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第4章
喧嘩を売られた 1
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あれから数日後。この日、俺はもう一人の幼馴染である間山 礼音と大学内を適当にぶらついていた。
「で、亜玲とはどうなの?」
近くの自動販売機で飲み物を買った、礼音が開口一番にそう問いかけてくる。……黙ることしか出来なかった。
俺の買った缶コーヒーが、がこんとやたらと大きな音を鳴らして、落ちてくる。それを取り出しつつ、ベンチに腰掛ける礼音の隣に腰掛けた。
缶コーヒーを開けて、喉に流しこむ。いろいろな意味で冷たいほうがよかったので、今日は冷たいものを買った。
それはどうやら正解だったようで、火照った身体にはちょうどいい。
「……なにが」
礼音の問いかけに、問いかけで返す。すると、礼音は自身の缶コーヒーを飲み干し、ごみ箱に投げ入れる。
きれいにごみ箱に吸い込まれる缶に視線を奪われていれば、礼音はポケットに手を入れてこちらを見ていた。
奴の金色の髪の毛が、太陽の光を浴びてきらきらと輝いていた。
「なにがって、とぼけるのか? こちとら長年幼馴染やってないんだけれど?」
けらけらと笑って、礼音がそう言う。どうやら、礼音にはなにを隠しても無駄らしい。
そう思いつつ、「はぁ」とため息をつく。礼音は「幸せが逃げるぞ」なんてのんきに言ってくる。……誰の所為だ、誰の。
「別に、なんてことない。特に変わったこともない」
「嘘だな」
俺の言葉をすぐに全否定する礼音。そちらを見つめれば、奴の人懐っこそうな目が細められていた。
「だって、祈の雰囲気が柔らかくなったっていうか……」
「……は?」
「お前、今まで亜玲を見たら殺気出してたし。最近はそれがなくなったなぁって、思ってて」
ポケットからスマホを取り出して、タップしながら礼音はそう言う。……また、新しい彼女だろうか。
礼音は昔から女にモテる。多分その人懐っこい笑みが、人の警戒心を解くのだろう。それに、礼音は第二の性がベータなので、ややこしいこともない。オメガの俺や、アルファの亜玲とは、違う。
「……なんていうか、仲直りしただけだけど」
プイっとそっぽを向いて、そう答える。礼音は「へぇ」と意味部かな笑みを浮かべていた。……なんていうか、腹立つ。
「俺の勘が正しかったらだけれどさ。……お前、亜玲と関係持っただろ?」
「ぶっ!」
口に含んだコーヒーを、吹いてしまった。それを見た礼音が「あーあ」と言いながらもタオルで拭いてくれる。
なんだかんだ言っても、こいつは世話焼きだ。
「その反応、図星っていうところ? いやぁ、お前と亜玲がねぇ……」
「……うるさい」
口元を拭いつつ、礼音の言葉をぶった切る。けど、礼音は特に気にもしていないようだ。またスマホに視線を戻している。
タップして、メッセージを打ち込む礼音の指はとても速い。……なんていうか、慣れてるっていうか。
「ま、ようやく亜玲の気持ちが実ったみたいで、俺は嬉しいけど?」
「……え」
「え? ってまさか、お前亜玲の気持ち知らなかったのか? あんなにわかりやすかったのに!?」
……礼音が大きな声を上げる。瞬間、周囲の視線が一瞬にしてこちらに注がれた。……が、すぐに興味を失ったかのように元に戻っていく人たち。はぁ、よかった。
「わかりやすかったか?」
「そりゃあ、もう。だって、亜玲、お前にだけ露骨に態度違ったし。それにさ……なんていうか、欲を孕んだような目で、見てたし」
「言い方が生々しいよ」
確かにそれは間違いないのだろうが、礼音がそう言うと生々しすぎる。
そう思いつつ、缶を振ってみる。……中は、空だ。だから、俺も缶をごみ箱に放り込んだ。
「だって、その言葉が一番合うし」
「……あっそ」
