小スカ・大スカ 短編集

なまご

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小スカ

家庭教師のお兄さんがおしっこ限界我慢しておもらしする話【BL未満】

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※個別の作品からこちらへ移動させました。


 ゆずりは
大学生。家庭教師のアルバイトをしている。
寡黙でクールだが優しいお兄さん。

 新山にいやま
高校生。ごく普通の高校生。
年上で頭のいい杠に憧れている様子。


※いきなり本編から読んでもいいかもしれない。



――――――――――



大学の講義が終わると、杠は素早く鞄を肩に掛け駅に急いだ。
楽しげなキャンパスの喧騒の中を足早に通り抜けながら、左腕の時計――時間を確認するために買った、安い腕時計だ――にちらりと目をやった。
午後5時ちょうど。夕暮れ時の風は少し冷たく、効きすぎた暖房で火照った頬を心地よく撫でる。

(ギリギリ間に合いそうだ)

杠は歩く速度を落とすことなくバス停へ向かう。
学費のために始めた家庭教師のアルバイトは、もう一年程続いている。生徒の一人である高校生の新山の家まではバスで15分、歩いて5分だ。
時間通りに着くには、トイレに寄る余裕はない。
膀胱に僅かな圧迫感を覚えたが、ほんのわずかな違和感は、今日の授業の内容を考えることですぐに忘れることができた。

到着したバスの中で、目を閉じて少し息を吐く。
昼食を取る時間も惜しんで朝から課題に追われていた、その疲れが身体にじわじわと広がっていくのを感じたが、杠の表情には疲労の色は見えない――感情を表に出さないタイプなのだ――。

住宅街のうちのひとつにたどり着くと、杠は腕時計に再び目をやり、約束の時間の2分前であることを確認した。
こぢんまりとしながらも手入れの行き届いた玄関の呼び鈴を鳴らすと、すぐに奥からバタバタと足音が聞こえ扉が開く。

「杠さんお疲れさまです!今日は講義だったんすか?」

出迎えたのは生徒の新山だ。彼の両親はこの時間、まだ仕事で不在なことが多い。
新山はごく普通の高校生だが、杠にとっては初めての生徒で、少し特別だった。
初めて会った日、彼が「数学なんて意味わかんねぇ」と投げやりに言ったことをよく覚えている。
杠は内心戸惑ったが、彼の疑問に真摯に向き合った。そして、「杠さんに褒めてもらおうと頑張ったんす」と少し冗談めかす新山がテストの結果を見せてくれた時の笑顔が、密かに杠の励みになっていた。

「こんにちは…遅くなってすまない。今日は少し忙しくて」

脱いだ靴をかがんで整える時に、膀胱の違和感を思い出した。先ほど感じた時よりも強い、はっきりとした尿意だ。

「お邪魔します。新山くん……」

そう言いかけたが杠が振り返ると、新山は奥のキッチンのある部屋に向かうところだったようで、首だけを向けて片手を軽く上げた。

「あ、どうぞ上がっててください!俺飲み物用意してくるんで」
「あ……お構いなく…」

そう言ってみたものの、新山はそのまま姿を消してしまった。
そっと下腹部の違和感に触れる。

(まだ、我慢できないほどじゃないか……)

そう自分を納得させ、杠は部屋で新山を待つことにした。






「じゃあ新山くん、この間の続きだ。教科書の14ページ、問題3-2を解いてみようか」

新山が教科書をパラパラとめくる。
杠は少し姿勢を正すように軽く腰を持ち上げて座り直した。
思ったよりも、じっとしているのが苦痛なのだ。

「これかぁ……」

新山が鉛筆で頭を掻いた。
まだ数学への苦手意識は残っているようだ。

「大丈夫、落ち着いてやってみて」

その言葉で新山はやる気を立て直したようで、ゆっくりとノートに鉛筆を走らせていく。
時々唸りながら、はっとしたり、いやいやと首を振ったり、その努力と成長は普段なら見ていて飽きない。
しかし今はあまり集中できずにいた。

「えっと……こうっすかね…?」

少し不安そうに視線を向けられ、杠は腰を上げ、身を乗り出す。動いていると尿意が紛れる気がする。

「まずは y を同じ値として扱うからぁ……右辺同士をイコールで結ぶ。そしたら、 2x - 3 = -x + 4 ?」
「うん、その通りだ。じゃあ、次に x を求めるとき、項をどう動かす?」

