ペンギン転生 異世界でペンギンになったが美少女に飼われたので別に良い

レオナール D

文字の大きさ
39 / 41

第39話 ハイテンションの代償

しおりを挟む

「あーあ、やりすぎた……」

 やりすぎた。
 完全にテンションがおかしかった。
 ワームとの戦いが尾を引いているのだろう……ついつい、使う必要のない飛行スキルまで披露してしまった。

(自分でも思っている以上に調子に乗ってるのかな? 良くない、良くないぞ)

 反省する琥珀であったが……調子に乗ったツケをすぐに支払うことになった。

「えー……今日からクラスメイトになった水島琥珀君だ。仲良くするように」

「…………」

 新しいクラスに配属された琥珀は、朝のホームルームで教師から紹介を受けていた。
 二十代後半くらいの男性教師は気怠そうに琥珀を紹介する。

「…………」

 しかし、琥珀はそんなことはどうでも良かった。
 そんなことよりも、教室の後ろの席に座っている女子生徒の視線が痛かった。

(ま、まさかクラスメイトだとは思わなかった……)

 そこにいたのは、先ほど助けたばかりの女の子だった。
 長い黒髪の女子生徒が刺すようにガン見してくるのがわかる。
 琥珀は必死になって、彼女から視線を逸むける。

「あー……前のクラスの連中が集団で行方不明になったっぽいけど、余計な詮索はしないようにな。水島君はその日、学校を休んでいたみたいだから、聞いても何もわからないからな。くれぐれも、おかしなことを言うなよー」

 琥珀が緊張しているのに構わず、担任教師が話を続けている。

「それじゃあ、水島君の席は一番後ろの開いている席だな。座ってくれ。授業始めるぞー」

「…………」

 おまけに、指定されたのは彼女の隣の席だった。
 琥珀は顔が引きつらないように必死になって自制心を働かせ、開いている席に向かっていく。

「……よろしく」

「よ、よろしく」

 席に着くや、隣の彼女が話しかけてきた。
 ついつい動揺が表に出てしまい、引きつった声になってしまう。

(やってしまった……まさか、クラスメイトだったとは……!)

 琥珀は顔が歪まないように必死になって堪える。

 完全に油断していた。
 自分と同じ学校の制服を着ているのだから、クラスメイトや同級生である可能性は十分あったのに。
 わざわざ不良達を叩きのめして、わざわざ飛行スキルを使って空を飛んで立ち去って。
 今、思い出してみると「僕は馬鹿なのか」と罵りたくなるようなことを仕出かしている。

(完全に調子に乗っていた……誰か、僕のことを殴ってくれ……!)

「…………」

 隣の席から、しっとりとした視線が突き刺さる。
 明らかに怪しんでいる。
 確信を持てないまでも、自分を不良から助けてくれたヒーローではないかと疑っている顔だった。

(勘弁してよ……)

 久しぶりの授業であったが、内容が全然入ってこなかった。
 幸い、家で引きこもっていたときにはやることがなくて勉強ばかりしていた。
 授業に遅れることはなかったが……だからこそ、隣からの視線が気になってしまう。

「…………」

「うう……」

 結局、気まずい空気は放課後まで続いた。
 いっそのこと、何か話しかけてくれれば良いものを。
 隣の女子は見つめてくるばかりであり、問い詰めてくることはなかった。

 彼女の雪乃司という名前であることを知ったのは、放課後になってからのことである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...