【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

文字の大きさ
295 / 693
19

19-12

しおりを挟む
「久しぶりだな。
キミ、鶴さんの孫なの?
初耳なんだけど。」



「はい、初耳ですよね。」



「名前なんだっけ?
西川・・・ののだっけ、どんな字?
こう?」



青さんが手帳を取り出しそこに万年筆で字を書き、野々ちゃんに見せた。



「違います、こうです。」



野々ちゃんが青さんに向かって手を伸ばすと、青さんは”怖い“しかない瞳で笑い続けたまま野々ちゃんに万年筆を渡した。



私が青さんとの婚姻届を書いた万年筆・・・。



その万年筆で野々ちゃんがサラッと文字を書く。



「こうです。」



可愛く笑いながら青さんを見詰め続ける野々ちゃんの手から、青さんは口元の笑顔を少しだけ大きくしながらスッと万年筆を抜き取った。



「お母さんの名前は?」



「頼子(よりこ)です。」



「鶴さんの子どもはお母さんだけ?」



「はい。」



「キミは?兄弟いるの?」



「一人っ子です。
母はなかなか良い人と出会えなくて、遅く出来た子どもだったので。」



「お父さんは何してる人?」



「公務員でしたが、今は定年退職しています。」



「お母さんは?働いてる?」



「お弁当屋さんでパートをしています。
元々そこで長年アルバイトをしていて、そのお弁当屋さんを大繁盛させている時に近くに引っ越してきた父と出会ったそうで。
結婚した後はしばらく専業主婦でしたが、父が定年退職をした後にまたパートを始めました。
あ、夫婦仲は良いですよ。
父が嫌だからパートを始めたわけではありませんので。」



野々ちゃんの話を青さんがめちゃくちゃ真剣に聞いていく。



「鶴さんは?今どうしてる?」



「おばあちゃんは死んじゃってます。」



「・・・・死んじゃったとか言うなよ。」



「あ、亡くなってます。」



「マジで?」



「はい。」



「本当に?」



「はい、私が生まれるずっと前に亡くなってます。
おばあちゃんは成長するにつれて身体がどんどん弱くなっていったそうで、未婚のまま男の人から種だけを貰って母を何とか生み、西川の血を必死に守ったと聞いています。」



「マジか・・・。
鶴さん死んでるのか・・・。
鶴さんは鶴さんで大変な人生だっただろうな・・・。」



「そうだったと思います。
亀さんの前の当主から逃げ続ける為、おばあちゃんはたった1人で母を連れて全国を点々としていたそうです。」



「鶴さんに中出しした奴はどうしたんだよ。
マジで中出しだけして自分だけ気持ち良くなって終わった系?」



「お金の援助はおばあちゃんが亡くなった後もしてくれて、母は凄く助けて貰ったと言っています。
結構良い所の男の人だったそうで、母の認知は出来なかったそうですがおばあちゃんとはちゃんと愛し合っていたそうです。」



「どこが”ちゃんと“だよ。
亀も鶴も、2人ともダメな男から中出しされやがって。」



「そんな風に怒ってくれたのは青さんが初めてです。
青さんのことは望さんから色々と聞いています。
とても素敵な人だそうで。」



野々ちゃんがそう言った時、何も置かれていなかった青さんの席にフォークやナイフなどが置かれ始めた。



「お飲み物はお決まりですか?」



初老の男性が落ち着いた声で青さんに聞いた。



そしたら、青さんは私のことをパッと見た。



やっと、見た。



私がいたことをやっと思い出したらしい。



”怖い“と思う目で私のことをやっと見た青さんは、口元だけを笑顔にしながら私に言ってきた。



「お前、帰れ。
俺はこの子と2人で話があるから。」



そんなことを言ってきた青さんが財布を出し、そこから私の目の前に1万円札を何枚も置いた。



「それで”友達“と夢の国でも行ってこいよ。
足りなかったら後で請求して良いから。」



つい数日前まで私の旦那さんだった人が、私の目の前で別の女のことを口説き、私のことを追い出そうとしてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...