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番外編③
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「──兄さん。俺ね、はじめて好きな人ができたんだ」
やだ。
優斗の科白に、先ほどまでのやり取りを忘れ、佳菜子は照れたように笑った。
「それって、わたしのことでしょ?」
──ドカッ!!!
佳菜子の顔のすぐ傍を横切り、背後にある玄関のドアに勢いよくぶち当たって床に落ちたのは。
「すみません。手が滑って、スマホが飛んでいってしまいました」
優斗以外の三人が固まる。優斗は見惚れるほど、綺麗に微笑んでいた。
「お前……明らかに振りかぶって投げていただろうが」
青ざめる博斗に「やだな、兄さん。証拠でもあるの? 写真でも撮った?」とにこやかに返す。
それはともかく。
優斗は仕切り直した。
「好きな人ができたからこそ、余計に分からない。どうして好きな人が浮気をしているのに平気でいられるのか。他の誰かに、指一本だって触れてほしくない。それが愛しているってことじゃないの?」
博斗が僅かに目を見張る。その隣で、佳菜子が青ざめながら怒鳴った。
「──博斗さん! 怒ってよ! もし当たってたらケガしてたのよ?!」
「そうですね。俺も、好きな人が同じ目に合わされたらまず怒りますね」
しれっと優斗が同意する。
それが余計に佳菜子の怒りを上昇させた。だが、視線を向けた優斗の双眸があまりにも冷たく、先程の恐怖が甦ってきた佳菜子は小さな悲鳴を上げながらドアの外へと姿を消した。
「……女だからって、あの人相手に言葉だけで説得しようとしていたのが間違いだったのかな」
ふう。
優斗は息を吐き、博斗を見た。
「殴っていいよ。理由はどうであれ、兄さんの好きな人を怖い目に合わせた。俺なら絶対、許せないから」
「──そんな必要ないだろ!?」
止めさせようと、足を一歩前に動かした璃空だったが「……いや、いい」と博斗が静かに呟いたので、動きを止めた。
「思えば、お前とこんな風に言い合いをしたのは、はじめてだったな」
くるりと踵を返し、ドアノブを掴む。そのまま、博斗は顔だけ優斗の方へ向けた。
「正直、お前のことは未だに好かんが」
数秒の間のあと、博斗は口を開いた。
「何と言うか──人間らしくなったな」
少しだけ口元を緩め、博斗は部屋を出て行った。
璃空が、背後から優斗に視線を送る。どんな表情をしているのかは、分からない。でも。
その背中は、少しだけ寂しそうにも見えた。
やだ。
優斗の科白に、先ほどまでのやり取りを忘れ、佳菜子は照れたように笑った。
「それって、わたしのことでしょ?」
──ドカッ!!!
佳菜子の顔のすぐ傍を横切り、背後にある玄関のドアに勢いよくぶち当たって床に落ちたのは。
「すみません。手が滑って、スマホが飛んでいってしまいました」
優斗以外の三人が固まる。優斗は見惚れるほど、綺麗に微笑んでいた。
「お前……明らかに振りかぶって投げていただろうが」
青ざめる博斗に「やだな、兄さん。証拠でもあるの? 写真でも撮った?」とにこやかに返す。
それはともかく。
優斗は仕切り直した。
「好きな人ができたからこそ、余計に分からない。どうして好きな人が浮気をしているのに平気でいられるのか。他の誰かに、指一本だって触れてほしくない。それが愛しているってことじゃないの?」
博斗が僅かに目を見張る。その隣で、佳菜子が青ざめながら怒鳴った。
「──博斗さん! 怒ってよ! もし当たってたらケガしてたのよ?!」
「そうですね。俺も、好きな人が同じ目に合わされたらまず怒りますね」
しれっと優斗が同意する。
それが余計に佳菜子の怒りを上昇させた。だが、視線を向けた優斗の双眸があまりにも冷たく、先程の恐怖が甦ってきた佳菜子は小さな悲鳴を上げながらドアの外へと姿を消した。
「……女だからって、あの人相手に言葉だけで説得しようとしていたのが間違いだったのかな」
ふう。
優斗は息を吐き、博斗を見た。
「殴っていいよ。理由はどうであれ、兄さんの好きな人を怖い目に合わせた。俺なら絶対、許せないから」
「──そんな必要ないだろ!?」
止めさせようと、足を一歩前に動かした璃空だったが「……いや、いい」と博斗が静かに呟いたので、動きを止めた。
「思えば、お前とこんな風に言い合いをしたのは、はじめてだったな」
くるりと踵を返し、ドアノブを掴む。そのまま、博斗は顔だけ優斗の方へ向けた。
「正直、お前のことは未だに好かんが」
数秒の間のあと、博斗は口を開いた。
「何と言うか──人間らしくなったな」
少しだけ口元を緩め、博斗は部屋を出て行った。
璃空が、背後から優斗に視線を送る。どんな表情をしているのかは、分からない。でも。
その背中は、少しだけ寂しそうにも見えた。
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