腰を落として新山に問いかけると、彼はまた自信なさげにうーん、とうなり声を上げた。

「えっとー、-x を右に持ってって、-3 を左に動かす…かな? だから 2x + x = 4 + 3 で、3x = 7。そしたら x = 7/3?」

高校レベルの問題だ。そう考えることもなくそれが正解であると分かったが、杠は焦りを悟られないように一呼吸置いてから彼に少し笑みを浮かべた。

「いいな。計算は合ってる。それじゃあ、y はどうやって出す?」

新山がノートに方程式を書き込む音だけが静かな部屋に響く。
自信がない新山がひとつひとつ熟考している間、杠はじっとしていられず正座とあぐらを何度も座り替えて答えが出るのを待った。

(……トイレを借りるべきか…?)

ちらりと時計に目をやる。
30分は経っているかと思ったが、まだ開始してから10分も経っていなかった。杠は少し焦り始める。じっとしていると小便の出そうな感覚がつらい。

「x = 7/3 を代入……… y = 2 × 7/3 - 3 = 14/3 - 9/3 = 5/3 ……かな」

新山が目線を上げる。
視線が合うと、なんとなく罪悪感のような、気まずさを覚えた。

(……知られたくない。授業を中断してまでトイレを借りなければいけないほど、おしっこが我慢できなかったのだと思われるのは恥ずかしい……)

それに、賃金をもらって授業をしている立場として、個人的な理由でその時間を削ってしまうことに躊躇う気持ちもあった。

「その通りだ」杠は平静を装って続けた。「だから交点は (7/3, 5/3)。ちゃんと連立方程式の解き方を押さえてるよ。次は……」
「……?杠さん?」

ほんの一瞬、括約筋が緩み、その先端から我慢していたものがじわりと滲んだ。
杠は全身が焦りと羞恥心でぶわっと熱くなるのを感じた。

(今……少し、出そうに…)

「えっと……杠さん?」
「……ん?あ、いや、考え事を……すまない。今のをグラフで確認してみるか? 座標をプロットして、直線が交わってるか見てみよう」

何か言いたげな視線を誤魔化すように、次の指示を出した。新山は特に疑問を持つ様子はなくグラフ用紙に点を打つ準備を始める。
その様子にほっとしながらも、杠は少しずつ焦りを強めていった。





「よし、今日は数学はここまでだ。よく理解出来てると思うよ」

震える手で数学の教科書をそっと閉じた。

「へへ……」新山は少し照れたように笑った。「杠さんのおかげっすよ」

笑顔を向けながら、杠は自分が全身にじっとりと汗をかいているのを感じていた。
どうやってトイレに立とうかという考えが浮かんでは、いやあと10分だ、あと5分だとその考えを打ち消して、ずっと堂々巡りをしながらようやく数学の時間を終えることができた。
このタイミングで休憩を挟むのはおかしくないはずだ。杠は次に言う言葉を頭の中で整理した。

「もちろんまだ課題もあるから、一緒に頑張っていこう。……ところで」

そう杠が言いかけたとき、突然新山が立ち上がって両手を顔の前で合わせた。

「杠さんすいません、俺ちょっとトイレ行ってきます!」
「…………ああ…分かった」

杠を待たせないためか、新山は急いで部屋を出て行く。
取り残された杠は静かな部屋で、あまり働かない頭で、ほとんど習慣のように次の物理の教科書を広げだした。

(今日は、力学……運動方程式を…………その前に、新山くんが戻ったら俺もトイレに……ああでも、物理の授業はこの間かなり遅れてるから……)

まとまらない考えを打ち消して、時間を無駄にしないように教科書で今日の学習内容を見直す。
新山の苦手傾向を考えながら、授業の内容を頭の中で組み立てる。しかしそれは、いつものようにスムーズにはいかなかった。
膀胱が重く下腹部を圧迫していて、つい尿意に気を取られてしまうのだ。
正座のまま身体を前後に揺らす。じっとしていると我慢が辛い。
教科書を右手でめくり、その手でテーブルをトントンと叩いた。落ち着いていられず左手を脚の間に挟めて、ぐっと股間に押し付ける。身体を揺すって誤魔化しながら、また教科書をめくる。
少しでも楽になりたくて左手で直接刺激を与えようと手を動かしたとき、突然部屋の扉が勢いよく開き、杠は慌てて左手を引っ込めた。

「あ……、杠さん」

新山が気まずそうな表情で少し言い淀んでいる。杠はその様子に身体が一気に熱くなるのを感じた。我慢している仕草を見られてしまったのではないかと、羞恥心でいっぱいになり、一瞬思考が止まる。

