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「夏生?そろそろ行かないと。」




夏休みが終わり、最初の授業の日。
リビングの全身鏡で何度も鏡を確認する私に、シューが言ってくる。




「シュー・・・、変じゃないよね?」




鏡の中の自分を見る。
まだ上手にヘアセットや化粧が出来ないので、シューにやってもらった。
膝の下よりもっと長い、薄い青のノースリーブニットのワンピースを、サラリと着た。
タイトでも少しゆとりのあるワンピース。
それでも、程よい位置で膨らむ胸、くびれ、キュッと上がるお尻の形は、下品になりすぎない程度に分かる。
そして、大きめのシルバーのイヤリングが私の耳で揺れる。




「すごい似合ってるよ。」




誰よりも可愛い顔が、笑いながら鏡の前の私に近付く。





「怖い・・・?」




私よりも少し目線が高いシューが、優しく笑いながら聞いてくれる。





「怖い・・・。」





頑張ってお洒落をした私に、大好きだった先輩が大笑いしながら、「似合わない格好」と言ったのを思い出す。





怖くて仕方なくなり、私は随分と細く、柔らかくなった自分の腕を両手で抱き締める。






「夏生・・・」





シューが、両手で私の頬を包んだ。





恐怖で泣きそうになり、そんな私の顔をシューが少し持ち上げる。






「夏生、泣かない・・・。」




「え・・・?」




「泣かない、笑え。」




「シュー・・・」




「笑え、夏生。」





誰よりも可愛い顔で、私が昔よく自分に掛けていた“おまじない”をシューが言ってくれる。





「誰にも文句を言わせないくらい、可愛い女の子になっておいで。」
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