【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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お母さんのその言葉には首を傾げる。



「お父さんが駄々をこねたの?」



「そうね・・・20代とかそんなに早くお嫁にいかせたくないって。
それに、小町が30歳の立冬の日にもお父さんの覚悟も足りていなかった。
武蔵君のことを“あの子”としか呼べないくらいに。」



まだシクシクと泣き続けているお父さんを見て、もう何て声を掛けていいのか分からない。



「代々期限ギリギリまで掛かってしまうけど、まさか期限を延期する事態になるとは思わなかったわ。
複雑にはしたけれど、まさかここまでの剣豪だとは思わなくて。」



お母さんが困った顔で笑いながら武蔵を見ている。



「その一刀で勝ち取ったわね。
相川薬品まで持ち出してきたのも予想外だった。」



「隼人さんのお陰であちらと繋がりがありましたから。」



「そうね、隼人ね。」



お母さんが小さく笑いながら今度は私を見てきた。



「加賀の本家の一人娘、その結婚相手となる条件。
それは、その一人娘の為だけにどんな武器でも使い結婚の申し込みをしてくること。」



それは私も今朝分かった。
武蔵の夢を見て、研ぎ澄まされた器で考えたら分かった。



「だから代々、わざと複雑にしているの。
1人しか産まれないからね、女の子が1人だけ。
その女の子の為に、その女の子の為だけに、どんな武器でも使って勝ち取れるような人でないといけないの。
そうでなければ闘い抜けないから、この厳しい戦をね。
そして、1番の大切な条件・・・」



お母さんが言葉を切ってから、私を見詰めた・・・。



「加賀の本家の一人娘が、秋の夜長に恋の夢を見せる相手であること。」
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