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勇者(3)
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「剣闘士のガイウスだ。よろしく頼む」
それからガイウスの短い自己紹介を聞いて、勇者パーティの顔合わせは終了した。
認識疎外の魔法がかかった銀仮面をつけているおかげで、ガイウスにはマーリンの正体がマリアンヌ・カーティスであることには気がついていないようだった。
かつては王宮近衛騎士の部隊長であったガイウスの顔には意外なほどに奴隷となったことへの不満は見られず、影が差しているもののどこかスッキリしている。
「・・・彼なりに私を殺した罪を償おうとしているのでしょうか。悪人だとは思っていませんでしたが」
「ふんっ、どんな理由があろうとマリアンヌを殺そうとしたことには変わりはあるまい! この旅が終わったら私の雷で消し炭にしてやろう!」
フュルフールが憎々しげに胸を張る。
そんな契約悪魔を背中に引き連れて、マーリンは聖地ユートピアから出て行った。あえて飛行魔法を使うことなく街道をトボトボと歩きながら、ぼんやりと物思いにふける。
勇者パーティの出発はいまから1週間後。それまでに各々旅の準備を整えて、再び合流して北の魔族領へと向かう予定である。
ちなみに、少年勇者のアーサーはなぜかマーリンについてこようとしていたのだが、当然のようにフュルフールがその同行を許すことはなく、聖剣の調整もあるとのことでライナからも止められていた。
「なあ、今からでも辞めにしないか? あんな連中とマリアンヌが絡むことはない!」
「何をいまさら・・・勇者パーティに参加することを勧めていたのは、フュルも同じではないですか」
「あんなマセたガキがいると知っていたら勧めなかった! 私のマリアンヌを卑猥な目で見やがって! 次に会ったら雷を落としてやる!」
「仲間割れはやめてくださいね? これから一緒に旅をする仲間なんですから」
不機嫌そうに火花を散らせるフュルフールの様子を見て、マーリンは困ったように苦笑いをした。
「それにしても・・・仲間。仲間ですか」
ふと自分の口から洩れた言葉に、マーリンは目を伏せた。
故郷を捨てて、家族を捨てて。全てを奪われ、あるいは捨てて。魔女となって実の妹すらも打ち破った自分に、まさか仲間と呼べる相手ができようとは。
(復讐の果てに無残に倒れるのが私の末路だと思っていたのですが・・・これでは簡単に倒れることはできませんね)
マーリンが命を投げ出すようなことをすれば、勇者パーティのメンバーにそのシワ寄せを押し付けることになるだろう。
もはや自分の命は一人のものではない。この肩には大陸中の人間の命運がかかっているのだ。
「人生とはわからないものですね。まさか、この私にこんな運命が待っているなんて」
侯爵令嬢として生を受けて、王太子の婚約者となって。
婚約破棄をされて陰謀により抹殺されそうになり、悪魔と契約をして魔女になった。
それから復讐の旅路に入り、戦い続けている。
「たった一年でこんなに人生が動くなんて・・・本当に数奇な運命ですこと」
もはや女神を呪えばいいのか、いまだに生きながらえていることを感謝すればいいのか。マーリン自身もわからなくなってしまった。
「どんな人生だろうと、過酷な運命であろうと、私は最後まで一緒にいよう。契約悪魔で、恋人だからな!」
「フュル・・・」
フュルフールが力強くも優しくマーリンの身体を抱きしめる。
悪魔の身体には体温はない。その身体に温かみは感じられない。
それなのに、マーリンは不思議なほどに己の心がぬくもりに包まれていくのを感じた。
「これからも一緒だぞ、マリアンヌ」
「ええ、一緒ですね。フュル、私の素敵な旦那様」
フュルフールの力強い笑みに、マーリンは穏やかにほほ笑んだ。
それからガイウスの短い自己紹介を聞いて、勇者パーティの顔合わせは終了した。
認識疎外の魔法がかかった銀仮面をつけているおかげで、ガイウスにはマーリンの正体がマリアンヌ・カーティスであることには気がついていないようだった。
かつては王宮近衛騎士の部隊長であったガイウスの顔には意外なほどに奴隷となったことへの不満は見られず、影が差しているもののどこかスッキリしている。
「・・・彼なりに私を殺した罪を償おうとしているのでしょうか。悪人だとは思っていませんでしたが」
「ふんっ、どんな理由があろうとマリアンヌを殺そうとしたことには変わりはあるまい! この旅が終わったら私の雷で消し炭にしてやろう!」
フュルフールが憎々しげに胸を張る。
そんな契約悪魔を背中に引き連れて、マーリンは聖地ユートピアから出て行った。あえて飛行魔法を使うことなく街道をトボトボと歩きながら、ぼんやりと物思いにふける。
勇者パーティの出発はいまから1週間後。それまでに各々旅の準備を整えて、再び合流して北の魔族領へと向かう予定である。
ちなみに、少年勇者のアーサーはなぜかマーリンについてこようとしていたのだが、当然のようにフュルフールがその同行を許すことはなく、聖剣の調整もあるとのことでライナからも止められていた。
「なあ、今からでも辞めにしないか? あんな連中とマリアンヌが絡むことはない!」
「何をいまさら・・・勇者パーティに参加することを勧めていたのは、フュルも同じではないですか」
「あんなマセたガキがいると知っていたら勧めなかった! 私のマリアンヌを卑猥な目で見やがって! 次に会ったら雷を落としてやる!」
「仲間割れはやめてくださいね? これから一緒に旅をする仲間なんですから」
不機嫌そうに火花を散らせるフュルフールの様子を見て、マーリンは困ったように苦笑いをした。
「それにしても・・・仲間。仲間ですか」
ふと自分の口から洩れた言葉に、マーリンは目を伏せた。
故郷を捨てて、家族を捨てて。全てを奪われ、あるいは捨てて。魔女となって実の妹すらも打ち破った自分に、まさか仲間と呼べる相手ができようとは。
(復讐の果てに無残に倒れるのが私の末路だと思っていたのですが・・・これでは簡単に倒れることはできませんね)
マーリンが命を投げ出すようなことをすれば、勇者パーティのメンバーにそのシワ寄せを押し付けることになるだろう。
もはや自分の命は一人のものではない。この肩には大陸中の人間の命運がかかっているのだ。
「人生とはわからないものですね。まさか、この私にこんな運命が待っているなんて」
侯爵令嬢として生を受けて、王太子の婚約者となって。
婚約破棄をされて陰謀により抹殺されそうになり、悪魔と契約をして魔女になった。
それから復讐の旅路に入り、戦い続けている。
「たった一年でこんなに人生が動くなんて・・・本当に数奇な運命ですこと」
もはや女神を呪えばいいのか、いまだに生きながらえていることを感謝すればいいのか。マーリン自身もわからなくなってしまった。
「どんな人生だろうと、過酷な運命であろうと、私は最後まで一緒にいよう。契約悪魔で、恋人だからな!」
「フュル・・・」
フュルフールが力強くも優しくマーリンの身体を抱きしめる。
悪魔の身体には体温はない。その身体に温かみは感じられない。
それなのに、マーリンは不思議なほどに己の心がぬくもりに包まれていくのを感じた。
「これからも一緒だぞ、マリアンヌ」
「ええ、一緒ですね。フュル、私の素敵な旦那様」
フュルフールの力強い笑みに、マーリンは穏やかにほほ笑んだ。
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