23 / 34
勇者に選ばれた恋人が、王女様と婚姻するらしいので、
待つ恋人アデルミラの話(11)
しおりを挟む
「……えっと、その、それって……?」
アデルミラが混乱しながらそう言葉を返せば、ロレンシオがアデルミラの身体をさらに強く抱き込んでくる。その後「俺は、アデルミラ一筋だ」と囁くように告げてきた。
「あのな、王女殿下は友人としては素晴らしい人だと思う。が、恋愛対象としては無理だな。……それに」
「……なにか、あるの?」
「王女殿下には別に好きな男がいる。だから、俺との婚姻は絶対に嫌だと言っていた」
そう言いながら、ロレンシオはアデルミラの髪の毛を手で梳きながら、口づけを何度も落としてくる。それは、本当に愛おしいと言いたげな態度であり、アデルミラの心が疼く。
(それって……私の、早とちりだったっていうこと?)
ロレンシオの言葉を信じるのならば、アデルミラの早とちりだったということになるだろう。それを実感して、アデルミラは顔を真っ赤にしてしまった。ロレンシオのことを、信じればよかったのに。なのに、信じることが出来なかった。捨てられたと思った。自分は、なんと流されやすい女なのだろうか。
「もうすぐ、俺と王女殿下の婚姻話がなくなったというニュースが出るはずだ。……悪かったな、不安にさせて」
ゆっくりとそう囁き、ロレンシオはアデルミラの身体を解放してくれた。そのため、アデルミラがロレンシオと視線を合わせれば……彼は、ただ笑っていた。その所為だろうか、アデルミラは「……バカ」と言うことしか出来なくて。
「バカ、バカッ! お手紙の一つでもくれれば、私だって……!」
「そうだな。もっと早くに、本当は知らせるつもりだったんだ。だが、いろいろと厄介ごとが多くてな……」
アデルミラがロレンシオの胸をポンポンと叩けば、ロレンシオはただ口元を緩めながら「こんな俺だが、婚姻してくれるか?」と問いかけてくる。だから、アデルミラは「……当り前、だからっ!」と涙声で答えた。
「私、ロレンシオ以外の男性との婚姻なんて、考えられないの。……ロレンシオじゃなきゃ、嫌なの。……今度こそ、今度こそ、ずっと一緒にいてよ!?」
「もちろんだ」
半ば八つ当たりのようにそう告げれば、ロレンシオは間髪入れずにそう返してくる。そして、起き上がった。
空はオレンジ色に染まっており、もうそろそろ夕食の時間だろうか。……一体、アデルミラ自身が何時間眠っていたのかは、考えない方向で行こう。そう、アデルミラは思った。
「……アデルミラ」
そんなことをアデルミラが思っていれば、ロレンシオは不意にアデルミラの身体の上に覆いかぶさってくる。……嫌な予感が、する。そう思いアデルミラが身を震わせれば、ロレンシオは「……足りない」と言ってアデルミラのワンピースの中に手を入れる。その手つきには下心が籠っており、アデルミラは「もしかして、マズい?」と思ってしまう。
「俺が、眠っているアデルミラを見て、どんなに我慢したと思う? ……本当は、もっと犯してやりたかった。……なぁ、アデルミラ」
「……む、無理っ! 無理だから!」
「そう言うな。……せっかく久々に会えたんだ。……存分に愛させてくれ」
ロレンシオはそう言いながら、アデルミラの身体から毛布を奪い取る。寝台がぎしりと音を鳴らし、ロレンシオはアデルミラの逃げ道を奪う。……このままだと、本当に捕食されてしまうのではないだろうか? 一瞬アデルミラはそう思ったが、その考えは長くは続かない。ロレンシオの優しい口づけに、意識が移ってしまったためだ。
「……ロレンシオ。せめて、その……優しく、して」
多分、この調子だと彼は止めてくれないだろう。そう考え、アデルミラはせめてと思いロレンシオに上目遣いでそう言ったのだが……どうやら、それは逆効果だったようで。ロレンシオは真剣な表情で「無理だな」と告げてくる。
「アデルミラが煽るから、無理だな。……アデルミラ、好きだ、愛している」
ロレンシオのそんな言葉に、アデルミラの心は満たされていく。そのため、アデルミラはゆっくりと「……私、も、愛してる」と答えることしか出来なかった。
(私、やっぱり……この人じゃなきゃ、嫌だ)
何度も何度も角度を変えて行われる口づけの中、アデルミラはそんなことを実感する。きっと、どんなに素敵な男性に出逢ったとしても、ロレンシオ以上に好きになれる人は現れないだろう。今度は、しっかりとこの人を信じる。アデルミラは、そう心に誓った。
まさか、次の日に起き上がれないほど抱きつぶされてしまうことなど、この時のアデルミラは――知らない。
【本編・END】
アデルミラが混乱しながらそう言葉を返せば、ロレンシオがアデルミラの身体をさらに強く抱き込んでくる。その後「俺は、アデルミラ一筋だ」と囁くように告げてきた。
「あのな、王女殿下は友人としては素晴らしい人だと思う。が、恋愛対象としては無理だな。……それに」
「……なにか、あるの?」
「王女殿下には別に好きな男がいる。だから、俺との婚姻は絶対に嫌だと言っていた」
そう言いながら、ロレンシオはアデルミラの髪の毛を手で梳きながら、口づけを何度も落としてくる。それは、本当に愛おしいと言いたげな態度であり、アデルミラの心が疼く。
(それって……私の、早とちりだったっていうこと?)
