破棄されたのは、婚約だけではありませんでした

しばゎんゎん

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数日後。

「レオン様!大変です」

早朝から執事がレオンの寝室に駆け込んでくる。

そして、その顔色は明らかに悪い。

「今度は何だ!」

「銀行からの通達が先程届きました」

レオンの動きが止まる。

「内容は?何だ!」

「信用枠の再審査を行うとのことです」

「再審査だと?どういうことだ!」

ありえない。

本来であれば、伯爵家に対してそのような扱いはされない。これまでの関係を考えればなおさらだ。

「我が家の信用に問題があると判断された、ということか」

「その可能性が高いかと」


沈黙。

そして。

「誰だ」

低く、押し殺した声。

「誰かが裏で動いているとしか思えん」

偶然ではない。

ここまで来れば、誰でも分かる。

意図的な動きだ。

だが。

「原因について、現時点では特定できておりません」

「すぐに調べるんだ!誰が裏で糸を引いているのかを。それが分かれば対処しようがある。」

レオンは机を叩いた。

だが、怒りは空を切る。

相手が見えなければ対処できない。

それが、何よりも恐ろしかった。



その夜。

ミレイユは一人、窓辺に立っていた。

「思ったよりひどい状況のようですわね」

ぽつりと呟く。

手元には、いくつかの報告書。

独自に集めた情報だった。

「ライズ商会、マース商会、それに、銀行筋まで」

どれも、同じ動きをしている。

「まるで示し合わせたような動き」

いや、実際、そうなのだろう。

問題は、誰がそれを可能にしているか。

そこまでの影響力を持つ存在は限られている。

「まさか」

一つの名前が浮かぶ。

エリシア・ラングレイ。

夜会での、あの静かな態度。

動揺も、怒りも見せなかった。

ただ粛々と受け入れた。

「もし仮に、あの女が、裏で動かしているのだとすれば、とんでもない化け物ですわ。レオンは完全に見誤りましたわね」

だとすれば、彼の価値は失われる。

いや、負債にすらなりうる。

「さて」

ミレイユは微笑む。

「ここが潮時かもしれません。どう切り替えるべきかしら」

視線はすでに、次を見ている。

ミレイユに、アルシェ家に、立ち止まっている時間などない。


同じ頃。

ラングレイ家。

「銀行筋も動きましたか」

エリシアは報告を受け、静かに頷いた。

「これで、ほぼ詰みです」

レオナルドが言う。

「ええ」

だが、エリシアは首を横に振る。

「ですが、まだです」

「まだやるのか?」

「まだ乗り越えられると思っている段階が最も効果的です」

その言葉に、わずかな冷たさが宿る。

「自分で選択を誤り続けるよう、少しだけ余地を残します」

逃げ道があると思わせる。

だが実際には、どこにもない。

すでに詰んでいる。

「悪趣味だな」

レオナルドが苦笑する。

「効果的ですわ」

エリシアは淡々と答えた。

「アルシェ家も、そろそろ動く頃でしょう」

その名を口にする。

「あの方はそういう方ですもの。躊躇なく切り捨てるでしょう。切り捨てなければ自らの立場が危うくなるのですから」

当然の選択として簡単に見切る事が出来る人間。

「その時が、本当の終わりです」

静かに告げる。

「すべてが崩れます」

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