「すいません!次 物理っすよね、遅れてるのにすいませんやりましょ!」

新山が素早くノートの前に座り、テーブルに転がる鉛筆を手に取る。
気付かれたのか、いないのか、何か言い訳するべきかと逡巡しているうちに、トイレに行くタイミングを逃してしまった。
それにもし気付かれていたのであれば、今トイレに行くのは漏らしそうだと思われるのではないかと、杠は喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。
自分を尊敬している年下の生徒の前で、恥ずかしくて言い出すことが出来なかった。それに物理の授業を削るわけにはいかないと、自分を律した。

「…それじゃあ……53ページの運動方程式のところをやっていこうか。問2は分かるか?」

杠は気持ちが急くのをこらえて、気付かれないようにゆっくりと落ち着いて質問する。
まだ我慢できているから大丈夫だと、自分に言い聞かせた。

「俺、それ分かんないんすよ……学校で聞いてても眠くなってきて」

新山の言葉に、杠は腹に力が入らないように小さく声を出して笑う。乾いたような声が出た。

「……あの、杠さん怒ってないっすか?」

唐突に新山にそう言われて、杠は目を丸くした。一瞬だけ尿意を忘れる。

「いや……、怒るようなことがあったか?」
「すいません。俺 腹痛くてトイレ長くなっちゃったから、物理の授業遅れてんのに。だから杠さんちょっとイライラしてたのかなと思って」

ばつが悪そうに少し上目遣いで見られて、杠は一人で待っている間の自分の行動を思い出した。落ち着きなくテーブルを叩いたりしていたのを、新山は杠が苛立っていたのだと受け取ったのだろう。
部屋に戻ったときの新山の気まずそうな表情の理由がようやく分かった。気付かれていたわけではなかったのだ。

「そんなことで怒らないよ。考え事をしてたんだ」ノートを引き寄せながら、ほっとした様子の新山の目を見てそう答えた。「さ、問2に戻ろう。『質量2kgの物体に10Nの力を加えたら、加速度はいくつになるか』。まず、この問題の鍵は――――」

解説を挟みながらいつも通り冷静にノートに方程式を書き込んでいく杠は、鉛筆を持つ手が震えそうになるのをなんとか堪えていた。
腕時計をちらりと見る。まだ時間は40分くらい残っていた。
膀胱が重くて、中の小便が暴れている。
油断すると下着を濡らしてしまいそうだった。

(トイレに行っておくべきだった……でも、今更言い出したら言い出せずに我慢していたと気付かれてしまう……)

杠は何度もいつ言い出そうかと機会をうかがったが、どうしても一言が出せずにいた。
そうこうしながらも、杠はほとんど無意識のように授業を進めていく。

「うーん……、あ、力と加速度が関係してる……ってやつっすか?」
「そう。それで、ここでは F = 10N、m = 2kg が与えられてる。式に、っ…………」

尿意が強くなり出して、杠は身体にぐっと力を入れた。漏れる……!額にじんわりと汗がにじむ。

「……?」

言葉に詰まった杠に、新山が不思議そうに視線を向けた。まずい、と杠はとっさに教科書に手を延ばしながら慌てて取り繕う。

「申し訳ない、ど忘れしてしまって……ちょっと教科書を借りてもいい?」

前屈みに手を延ばしたときに腹圧がかかってしまったのだろう。杠はほんの一瞬、小便をせき止めることが出来なかった。

しょー……

必死に締め付ける括約筋の隙間を、ゆっくりと小便が流れ出てくる。杠は慌てて膝を胸に付けて精一杯括約筋に力を込めた。
何とか小便が止まる。だが少しでも力を抜けばまた出てしまうだろう。
遅れて一気に全身から汗が噴き出した。

「……え、どうかしたんすか…?」

新山が戸惑っている。顔は真剣に杠を見ていた。

「あ、いや……足が少し…」

頭が働かず、杠は口ごもって、しかし新山にバレないように身を固くしたまま小便を漏らしてしまわないように必死で耐えた。思わずズボンの前を押さえた手がプルプルと震える。漏らしたら、終わりだ。

