【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

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それにはもう、何も考えられなくて。
さっきからずっと何も考えられないくらいの大バカな頭になっているけど、もっともっと頭が回らなくて。



「行かないよ・・・。
私、この店に来てみたかったんだもん・・・。
この店のご飯を食べてみたかったんだもん・・・。」



”青さんと一緒に・・・。“



それだけは必死に口を結んで我慢をした。



私にノンノンを重ねた”あの日“よりも後に青さんと野々ちゃんは出会っていたらしい。
私にノンノンを重ねていたのに、青さんは野々ちゃんのことを本気で口説いていたらしい。



それくらいだった。



青さんの私への”愛“なんてそのくらいで。



そんなことは知っていた。



昔からちゃんと知っていた。



私は青さんの好きな顔ではない。



青さんは私みたいな顔ではなく野々ちゃんみたいな顔が凄く好きで。



凄く凄く好きで。



「じゃあ、俺らが店を出る。
お前はゆっくり食ってろ。
・・・申し訳ありませんが、2人分キャンセルで。
支払いはしますので。」



青さんが初老の男性にそう言うと、野々ちゃんの腕を強引に掴み立ち上がらせた。



「え・・・望さん1人を置いていくんですか?」



「当たり前だろ、こいつがいるとお前を口説けない。
マジで口説きまくるから覚悟しておけよ?」



「ちょっと怖いんですけど・・・。
いきなり手とか出さないでくださいよ?」



「それはお前次第。
こんな所で何してんだよマジで、連絡してこいよ。」



「こんな所とか酷いですよ。
望さんが予約をしてくれたお店で、望さんも楽しみにしてたお店なのに。
連絡先は変わってないんですか?」



「だからだよ、こんな所で会いやがって、ふざけんなよ。
連絡先が変わったらその連絡もするに決まってるだろ、マジでお前覚悟しておけよ?」



「怖いですって~・・・!」



青さんに腕を掴まれながら歩いていく野々ちゃんが、フッと私に振り向き可愛い笑顔で手を振ってきた。



それには死ぬ気で笑顔を作り手を振り返す。



「良かったですね、縁談が上手くまとまりそうで。」



初老の男性が穏やかな笑顔で私に話し掛けてきた。



「加藤様には亀様の代から大変お世話になっておりまして、お嬢様ともお会い出来たことはとても嬉しいです。」



「私なんて、加藤の”お嬢様“でも何でもないよ・・・。
ただの”大バカなダメ秘書“だよ・・・。」



「亀様のお孫さんでいらっしゃいますからね、そうなのかもしれません。」



初老の男性が恥ずかしそうに顔を赤らめた。



「頑張る亀さんを支えたいと何度もプロポーズをした若造を、お祖母様は大笑いしながらあしらい続けた”大バカなダメ秘書“でしたから。」



「え、おばあちゃんのことが好きだったの?」



「はい、亀さんに惚れていた男性は多くいました。
小関の”家“の亡くなった家長、お子さん達、照之様、そして財閥の分家の男性達も。」



「分家の男達も?初耳なんだけど。」



「分家の男性達が、亀さんの婚約者候補を何人も潰したと自慢気に話していたのを聞いたことがあります。」



「おばあちゃんは凄いね、そんなに男達からモテたんだ。」



「亀さんが頑張る姿はとても素敵でしたから。」



「さっきの大きな男の人もおばあちゃんに惚れてるんだよ。
出会った時は既に呆けたお婆さんだったのに。」



「亀さん、認知症に・・・?」



「うん。」



「それは・・・とても残念です・・・。」



「全然残念じゃないよ。」



青さんと野々ちゃんの後ろ姿を眺め続ける。



もうとっくに見えなくなったはずなのに、私の目にはまだ残っている。



”私も早く呆けたい・・・。
それで早く忘れたい・・・。
それでずっと、幸せな夢の中にいたい・・・。
それで生まれ変わったら、今度は私がアッチになりたい・・・。
青さんの家族でもなくて、ネコでもなくて、私はやっぱりアッチになりたい・・・。“



”青さんに本当の”愛している“を渡して貰える、普通の女の子のノンノンになりたい・・・。“












美味しいはずのフランス料理はビックリするほど味がしなかった。



ずっと来たいと思っていたこの場所で、夢の国で味わった地獄よりも恐ろしい地獄を味わう。



「”元奥さん“がいる目の前で、普通あんなになる・・・?」



私の”元旦那“は私以上の大バカなのだと、改めて思い知った。



「青さんなんて男っていうよりもただのチ◯コじゃん・・・。
私には到底理解出来ないよ・・・、最低・・・。」


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