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第39話 ハイテンションの代償
しおりを挟む「あーあ、やりすぎた……」
やりすぎた。
完全にテンションがおかしかった。
ワームとの戦いが尾を引いているのだろう……ついつい、使う必要のない飛行スキルまで披露してしまった。
(自分でも思っている以上に調子に乗ってるのかな? 良くない、良くないぞ)
反省する琥珀であったが……調子に乗ったツケをすぐに支払うことになった。
「えー……今日からクラスメイトになった水島琥珀君だ。仲良くするように」
「…………」
新しいクラスに配属された琥珀は、朝のホームルームで教師から紹介を受けていた。
二十代後半くらいの男性教師は気怠そうに琥珀を紹介する。
「…………」
しかし、琥珀はそんなことはどうでも良かった。
そんなことよりも、教室の後ろの席に座っている女子生徒の視線が痛かった。
(ま、まさかクラスメイトだとは思わなかった……)
そこにいたのは、先ほど助けたばかりの女の子だった。
長い黒髪の女子生徒が刺すようにガン見してくるのがわかる。
琥珀は必死になって、彼女から視線を逸むける。
「あー……前のクラスの連中が集団で行方不明になったっぽいけど、余計な詮索はしないようにな。水島君はその日、学校を休んでいたみたいだから、聞いても何もわからないからな。くれぐれも、おかしなことを言うなよー」
琥珀が緊張しているのに構わず、担任教師が話を続けている。
「それじゃあ、水島君の席は一番後ろの開いている席だな。座ってくれ。授業始めるぞー」
「…………」
おまけに、指定されたのは彼女の隣の席だった。
琥珀は顔が引きつらないように必死になって自制心を働かせ、開いている席に向かっていく。
「……よろしく」
「よ、よろしく」
席に着くや、隣の彼女が話しかけてきた。
ついつい動揺が表に出てしまい、引きつった声になってしまう。
(やってしまった……まさか、クラスメイトだったとは……!)
琥珀は顔が歪まないように必死になって堪える。
完全に油断していた。
自分と同じ学校の制服を着ているのだから、クラスメイトや同級生である可能性は十分あったのに。
わざわざ不良達を叩きのめして、わざわざ飛行スキルを使って空を飛んで立ち去って。
今、思い出してみると「僕は馬鹿なのか」と罵りたくなるようなことを仕出かしている。
(完全に調子に乗っていた……誰か、僕のことを殴ってくれ……!)
「…………」
隣の席から、しっとりとした視線が突き刺さる。
明らかに怪しんでいる。
確信を持てないまでも、自分を不良から助けてくれたヒーローではないかと疑っている顔だった。
(勘弁してよ……)
久しぶりの授業であったが、内容が全然入ってこなかった。
幸い、家で引きこもっていたときにはやることがなくて勉強ばかりしていた。
授業に遅れることはなかったが……だからこそ、隣からの視線が気になってしまう。
「…………」
「うう……」
結局、気まずい空気は放課後まで続いた。
いっそのこと、何か話しかけてくれれば良いものを。
隣の女子は見つめてくるばかりであり、問い詰めてくることはなかった。
彼女の雪乃司という名前であることを知ったのは、放課後になってからのことである。
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