しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。

西友

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「ほら、時間なくなるよ?」

 璃空は背中をぽんぽんと叩かれ、渋々優斗から離れた。

 手洗いとうがいをすませ、奥の洋室に向かう。

 薄茶色の絨毯の上に、長方形のガラスのテーブルがあり、そこには2人分のカレーとサラダが並べられていた。

「食べようか」

 頷き、優斗の隣に腰を下ろす、目の前にはテレビが。背後にはベッドがあり、そこにもたれるような形で並んで座る。

 そこが、2人の定位置だった。
 
「璃空。今日も夜までバイトでしょ? 迎えにいくから、一緒に帰ろう。絶対、一人で帰ったら駄目だよ」

 カレーを口に含み、もごもごと口を動かす璃空に、優斗がいつものように念をおす。

 璃空は、平日は居酒屋。土日はコンビニでバイトをしている。

 居酒屋はここからだと少し距離があり、大抵は夜中までシフトを入れている。
 
 それを知った優斗は危ないからと、ほとんど毎日のように迎えにきてくれている。

 流石にそれは悪いと何度も断ったが、優斗は聞き入れてくれなかった。こういったことに関してだけ、優斗は頑固になる。

 申し訳なさからか、顔を曇らせる璃空に、優斗が笑う。

「俺が好きでやっていることだから。璃空は気にしなくていいんだよ」

 先に食べ終わった優斗が、立ち上がりながらこともなげに言う。

 そのまま、食器を流しに運ぶため、キッチンに向かった。

 その背中をじっと見る。

 ああ、もう。この男は本当に、たちが悪いぐらい甘やかすのがうまい。

 表情を読み取り、欲しい言葉をくれる。こちらが気をつかう隙を与えてくれない。

「優斗は今日、バイト休みだっけ」

 キッチンに声を投げかける。蛇口をひねる音がした。

「うん。木曜は定休日だからね」

 璃空が僅かに眉を潜める。

 優斗のバイト中の姿が脳裏に浮かんだ。

 優斗は喫茶店で、ウエイターとして働いている。白のワイシャツの上に、襟付きの黒のベストに、黒のズボン。そして、ネクタイ。その喫茶店の制服は、優斗にとても似合っている。

 似合っているが故に、優斗目当ての女が連日集まってくる。窓越しだが、優斗には内緒で一度見に行ったことがあった。

 そこには、他人に笑顔をふりまく優斗がいた。客商売なのだから、当然のことではある。

 あるのだが、決して気分がいいものではなかった。

 そして、不安になった。

 もてるのは知っていたが、現実として目の当りにし、ひどく落ち込んだのを覚えている。

 璃空は、自分に自信なんてこれっぽっちもない。


 それでもこうして遠慮なしに甘えられるのは、覚悟しているからだ。
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