【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました！

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苦しそうな顔で私のことを止めてくる庄司さんの言葉に従うことなく私は続ける。



「そして久しぶりに、奥さんが庄司さんのことを見た。
久しぶりに奥さんが自分のことを見てくれて庄司さんは凄く嬉しくて。
凄く凄く、幸せで。
“これからもずっと、奥さんとこの場所で2人で過ごしたい“と、”例え自分との子どもを望んで貰えなくても、奥さんの手に触れることさえ出来なくても、これからもずっと2人でこの場所で同じ時を過ごしていきたい“と、庄司さんはそう思って・・・」



「加藤さん、もういいから。」



「庄司さんはそう思っていたのに、奥さんは口を開いた。
”こんな関係、終わりにしたい。“」



「加藤さん。」



「”私・・・」



”愛してる人がいるの。“



そう続けようとした時、会議室の扉がノックされた。



「はい。」



すぐに返事をした庄司さんの顔はめちゃくちゃホッとした顔をしていて、それには思わず笑ってしまいそうになったのでまたミルクティーを飲む。



私はミルクティーを飲みながら、開いていく会議室の扉を眺める。



何気なく、眺める。



そしたら、分かった。



会議室の扉が開きソコにいる女の子を見た瞬間、あんなにホッとしていたはずの庄司さんが一気に緊張したのが。



会議室中の空気がピリッとするくらい強い感覚だったので分かった。



この数日、庄司さんのことをたまに観察していたから知っている。



庄司さんが女嫌いだということを知っている。



私は知っている・・・。



女嫌いな庄司さんだけど、この女の子だけには少しだけ気を許していたことを知っている。



「鈴木さん・・・。」



私がその女の子の名前を呟くと、女の子は愛嬌のある可愛らしい笑顔で私のことを見た。



この前気になった女の子だったから私はあの後酒井さんにだけではなく青さんからも聞いた。



この女の子は鈴木さん。



ついこの前まで、新しい支社の立ち上げの為に庄司さんと一緒に長期出張に行っていた女の子。



この女の子も大月ホテルの本社から転職をしてきた女の子。



普通の転職ではない。



青さんが引き抜いた庄司さんが連れてきたという女の子。



大月学園出身の、女の子・・・。



私が後から聞いた話だと、”あの時“、庄司さんから大月旦に声を掛けることはなかったそう。
そして大月旦もうちの女の社員達に囲まれ庄司さんには気付かなかったらしい。



そんな中、この女の子が大月旦に声を掛けたらしい。



”旦さん！！“と、めちゃくちゃ親しそうに声を掛けたらしい。



そんなこの女の子に大月旦はめちゃくちゃ驚いた顔をし、呟いた。



”鈴木月姫(かぐや)さん・・・。“



と、この女の子のことをフルネームで呼んで。



それから勢い良く社内に視線を移した瞬間、庄司さんが大月旦に声を掛けたらしい。



「部長、もう終わりにしてください！」



鈴木さんがそう言って、人差し指で床を指差した。



「この会議室の予約時間がちょこっと過ぎてますよ！」



「この後の此処の予約はどうなってる？」



「30分後に予約が入ってますね。」



「30分延長で。」



「私がやっておきますか？」



「俺がコレでやっておく。」



ノートパソコンに何かを打ち込む音を聞きながら、私は出ていこうとする鈴木さんに声を掛けた。



「月姫って凄い名前だよね！！
いつか大月に戻るの？」



そう聞いた私に鈴木さんは笑顔で答えた。



「そうですね、私は晴子さんの所に戻ります。」



”大月“ではなく”晴子さん“の所に戻ると鈴木さんはハッキリとした声で、そう言った。