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それには、何も言えなくて・・・。
だって、こんなの何も言えない・・・。
加治さんも何も言わずに、立ち上がった佐藤君のことを黙って見上げていて。
”ヤバい、佐藤君がこんなに強い子だって2人に事前に説明するの忘れてた・・・。"
めちゃくちゃ後悔をしていたその時・・・
最上さんが力強い声で答えた。
「それで良いんですよ。
それ”が"良いんです。」
最上さんがそう言い切った後、私の身体を離して私の前にゆっくりと移動をした。
まるで佐藤君から私のことを隠すように。
いや、私の前を歩こうとするように・・・。
「私は最上と申します、最上歩美。
私の祖母は小関の”家"の家政婦として亀さんと一緒に歩いてきました。
だから私も知っています、亀さんの苦しさも悲しさも虚しさも。
そのお饅頭に込めた亀さんの想いも。」
最上さんはゆっくりと佐藤君の所まで歩き、佐藤君の手から晃孝堂のお饅頭の箱を取り上げた。
そして本店の包装を丁寧に取っていく。
「亀さんはこのお饅頭に色々なモノを込めました。
ご主人様との愛も、照之さんとも愛も、そして・・・」
最上さんが晃孝堂のお饅頭を佐藤君に手渡し、柳瀬君にも手渡した。
加治さんにも、私にも手渡して・・・。
自分は誰よりも先にパクッと食べた。
「亀さんの愛もこのお饅頭に込めました。
普通の愛じゃないですよ、亀さんは万年先まで届く愛をこのお饅頭に込めた。
だから晃孝堂のお饅頭はこんなに美味しい。
あの凄いホテルの凄い人も一緒になって、このお饅頭を万年先まで残すと約束をしてくれたから、それはこんなに美味しいはずです。」
最上さんの言葉に加治さんもお饅頭をパクッと食べ、「お~いし~!!もう、これほんっっとに美味しいの!!」と悶えた。
それを見て、私も晃孝堂のお饅頭を食べた。
そしたら、美味しかった・・・。
晃孝堂のお饅頭はやっぱり美味しかった・・・。
おばあちゃんの愛が込められているから、それはやっぱり美味しかった・・・。
「加藤さん、大丈夫。
そのお饅頭を食べたらまた歩ける。
どんなに苦しくて悲しくて虚しいことがあっても、そのお饅頭を食べたらきっと思い出せるから。」
最上さんがそう言って、私の前にゆっくりと立った。
「亀さんが残した2人の男の人との愛の形は、このお饅頭だけです。
でもこのお饅頭こそが、亀さんがご主人様にも照之さんにも愛して貰ったという愛の形でもあります。
そしてその愛の形を亀さんの子孫が口にしていく。」
最上さんが私のことを見詰め、ニッコリと笑った。
その顔は全然似ていないのにアエさんの顔と重なる。
この強い強い瞳が、アエさんとこんなにも似ている。
「思い出して、加藤さん。
あなたは小関のご主人様にも奥様にも、一平さんにも一美さんにも、お父さんにもお母さんにもお兄さんにも深く深く愛されている。
そして亀さんも、孫である加藤さんのことを深く深く愛しています。
このお饅頭には亀さんの愛がめちゃくちゃ詰まっています。
万年先の加藤の"家”の子孫達にも届くくらいの愛が。
思い出して、加藤さん。
あなたはあの亀さんの血を受け継ぐ加藤望。
だから歩ける、どんなに苦しくて悲しくて虚しい道だとしても歩き続けられる。」
「うん・・・。」
「その身体もその心も疲れてしまった時にはこのお饅頭を食べましょう。
亀さんの愛がたっっっぷり入っているから、ほら・・・」
「「こんなに美味しい、こんなに元気になった。」」
最上さんと私の言葉が重なり、2人で笑った。
だって、こんなの何も言えない・・・。
加治さんも何も言わずに、立ち上がった佐藤君のことを黙って見上げていて。
”ヤバい、佐藤君がこんなに強い子だって2人に事前に説明するの忘れてた・・・。"
めちゃくちゃ後悔をしていたその時・・・
最上さんが力強い声で答えた。
「それで良いんですよ。
それ”が"良いんです。」
最上さんがそう言い切った後、私の身体を離して私の前にゆっくりと移動をした。
まるで佐藤君から私のことを隠すように。
いや、私の前を歩こうとするように・・・。
「私は最上と申します、最上歩美。
私の祖母は小関の”家"の家政婦として亀さんと一緒に歩いてきました。
だから私も知っています、亀さんの苦しさも悲しさも虚しさも。
そのお饅頭に込めた亀さんの想いも。」
最上さんはゆっくりと佐藤君の所まで歩き、佐藤君の手から晃孝堂のお饅頭の箱を取り上げた。
そして本店の包装を丁寧に取っていく。
「亀さんはこのお饅頭に色々なモノを込めました。
ご主人様との愛も、照之さんとも愛も、そして・・・」
最上さんが晃孝堂のお饅頭を佐藤君に手渡し、柳瀬君にも手渡した。
加治さんにも、私にも手渡して・・・。
自分は誰よりも先にパクッと食べた。
「亀さんの愛もこのお饅頭に込めました。
普通の愛じゃないですよ、亀さんは万年先まで届く愛をこのお饅頭に込めた。
だから晃孝堂のお饅頭はこんなに美味しい。
あの凄いホテルの凄い人も一緒になって、このお饅頭を万年先まで残すと約束をしてくれたから、それはこんなに美味しいはずです。」
最上さんの言葉に加治さんもお饅頭をパクッと食べ、「お~いし~!!もう、これほんっっとに美味しいの!!」と悶えた。
それを見て、私も晃孝堂のお饅頭を食べた。
そしたら、美味しかった・・・。
晃孝堂のお饅頭はやっぱり美味しかった・・・。
おばあちゃんの愛が込められているから、それはやっぱり美味しかった・・・。
「加藤さん、大丈夫。
そのお饅頭を食べたらまた歩ける。
どんなに苦しくて悲しくて虚しいことがあっても、そのお饅頭を食べたらきっと思い出せるから。」
最上さんがそう言って、私の前にゆっくりと立った。
「亀さんが残した2人の男の人との愛の形は、このお饅頭だけです。
でもこのお饅頭こそが、亀さんがご主人様にも照之さんにも愛して貰ったという愛の形でもあります。
そしてその愛の形を亀さんの子孫が口にしていく。」
最上さんが私のことを見詰め、ニッコリと笑った。
その顔は全然似ていないのにアエさんの顔と重なる。
この強い強い瞳が、アエさんとこんなにも似ている。
「思い出して、加藤さん。
あなたは小関のご主人様にも奥様にも、一平さんにも一美さんにも、お父さんにもお母さんにもお兄さんにも深く深く愛されている。
そして亀さんも、孫である加藤さんのことを深く深く愛しています。
このお饅頭には亀さんの愛がめちゃくちゃ詰まっています。
万年先の加藤の"家”の子孫達にも届くくらいの愛が。
思い出して、加藤さん。
あなたはあの亀さんの血を受け継ぐ加藤望。
だから歩ける、どんなに苦しくて悲しくて虚しい道だとしても歩き続けられる。」
「うん・・・。」
「その身体もその心も疲れてしまった時にはこのお饅頭を食べましょう。
亀さんの愛がたっっっぷり入っているから、ほら・・・」
「「こんなに美味しい、こんなに元気になった。」」
最上さんと私の言葉が重なり、2人で笑った。
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