「えっと…大丈夫っすか?休憩とか…」

遠慮がちに新山が言う。
ようやく漏らしてしまいそうな強い尿意の波が引き、杠の頭が少し働き始めた。

「うん…あ、いや、時間まで10分くらいしかないから…続けよう」

とっさにまた取り繕う。恥など捨ててトイレへ行けば楽になれるのに、家庭教師としての責任感と、年上としてのプライドが、杠に何事もないように振る舞わせた

「杠さんがいいなら…」
「すまない、さっきの続きだけど、式に当てはめると10 = 2 × a になるんだ」

膝を慎重に下ろす。身体が熱くてじっとりと汗ばんでいるせいで、どのくらい小便が漏れてしまったのか、杠は分からなかった。
確認しようにも視線を下に向けるのも不自然で、ただ何事もなかったように授業を進めることしかできない。
もしかしたらこのままだと間に合わないかもしれないと、杠の頭によぎった。どくんと心臓が強く脈打つ。

「あー、えっと……2で割るってことですか?」
「そう両辺を 2 で割るとa = 10 ÷ 2 = 5、加速度は 5 m/s^2 だ。 m/s^2 って単位は1秒ごとに速度が 5m/s ずつ増えるって意味だからイメージしてみて」

意識してみようとも、杠の説明の口調は早口になってしまっていた。
早く終わらせてトイレに行かなければ。腕時計を見る。針はあと10分からほとんど進んでいなかった。
そのうちに杠は、早口で話してしまうことも新山が理解してついてきているか確かめることも抜け落ちて、ただ目の前の授業を進めていった。

(おしっこがしたい。痛い、苦しい。早くおしっこがしたい。……このままじゃ、漏らしてしまうのか……?)

身体を動かすだけでは、もう今にもまた、小便が出てしまいそうだった。膀胱がズキズキと痛む。

「それで、初速度で 6m加速で 10m が足されるんだけど……」

説明を続けながら、しかし杠は限界を感じた。もう言うしかない。

「……あの、ごめん新山くんちょっとトイレ借りてもいいかな」

やっと言えた。恥ずかしいがこれで解放されると安堵する杠に、新山は意外な反応を示した。

「え、でもあと5分くらいですよ?」

一瞬、言葉の意味を理解するのに時間がかかった。その言葉は『もう少しで終わるのに、何故このタイミングでトイレに行くんだ?』と言う意味だろう。
杠は絶望感で喉がきゅっと締まるのを感じたが、それと同時に、それもそうだと思った。
新山の反応は至極当然だ。まさか、年上の家庭教師が今にも小便が漏れそうな状態などとは、普通は思うわけがないのだ。

「そう…だね…じゃあ……、初速度がなかったら 10m だけだけど、3 m/s で動き始めてるから……」

声が震えている、と杠は自覚した。耐えられない。我慢できない。今にも下着を濡らしてしまいそうな尿意が膀胱を内側から押し広げている。

「あの、ごめん!」

叫ぶようにして杠はその場で立ち上がった。新山が驚いたような表情で見上げている。膝が笑う。杠はもう我慢できないと思った。

「やっぱりトイレ借りて…も……ぁっあっ………」

溜まりきった小便が尿道に流れ込んでくる感覚。止めなければ。だが力の入れ方がもう分からない。堪えたくて、堪えきれなくて、杠の足元がふらつく。

シィー……

先刻よりも強めに小便が溢れ出す。
止まらない。
パニックになりながら、それでもまだ新山に悟られるのを恐れて、杠はズボンを手首でぐりぐりと抑えつけた。手で握り込むことは羞恥心が邪魔をしてどうしても出来なかった。
しかしその姿はどう見ても正常ではない。腰が引け、不自然な立ち姿、ゆらゆらと揺れる。
それでも一度出た小便は止まるどころか勢いを増して杠のズボンの中に渦巻いていく。我慢に我慢を重ねた小便が尿道を通るその鋭い感覚に杠の身体がビクリと小さく跳ねた。

シュルルル……とズボンの中で音がする。
杠の頭は真っ白になっていて動かない。
足に暖かい滴が流れ出す。濡れたズボンが太腿に張り付いて下半身が熱い。靴下が溶けるように濡れていくのを感じているのに、それを止めることは出来なかった。
尿の勢いが強まり、ジューと力強い音を立ててズボンの中を暴れまわる。
勢いに反して小便はズボンで渦を巻き、脚を伝い、静かに杠の足元に広がっていく。
ただ、排尿のジューというくぐもった音だけが静かな部屋の中で木霊した。
あまりのことに杠の思考は停止し、頭の中は真っ白になって、ただ抗えない排尿を続けているしかなかった。
この状況に言葉を失っていたのは新山も一緒だったようだが、しかし彼の方が先に動いた。狼狽えながら立ち上がる。

