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第四十二話:イーディス・ピルスナー
しおりを挟む私達の牢屋の前に現れた令嬢は褐色の肌に白い髪をしていた。
確かに、珍しい色の肌と髪だ。前王に紹介するという話も本当だろう。
スタイルはそこそこいいが、クリスティーナ様と比べると…いや私と比べても少し胸は、あまり無いようだが。
「共倒れした哀れなお貴族様は仲がよろしい事で」
「イーディス…」
この人がイーディス・ピルスナー辺境伯令嬢。
「これからのあなた達の予定を教えてあげようと思ってね」
「予定?そんな悠長なことをいってられるのかしら?」
「問題ないわ。アキレスとウォルターは私のしたい事なら、なんでもしてくれるから」
「そう、甘えん坊なのね」
「っ、このっ」
少しの言葉でイーディスは怒りをあらわにした。
ウォルターとはウォルター・ピルスナー辺境伯だろう。
武力と自領の発展だけに重きを置いた辺境伯だとクリスティーナ様から説明された。
しかし…
私はクリスティーナ様とイーディスを見比べる。
ボロボロだが綺麗な姿勢を保っているクリスティーナ様。
対して、一応形にはなっている程度のイーディス。どちらが王妃に相応しいかなど明らかだ。
「こんな事をしても王妃にはなれませんよ!」
「ん?ああ、王妃ね。いいわよそんなの面倒くさい」
「え?」
私は思わず声を上げた。
「私、責任って嫌いなのよね。面倒だし。私はこの辺境で自由に暮らすわ」
「なら、なんでこんな…」
「だってムカつくじゃない?私よりもいい生まれの女。それも善人みたいなフリして。あんた達貴族が贅沢できるのも私達みたいな孤児から搾取してるからでしょ?見下しちゃってさぁ。だからあんた達が自由にやって来たように、私も自由にやってやろうと思ったの」
「そんな、勝手な…」
今や責任を負う立場の人間が、責任を放棄し、相手を貶める。なんて…なんて最低な…。
「ああ、それであんた達の末路だけど、奴隷娼婦として他国に売る事になってるから」
「なっ!?」
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「あ、あなた何を言って…」
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「…」
「あら?言葉もないほどうれしかった?出来れば私もそうなった姿を拝見したかったけど、可哀想だから売った後はそっとしておいてあげる。失った時間は戻らないだろうけど、お幸せに? ふふっ」
そう言うと、イーディスは牢屋の前から立ち去っていた。
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