淡々と言葉を交わし合う。礼音とは小中高大と全部同じだけれど、親しくなったのは高校になってからだ。
幼馴染として、認識はしていたんだけれどさ。
「で、亜玲とはどうなの?」
近くの自動販売機で飲み物を買った、礼音が開口一番にそう問いかけてくる。……黙ることしか出来なかった。
俺の買った缶コーヒーが、がこんとやたらと大きな音を鳴らして、落ちてくる。それを取り出しつつ、ベンチに腰掛ける礼音の隣に腰掛けた。
缶コーヒーを開けて、喉に流しこむ。いろいろな意味で冷たいほうがよかったので、今日は冷たいものを買った。
それはどうやら正解だったようで、火照った身体にはちょうどいい。
「……なにが」
礼音の問いかけに、問いかけで返す。すると、礼音は自身の缶コーヒーを飲み干し、ごみ箱に投げ入れる。
きれいにごみ箱に吸い込まれる缶に視線を奪われていれば、礼音はポケットに手を入れてこちらを見ていた。
奴の金色の髪の毛が、太陽の光を浴びてきらきらと輝いていた。
「なにがって、とぼけるのか? こちとら長年幼馴染やってないんだけれど?」
けらけらと笑って、礼音がそう言う。どうやら、礼音にはなにを隠しても無駄らしい。
そう思いつつ、「はぁ」とため息をつく。礼音は「幸せが逃げるぞ」なんてのんきに言ってくる。……誰の所為だ、誰の。
「別に、なんてことない。特に変わったこともない」
「嘘だな」
俺の言葉をすぐに全否定する礼音。そちらを見つめれば、奴の人懐っこそうな目が細められていた。
「だって、祈の雰囲気が柔らかくなったっていうか……」
「……は?」
「お前、今まで亜玲を見たら殺気出してたし。最近はそれがなくなったなぁって、思ってて」
ポケットからスマホを取り出して、タップしながら礼音はそう言う。……また、新しい彼女だろうか。
礼音は昔から女にモテる。多分その人懐っこい笑みが、人の警戒心を解くのだろう。それに、礼音は第二の性がベータなので、ややこしいこともない。オメガの俺や、アルファの亜玲とは、違う。
「……なんていうか、仲直りしただけだけど」
プイっとそっぽを向いて、そう答える。礼音は「へぇ」と意味部かな笑みを浮かべていた。……なんていうか、腹立つ。
「俺の勘が正しかったらだけれどさ。……お前、亜玲と関係持っただろ?」
「ぶっ!」
口に含んだコーヒーを、吹いてしまった。それを見た礼音が「あーあ」と言いながらもタオルで拭いてくれる。
なんだかんだ言っても、こいつは世話焼きだ。
「その反応、図星っていうところ? いやぁ、お前と亜玲がねぇ……」
「……うるさい」
口元を拭いつつ、礼音の言葉をぶった切る。けど、礼音は特に気にもしていないようだ。またスマホに視線を戻している。
タップして、メッセージを打ち込む礼音の指はとても速い。……なんていうか、慣れてるっていうか。
「ま、ようやく亜玲の気持ちが実ったみたいで、俺は嬉しいけど?」
「……え」
「え? ってまさか、お前亜玲の気持ち知らなかったのか? あんなにわかりやすかったのに!?」
……礼音が大きな声を上げる。瞬間、周囲の視線が一瞬にしてこちらに注がれた。……が、すぐに興味を失ったかのように元に戻っていく人たち。はぁ、よかった。
「わかりやすかったか?」
「そりゃあ、もう。だって、亜玲、お前にだけ露骨に態度違ったし。それにさ……なんていうか、欲を孕んだような目で、見てたし」
「言い方が生々しいよ」
確かにそれは間違いないのだろうが、礼音がそう言うと生々しすぎる。
そう思いつつ、缶を振ってみる。……中は、空だ。だから、俺も缶をごみ箱に放り込んだ。
「だって、その言葉が一番合うし」
「……あっそ」
淡々と言葉を交わし合う。礼音とは小中高大と全部同じだけれど、親しくなったのは高校になってからだ。
幼馴染として、認識はしていたんだけれどさ。
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