「ゆ、杠さん、大丈夫っすか?あの…あ、タオル…とかを…」

その助け船に少しだけ杠の頭は働き始めたが、その思考はいつものように素早く整理されることはなかった。

(おしっこ…が………こんなところで…………ズボン、床も、濡れて……どうしたら……)

目の前が涙で滲むのを自覚していたが、それを堪えることも、勝手に顔の筋肉が歪むのを抑えることも出来なかった。
杠は、気付けば年下の生徒である新山に縋るように視線を向けていた。

「かっ、片付けます!すみません、片付けますから!大丈夫っすから!!」

大慌てで足元にタオルを広げて、新山が懸命に小便を拭き取っている。
杠はほとんど無意識のようにしゃがみこみ、のそりとタオルに手を伸ばした。ショックのあまり固い動きのまま、しかし普段の彼の慣習に基づいての行動であったが震えながら掃除をしようとする杠を新山が止めた。

「いいっすよ俺がやるんで!あ…っていうか……、すいません俺!杠さん先に着替えを……シャワー?えっと……すいません、俺が引き止めたせいでほんとすいません!」

新山くんのせいじゃないよ。
頭の中に浮かんだ言葉はアウトプットされることなく、かわりに口から小さく嗚咽が漏れる。これまで抑えてきた感情が一気に溢れてきたように、情けない自分を感じているのに目から零れる涙を止めることができなかった。
その様子を見て新山が申し訳なさそうな表情で狼狽えている。

「俺が引き止めたせいなんで杠さんは悪くないんすよ!ほんとにごめんなさい!うわ俺……なにやってんだ…」

猛省している様子の新山の心理に気づく余裕は今の杠にはない。
新山が慣れない手つきで掃除を続けるのを、杠は見ていることしか出来なかった。
罪悪感と羞恥心がぐるぐると胸の内に渦巻いて、この場から消えてしまいたい思いのまま、ただ新山のたどたどしいリードに身をゆだねることしか出来ずにいた。





「あの……杠さん…泣かないでください…」

そう言う新山は今にも泣きそうだ。
視線を少しあげて、また落とす。迷惑をかけた上にこんな顔までさせるのかと、杠の胸はチクリと痛んだ。

「……俺が、悪いんだ…」

ようやく絞り出した杠の声は掠れていて、もう家庭教師としての威厳はないな、と頭をよぎった。

「違うんすよ…!違うんですよ、あの…………」新山が慌てながら、もじもじと自らの指を絡める。「その…幻滅されると思うんですけど、あの……、俺、杠さんがトイレ我慢してるの気付いてて……」

その言葉で杠は、必死で小便を我慢していた自分の姿を思い出し顔が再び熱を帯びるのを感じた。
そんな杠に気付かない様子で、新山は「それで」と続けた。

「なんかその姿見たら杠さんでもおしっこ我慢すんだなーとか、なんか親近感?っていうか、可愛いみたいな気持ちになって……気付いたら俺、わざと行きづらくさせちゃって、でもこんなことになっちゃうと思わなくて……」

杠の顔色を窺いながらおどおどしていた新山が表情をキッと引き締め、今し方掃除の終わったばかりのフローリングの床に額を擦り付けた。

「すいませんでした!殴っても良いです!!でも……」

勢いよく顔を上げた新山の目からは涙がこぼれていて、杠はその様子に、緊張で強張った心が解れていくのを感じていた。

「でも、良かったら家庭教師辞めないで欲しいんすけど……」

トイレに立てなかったのは自分の落ち度なのに、些細な一言に責任を感じ、情けない姿を晒してしまったのにこんな言葉をかけてくれるのかと、杠はようやく新山の目をまともに見ることが出来た。

「杠さん……」
「…辞めないよ……力学、まだ終わってないしな…」

二人は互いに濡れた瞳のまま顔を見合わせて、その状況がおかしくて、思わず小さく笑い合うのだった。




―――――――――――


ほぼ初めてくらいの三人称視点で訳分からなくなりつつ書きました。
漏らすと思ってなかった人が漏らすのって最高に可愛いと思います。
漏らしてくれるなら私も家庭教師雇いたいです(大人だけど)。

ショートショートのNo.002に原案となった短いストーリーもあるので、未読のかたはよかったら読んでみてください!
新山視点のお話になります。

【小スカ・大スカ】ショートショート集
https://www.alphapolis.co.jp/novel/425706168/55024733


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