ロレンシオの言葉を信じるのならば、アデルミラの早とちりだったということになるだろう。それを実感して、アデルミラは顔を真っ赤にしてしまった。ロレンシオのことを、信じればよかったのに。なのに、信じることが出来なかった。捨てられたと思った。自分は、なんと流されやすい女なのだろうか。
「もうすぐ、俺と王女殿下の婚姻話がなくなったというニュースが出るはずだ。……悪かったな、不安にさせて」
ゆっくりとそう囁き、ロレンシオはアデルミラの身体を解放してくれた。そのため、アデルミラがロレンシオと視線を合わせれば……彼は、ただ笑っていた。その所為だろうか、アデルミラは「……バカ」と言うことしか出来なくて。
「バカ、バカッ! お手紙の一つでもくれれば、私だって……!」
「そうだな。もっと早くに、本当は知らせるつもりだったんだ。だが、いろいろと厄介ごとが多くてな……」
アデルミラがロレンシオの胸をポンポンと叩けば、ロレンシオはただ口元を緩めながら「こんな俺だが、婚姻してくれるか?」と問いかけてくる。だから、アデルミラは「……当り前、だからっ!」と涙声で答えた。
「私、ロレンシオ以外の男性との婚姻なんて、考えられないの。……ロレンシオじゃなきゃ、嫌なの。……今度こそ、今度こそ、ずっと一緒にいてよ!?」
「もちろんだ」
半ば八つ当たりのようにそう告げれば、ロレンシオは間髪入れずにそう返してくる。そして、起き上がった。
空はオレンジ色に染まっており、もうそろそろ夕食の時間だろうか。……一体、アデルミラ自身が何時間眠っていたのかは、考えない方向で行こう。そう、アデルミラは思った。
「……アデルミラ」
そんなことをアデルミラが思っていれば、ロレンシオは不意にアデルミラの身体の上に覆いかぶさってくる。……嫌な予感が、する。そう思いアデルミラが身を震わせれば、ロレンシオは「……足りない」と言ってアデルミラのワンピースの中に手を入れる。その手つきには下心が籠っており、アデルミラは「もしかして、マズい?」と思ってしまう。
「俺が、眠っているアデルミラを見て、どんなに我慢したと思う? ……本当は、もっと犯してやりたかった。……なぁ、アデルミラ」
「……む、無理っ! 無理だから!」
「そう言うな。……せっかく久々に会えたんだ。……存分に愛させてくれ」
ロレンシオはそう言いながら、アデルミラの身体から毛布を奪い取る。寝台がぎしりと音を鳴らし、ロレンシオはアデルミラの逃げ道を奪う。……このままだと、本当に捕食されてしまうのではないだろうか? 一瞬アデルミラはそう思ったが、その考えは長くは続かない。ロレンシオの優しい口づけに、意識が移ってしまったためだ。
「……ロレンシオ。せめて、その……優しく、して」
多分、この調子だと彼は止めてくれないだろう。そう考え、アデルミラはせめてと思いロレンシオに上目遣いでそう言ったのだが……どうやら、それは逆効果だったようで。ロレンシオは真剣な表情で「無理だな」と告げてくる。
「アデルミラが煽るから、無理だな。……アデルミラ、好きだ、愛している」
ロレンシオのそんな言葉に、アデルミラの心は満たされていく。そのため、アデルミラはゆっくりと「……私、も、愛してる」と答えることしか出来なかった。
(私、やっぱり……この人じゃなきゃ、嫌だ)
何度も何度も角度を変えて行われる口づけの中、アデルミラはそんなことを実感する。きっと、どんなに素敵な男性に出逢ったとしても、ロレンシオ以上に好きになれる人は現れないだろう。今度は、しっかりとこの人を信じる。アデルミラは、そう心に誓った。
まさか、次の日に起き上がれないほど抱きつぶされてしまうことなど、この時のアデルミラは――知らない。
【本編・END】
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
329
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる