ペンギン転生 異世界でペンギンになったが美少女に飼われたので別に良い

レオナール D

文字の大きさ
9 / 41

第9話 バラエティでたまに見る冷たいやつ

しおりを挟む

「……それじゃあ、そういうことで。しっかりと自習しておくように」

 半年ぶりに高校に行った俺であったが、学年主任を含めた何人かの教員に挨拶をしてから自習室に通された。
 本来であれば通うことになる教室は大量行方不明事件の調査のため、いまだに閉鎖されているとのことである。
 そのため、課題を与えられて自習室で過ごすことになった。

「……まあ、別に苦労もしないんだけど」

 家では腐るほど時間があったため、勉強は山ほどしていた。
 正直、学校の授業よりも勉強自体は進んでいる。出された課題も問題なくこなしており、授業時間の半分が残っていた。

「フア……眠た……」

 琥珀は大きなアクビをして、机に頬杖をついた。

 久しぶりの学校であったが……正直、拍子抜けしている部分が強い。
 教員も勝手に長期休暇を取っていた琥珀を叱りつけたりはしなかった。おそらく、厳しくしたらまた引きこもってしまうと判断したのだろう。
 自分をイジメていた連中もいない。彼らは全員、異世界に旅立っているのだから。

「さて……どうしようかな」

 残りの授業時間をどう過ごせばいいだろう。
 いっそのこと、居眠りでもしてしまおうかと考えていると……ガラリと扉が開く。

「ッ……!」

 教員が入ってきたのかと慌てて姿勢を正す琥珀であったが、自習室に入ってきたのはブレザーを着た男子生徒だった。

「お、いたぞ。本当に登校してきてたみたいだな!」

「…………?」

 自習室に入ってきたのは三人組の男子生徒である。
 いずれも名前は知らないが、顔だけは見覚えがあった。おそらく、他クラスの同級生だろう。

「お前が水島だな? ちょっと付き合えよ」

 ブレザーを着崩した男子生徒が琥珀をジロリと睨みつけ、教室の外に来るように促してくる。

「えっと……何か用かな?」

「いいから来いって言ってんだよ! 口答えしてんじゃねえよ!」

「…………!」

 男子生徒が怒鳴り散らす。
 その態度だけで、琥珀に対して良い感情を持っていないのがわかった。

(どうする……本当についていっても良いのか?)

 良いわけがない。
 ずっとイジメられていた経験からわかる。彼らは琥珀のことを人気のない所に連れていき、良からぬことをするつもりなのだ。
 暴行かカツアゲか……嫌な思い出がよみがえってきて、吐き気すら催してくる。

「い、いやだ……!」

「あ?」

「絶対についていかない……用事があるならここで話せよっ!」

 それはせめてもの抵抗。琥珀の精いっぱいの勇気だった。
 以前の琥珀であれば言葉も出せずに唯々諾々と従っていただろうに、今日は反発することができたのだ。

(どうして僕がこんな強気なことを……もしかして、これもヘリヤさんのおっぱいのおかげなのか!?)

 錯乱してそんなことを考えている琥珀であったが、実のところ、それはさほど的外れとも言えないことである。
 童貞を卒業した男性が無駄に自信をみなぎらせるように、琥珀はヘリヤに召喚されてアレコレとした経験により、男として一回り成長をしていた。
 目の前にいる三人の男子生徒はいずれも体格が合って腕力も強そうだが、彼らは自分の身体を絡めるようにして女子を洗った経験などあるまい。
 二十人の女子生徒と一緒に風呂に入ったこともないだろう。

(そうだ……コイツらはあのパラダイスを知らない。あんな体験をしたのは僕だけなんだ……!)

「へえ……良い度胸じゃねえか」

 自分が大きくなったような気がして反抗する琥珀に、男子生徒の一人がピキリと額に青筋を浮かべた。

「どうやら、痛い目を見なくちゃわからないみたいだな! そんなに殴られてえなら望み通りにしてやるよ!」

「ヒエッ……!」

 男子生徒がいきり立ち、琥珀めがけて掴みかかってきた。

(殴られる……!)

 琥珀の脳裏にクラスの男子から暴力を振るわれた光景がフラッシュバックする。
 迫りくる拳に琥珀は過去のトラウマを呼び起こしてしまい、恐慌に襲われた。

「ふ、フロストバースト!」

 恐怖がトリガーになったのか、その言葉が自然と口から飛び出した。

「うおっ……!?」

 琥珀の口から飛び出した青白い冷気の塊をまともに喰らい、男子生徒は吹き飛ばされて床に転がる。
 同時に、驚きのあまり琥珀もまた尻もちをついてしまった。

「おい、坂木!」

「何やってんだよ!」

 二人の男子が慌てて倒れた少年に駆け寄る。

「い、いや……なんかスゲエ冷たいのが……痛っ!」

「坂木!?」

「痛っ……いったい、何が……!」

 坂木と呼ばれた男子生徒が顔面を抑える。

「な、何だこりゃ……」

 坂木の顔から首にかけて真っ白な霜が貼り付いていた。まるでバラエティ番組の罰ゲームで冷却ガスを浴びせられたかのように。
 凍傷の痛みに襲われたのか、坂木が床で悶絶する。

「痛え、痛えよ……畜生、何をしやがった……!」

「えっと……」

 琥珀もまた尻もちをついた姿勢のまま困惑する。
 まさか、本当に冷気の塊が出てくるとは思わなかった。思わず使ってしまったが完全に予想外の事態である。

(スキルって……日本でも使えるのか!?)

 召喚獣として異世界に召喚されている時でさえ使っていないスキルを、何故か現代日本で使ってしまった。
 いったい自分は何をやっているのだと琥珀は困惑する。

「お前ら、何をやってる!?」

 騒ぎを聞きつけたのか、男性教師が自習室に入ってきた。
 大柄な男性教師は尻もちをついている琥珀と三人組の男子を交互に見て、眉尻を吊り上げる。

「授業はどうした? 何で自習室に入ってきている?」

「う……」

 その言葉は三人組に向けられたものである。
 いかにも強面な教師に睨まれて、三人組が表情を強張らせた。

「い、いや、この顔! これを見てくれよ!」

 坂木が顔を手で押さえながら、反対側の手で琥珀を指差す。

「そいつにやられたんだよ! こっちが被害者だ!」

「何だ? お前、そんなチョークの粉・・・・・・なんて被ってふざけてるのか?」

「は……?」

「さっさと水道で流してこい! それが終わったら、三人とも生徒指導室に来るように!」

 勘違いしたらしい男性教師は琥珀を振り向き、「水島は課題を続けておけ」と言い置いてから自習室から出ていった。
 三人組は連れていかれてしまい、自習室には琥珀だけが残されたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...