エレベーターに閉じ込められた部下がおしっこチビリながら限界放尿する話

なまご

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序章

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全面が強化ガラスで覆われたビルの58階、役員専用会議室では新事業開発部が試験的に立ち上げた第3セクションのプロジェクト会議真っ只中だ。

「では、AI新事業の進捗を…」

専務がそう切り出すと、少し会議室にピリッとした緊張感が走る。

「久我リーダー、お願いします」

全員の視線が一斉に向く中、その会議室の顔ぶれに似つかわしくないかなり若い様相の男――
名を久我大河という。俺の部下だ、一応は。――がその場で立ち上がり静かに口を開いた。

「量子位相推定により市場ボラティリティを最適化。エントロピー最小化でUXフローを再構築する」

しーん。
役員たちが難しい顔でじっと考え込むように押し黙っているが、全く訳が分からないといったところだろう。

(こいつ、またやったな…。)

俺は内心でため息を吐いた。
久我に説明させるといつもこうだ。注意しても変わらないので最近では俺が補足するようにしている。
久我は今年度の新入社員の一人だが、やや…と言うよりは、だいぶ特別な社員なのだ。

専務が俺のほうをチラリと見る。よく見れば他の役員や部長がこちらに耳をそばだてている。
分かっている、俺に何とかしろと言っているのだ。久我本人すら涼しい顔で俺の方を見ている。

「…………あー、私から補足します。株価の変動を正確に予想してリスクを減らして、アプリの画面をシンプルにする、ってことです」

久我が何事もなかったように無表情にプロジェクターを操作し、更に続けた。

「ナッシュ均衡を基に競合戦略を逆算。ベイズ推定でKPI事後分布を更新」
「……ライバルが次に何してくるか全部予想して、目標数字は毎週見直すってことです」
「ラグランジュ未定乗数法でリソース配分」
「予算とか人件費、広告費をバランスよく振り分ける、と…」
「河野係長、資料」
「はいはい…」

久我に指示されるままに資料を配布する(どっちが上司か分かりゃしない)。
久我が淡々とマイペースに発言し(そして間に俺が翻訳を挟み)、役員たちはその都度「おお」と感嘆の声を上げる。

(やれやれ露骨な人たちだ………いくら久我が次期社長だからって、一応新入社員だろ……)

――そう。この久我大河という男、齢19にして世界トップクラスの財閥“久我グループ”の後継者なのだ(しかも頭脳明晰。神は二物を与えず、だろ!)。
それにも関わらず本人の希望で“普通の新入社員”として入社してきたものだから、役員たちも扱いに困っているというわけだ。
とは言っても、次期社長として舐められるな、ということで久我は社内での敬語を禁じられているからもはや誰も新入社員扱いなどしていないのだが…。

で、何故俺が上司かって?
それは俺も知りたいところなのだが、久我本人が指名したらしい(いや、権力乱用してんじゃねーか)。

「では今日はここまで。解散! 久我リーダー、お疲れ様!」
「大河様、お疲れ様です!」

数十歳年上の役員たちが幼い顔立ちをした久我に頭を下げ会議室を後にしていく。
全く、この光景は中々慣れないものだ。
ふいに右の袖が重くなり、顔を向けると久我が少しこちらを見上げるようにして立っていた(不思議な癖だが、久我は呼びかけるときにまるで子供のように袖を引く時がある)。

「…河野係長。明日の役員会資料を修正したい」
「え、マジか。今から?……そうか…ならやって帰るか」

会議室から出た俺達は開発部に戻り作業を始める。
このあと事件が起こるとも知らず――。


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