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6、甘い、甘いチーズケーキ

会いたくて

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「何? 貴広さん」

 貴広は良平の身体をギュッと抱き締めた。

「何? 何? どしたの」

「良平……!」

 自分の身体に抱きついている貴広の頭を、良平は戸惑ったままポンポンと撫でた。

 良平に頭を撫でられ、貴広はやっと良平の身体から腕を離した。

「どうかした?」

 良平は貴広をのぞき込む。小首をかしげて。子猫のような仕草で。

「良平、お前はもう、自由の身だよ」

「はあ?」

「もう大丈夫なんだ。ごいんきょが話を付けてくれた。SDカードもあちらさんへ返してくれるよ」

「じゃあ……」

「ああ。もうお前は狙われることはない。あ、だが調子に乗ってまた悪運を招かないように……」

 貴広は良平をきっとにらんだ。この子が遊び回って、またどこかのよくない人間に目を付けられたりしないように。

「はあい、もう悪いコトはしませえん。大人しく貴広さんと暮らしますぅ」

 ふてくされたように唇を尖らす良平だが、頬が喜びに輝いている。貴広には分かる。

「そうだぞ。もうどこの『店』にも顔を出すな。お前は可愛いんだから。モテちまうだろうが」

「行かないよ」

 良平はシャツの袖を捲り、留め具をつけた。外の風はもう暑くない。札幌の短い夏は過ぎ去ってしまった。

「そもそもあの『店』にだって、貴広さんに会えるんじゃないかと思って行っただけだし」

「ええっ?」

 貴広が良平に二度目に会った北口の「店」。ハイボールをあおる良平の白い咽が痛々しくて、首に下がるネックレ
スが色っぽくて。

「初めて会ったときさ、貴広さん、JRに乗ろうとしてたじゃん。すすきのへ行くなら地下鉄で、『大通』乗換えだろ? JRを選ぶってことは、すすきのじゃない。ってことは、多分、札駅北口のあの店だろうって」

 良平はテキパキと店に出る支度を済ませる。

「当たってたろ? ……貴広さん?」

 無言の貴広を、良平は心配そうに振り返った。

「貴広さん?」

「……じゃあお前、俺に会いたくて……?」

 良平は頬を赤くしてそっぽを向いた。

「ああ、うん。そうだよ」

「良平……」

 下から菅原さんが「マスター、お客さまよぉ!」と呼んでくれた。

 貴広は慌てて「はーい!」と返事した。

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