐに行くから。」



ネクタイを締めていく青さんのことを眺めながら、今日も“苦しい”と思う。



もう私を見ても“普通”の顔をしている青さんのことを見て、やっぱり“悲しい”と思ってしまう。



“もう、女としては好きじゃない?”



自分で青さんとの結婚生活を捨てたはずなのに、“普通”に戻ってしまった青さんの態度が凄く嫌だと思ってしまう。



どうしても“虚しい”と感じてしまう。



青さんとの結婚生活は凄く幸せだったから。



凄く凄く、幸せすぎたから・・・。



「青さん。」



「ん?」



私のことをチラッと見た後、コートを羽織り鞄を持ちスタスタと玄関に歩いて行く青さんの後ろ姿を追いながら小さく聞いた。



「何処に行こうと思ってたの?」



「何が?」



「デート。」



「お前との?」



「うん。」



「何で?
鶴さんの孫にお礼した後、どっか遊びに行く?」



私を見ることなく革靴を履いていく青さんの大きな背中を眺めながら、頷いた。



それから、言った。



「何処に行こうとしてたのかなって、気になっただけ。」



「何だよそれっ!」



普通に笑った青さんが普通に玄関の扉を開いた。



「夢の国。」



「嘘・・・、青さんあそこ大嫌いじゃん。
亜里沙さんと1回行って“もう二度と行かない”って文句言いまくってたよね?」



「人多すぎでイライラするし、並ぶ時間ばっかりで女のつまんねー話聞き続けるとかただの苦行だからな。」



家を出る直前にチラッと私に振り向いた青さんが”可哀想~”という顔で私のことを見てきた。



「お前、中学3年の時の学校行事で夢の国に行ったことを日記で送ってきただろ?
その時は友達が1人もいなかったから1人ぼっちでウロウロしてただけで、夢の国どころか地獄だったとか書いあったからな。
“でも、みんなが何度も行くくらいの場所だから確かに楽しい場所で、いつか1日休みを貰えるならまた行ってみたい”って、”その時は私にも一緒に行ってくれる人がいるといいな“って書いただろ?」



「めっちゃ記憶力良いじゃん。」



「ほら、俺って仕事めっちゃ出来る奴じゃん?」



「なんかムカつく。」



「今は“友達”がいるだろ?
俺の所にいる間は土日休みなんだからそいつらと行ってこいよ。」



「うん、そうだね。」



形だけの返事をした。



“あと数日生理が遅かったら、今日は夢の国に青さんと行ってたんだ。”と思いながら。



“私のことを喜ばせようと、二度と行きたくないと思っていた所に青さんは行こうとしてくれていたんだ。“とも思いながら。



閉まった扉を眺めながら、青さんと2人で夢の国にいる自分を妄想した。



妄想だけでも凄く楽しかった。



凄く凄く、幸せだった。



「夢でも見られると良いなぁ・・・。」



そう呟き、青さんがいなくなった扉を眺め続けた。














私は今日、青さんと野々ちゃんを出会わせる。
死ぬほど嫌だけど、この泣きたくなるくらいのモヤモヤが次第に晴れていくのだと期待もしている。



リビングの窓から見た空は、今日も曇りだった・・・・。
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